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悲劇の国産ホップがついに表舞台へ 「ムラカミ・セブン」 使ったIPAビール発売

2019年6月28日 2:00 pm

 日本産ホップ「MURAKAMI SEVEN(ムラカミ・セブン)」を贅沢に使用したクラフトビール〈MURAKAMI SEVEN IPA〉が、キリングループの「スプリングバレーブルワリー」各店舗や東京・銀座の「BEER TO GO」、そしてクラフトビール用サーバー「タップ・マルシェ」向けにも7月8日から販売される。

 実は「ムラカミ・セブン」、キリンホールディングスからは不採算を理由に品種改良を打ち切られ、処分命令を下された悲劇の品種。しかし、ホップの開発を担当していた村上敦司(むらかみ・あつし)キリンホールディングスR&D本部 酒類技術研究所 主幹研究員リサーチフェローの、「捨てるのはあまりにもったいない」という想いから、岩手県奥州市江刺(えさし)区にある畑の片隅でひっそり栽培されていた。
 というか、そもそも「ムラカミ・セブン」とは何だろうか? 村上さんが、約20年前に交配して育種したホップなのだという。

●ホップって???●

 ホップはアサ科のつる性の多年草植物で、ビールの味や香りに重要な役割を果たす。ビールに使われるのは雌株の毬花(まりばな)の中に含まれる黄金の粉末「ルプリン」。

 ビールがビールになるため、ホップが果たす役割は、①苦味を加える=仕込み工程では、ホップを麦汁(ばくじゅう)に加える際、苦みの成分フムロンが、熱によって水に溶けやすいイソフムロンに変化。このイソフムロンがビールの苦みになる。②香りを与える=ビールの香りは発酵過程で酵母がつくるもの、原料の麦芽やホップ由来のものの複合体。③泡持ちをよくする=ビールの泡は、ホップに含まれる苦み成分(イソフムロン)が、大麦由来のタンパク質と結合することで形成され、苦みの強いほどビールの泡持ちが良いと言われている④殺菌効果を与える=雑菌の繁殖を抑え、ビールの腐敗を防ぐ効果もある。(キリンビールのHPより引用)

 

 それがクラフトビールの盛り上がりとともに、奇跡的に日の目を見ることになったのだから、人生ならぬ「ホップ生」も分からないものだ。ちなみに「ムラカミ・セブン」の名前は、この株が当時「江刺7号」と呼ばれていたことと、村上さんの名前を取って命名された。「気づいたら勝手に付けられていた」と村上さんは笑う。

「ムラカミ・セブン」の生みの親、村上敦司キリンホールディングスR&D本部 酒類技術研究所 主幹研究員リサーチフェロー

 〈MURAKAMI SEVEN IPA〉は、イチジクやマスカットのような華やかな香りが特徴のビールで、アルコール度数が6~8%程度ある一般的なIPAと比較すると、5.5%と飲みやすい。また小麦麦芽を一部使用しているため、苦味も控えめだ。米国ニューヨークの有名ブルワリー、「ブルックリンブルワリー」の醸造責任者であるギャレット・オリバー氏も、〈MURAKAMI SEVEN IPA〉をひとくち飲んだとたんに絶賛したというからすごい。

 〈MURAKAMI SEVEN IPA〉は供給量が少なく、「もしも『タップ・マルシェ』を導入している飲食店の3割で〈MURAKAMI SEVEN IPA〉を販売したら、1カ月で売り切れてしまう」(キリンホールディングス)程度の販売量だという。「タップ・マルシェ」向けは7月8日から販売開始する。「ムラカミ・セブン」が作り出す芳醇な香りを試してみたい方は、まずは「タップ・マルシェ」の設置からかな!?