
もしかしたら、冷蔵・冷凍技術の歴史を覆す画期的な技術が誕生したかもしれない──。
カフェ「WIRED CAFE」などを展開するカフェ・カンパニー(東京・渋谷)の楠本修二郎社長は、自身が代表を務める新会社ZEROCO(同・渋谷)を設立し、食材や食品の鮮度を長時間・高品質に保持することを可能にした、新しい鮮度保持技術〈ZEROCO(ゼロコ)〉の事業展開を開始する。
〈ZEROCO〉は、日本の伝統的な保管方法である雪下野菜からヒントを得た、新たな鮮度保持技術。一般的な凍結技術では表面から先に凍っていくため、食材の表面と中心の温度に差が生じることで冷凍に時間がかかる。
また凍結過程で大きな氷結晶が発生し、それが溶ける際に食品内の細胞が破壊されるため、ドリップや風味劣化の原因になる。
一方、〈ZEROCO〉は芯温まで均一に0℃に保つことで、凍結スピードが非常に速くなり、かつ氷結晶の発生が抑制されることで細胞破壊が起こりにくい。その結果、高い鮮度で長期間保存が可能になり、解凍後の劣化が防げるという。
さらに、100%に限りなく近い「高湿度」を実現する。この「温度0℃・湿度100%」の状態により、雑菌の繁殖を抑え、鮮度を長期間・高品質に保てる。これが冷蔵でもなく冷凍でもない、第3の鮮度保持技術といわれるゆえんだ。
体験試食会では、〈ZEROCO〉で62日間保存されたアボカドとイチゴ、95日保存のメロンを試食したところ、とても2~3カ月経っているとは思えないほどみずみずしく味もよかった。もちろん腐敗はしていない。
いったん冷凍した牛もも肉を〈ZEROCO〉内で解凍し、ローストビーフに調理したのち、ふたたび〈ZEROCO〉で冷蔵したローストビーフに至っては、熟成が進んでいるのか、強い旨味を感じた。
そのほか、〈ZEROCO〉で保存したのち冷凍し、再び解凍した海苔巻きや寿司といった米飯、パスタ、自然解凍したおはぎやショートケーキのいずれもおいしく食べられた。
代表の楠本修二郎さんは、「リキッドフリーザーと組み合わせるのもいい」という。例えば下ごしらえした料理をリキッドフリーザーで冷凍。
前日に〈ZEROCO〉内へ移動して解凍し、注文に応じて調理すれば、解凍にかかる時間も短縮できる。また〈ZEROCO〉で保管していてロスになりそうなら再び冷凍も可能だ。
さらに一次生産の現場で〈ZEROCO〉を導入することで、鮮魚の神経締めやはらわた除去などの初期加工業務から解放されたり、旬の時に収穫した農作物を長期保管でき、市場価格の高い時期に販売できたりもする。
楠本さんが〈ZEROCO〉を開発した理由について、「日本では中小零細企業に食のノウハウが蓄積されているが、少子高齢化が進むとそれらが消失してしまうのではないかと危機感を覚えた」ためという。
さらに「それらの承継をテクノロジーで支える必要があると考え、ZEROCO設立に至った。〈ZEROCO〉を活用することで生産者の出荷業務負担を減らせ、物流では品質コントロールが可能になる。飲食店でも調理に活用することで人手不足対応やフードロス削減に貢献できる。食産業に携わる人々が〈ZEROCO〉でワンチームになり、食文化を支えられるようにしていきたい」と述べた。
〈ZEROCO〉の費用や具体的な導入フローについては、後日行われる事業戦略発表会で明らかにされる。