明治および川崎医科大学総合医療センターの春間賢特任教授らの研究グループは、明治が保有する独自の乳酸菌「Lactobacillus gasseri OLL2716株」の摂取による自律神経バランスの改善効果を確認した。[2021年5月28日に国際学術誌「Nutrients」に掲載]
胃と脳は、心身の健康に重要な役割を果たす自律神経により繋がっている。例えば食事の際には、食べ物の情報が脳に送られ、脳のシグナルが自律神経を介して胃に伝わり、胃の動きや胃酸分泌が調節されている。
一方で、海外の最新研究により、胃から脳への逆方向の情報伝達もあり、胃の活動が感情や自律神経の働きといった脳の機能に影響を及ぼしていることが分かってきた。つまり、胃と脳が双方向に影響を及ぼす「胃脳相関」が存在し、胃の健康のみならず、心身の健康において重要であると考えられている。
乳酸菌「OLL2716株」は、胃で働くために必要な特性を持っており、これまでに食後のもたれ感などの不快感が慢性的に続く胃の機能障害である、「機能性ディスペプシア」に有効であることが、国内外の専門家の間で注目されている。
本研究では胃と脳のネットワークに着目し、「OLL2716株」の継続摂取による自律神経バランスの改善効果を検証した。
まず、軽度から中等度の胃排出遅延(胃の動きの低下により食べ物を消化して腸に送り出すまでに時間がかかる状態)が見られる20〜64歳の日本人28人(男性4人、女性24人)を、「OLL2716株」群(14人、内1人脱落)とプラセボ群(14人)に無作為に分けた。
次に、「OLL2716株」群は当株を含むヨーグルト、プラセボ群は同株を含まないヨーグルトを1日1個(85g)、12週間摂取する。試験食品摂取前(0週)、摂取開始から6週間後と12週間後の3回、自律神経の働きを検査する唾液アミラーゼ検査と、胃排出能の検査を実施した。
その結果、自律神経バランスの指標である唾液アミラーゼ濃度が、当該乳酸菌の摂取により有意に改善(図1)することが確認された。さらに、低下した胃の動きを改善する傾向(図2)が認められた。
以上の結果から、「Lactobacillus gasseri OLL2716株」の継続摂取は、胃と脳のネットワークである「胃脳相関」の健全化を通じて、胃と心身の健康にも好ましい影響を与える可能性があることを見いだした。