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レシピを提供するだけで自店のメニューを通販できる! 卸3社が提携工場で商品の製造・販売を代行【シコメル】

2020年11月5日 1:18 pm

 コロナ禍でイートインの収入だけでは事業継続が難しくなる中、自店の人気メニューをEC(通販)で販売して収益化を図ろうという中小や個店の飲食店にとって、各種免許の取得や商品の製造はハードルが高い。

 飲食店がテクノロジーを活用して店舗以外での売上を確保できるようにとの想いから、冷凍・レトルト食品や惣菜、タレ、スープなどの製造・卸の西友フーズ(大阪・長原、西原直良社長)と、黒毛和牛、豚、鳥、輸入肉などの製造・卸の岡山フードサービス(大阪・あびこ、岡山克巳社長)、大国フーズグループで野菜、果物の製造・卸のベジリード(大阪・東部市場前、澤井厚二社長)の卸3社が立ち上げたシコメルフードテック(大阪・長原、西原直良社長、以下シコメルFT)は、飲食店が負担なくEC販売をできるサービス「タノメル」https://www.tanomel.com/for-ornerを開設し、導入企業を増やしている。

 「タノメル」は、店舗のメニューを調理済み食材セットの形にして、一般向けのECサイトで販売するサービス。飲食店は、それぞれのメニューのレシピを提供すると、シコメルFTがそのレシピを元に、3社の提携工場で食材キットを製造。試作品をチェックし金額などが決まれば、「タノメル」で販売開始となる。

 商品はすべてHACCP 対応の提携工場で製造し、法令順守や梱包・発送、問い合わせ対応などはすべてシコメルFTが引き受けるため、飲食店側に製造や問い合わせなどの負担はかからない点が特徴となっている。商品の加工についても、肉・魚・野菜などに加えて、ソース・スープやレトルトにも対応する。

 売上に関しては、運行代行費用として15~20%と製造代行金額、決済手数料3.5%をシコメルFTに支払い、販売価格の約20%程度が飲食店の利益になるよう設定するという。

 シコメルFTファウンダーの川本傑氏は「小規模店舗でも負担なくECで収益を上げられるようにと考えた通販サイトだったが、コロナ禍が影響して、個人店から1部上場企業まで幅広く参加することになった。12月末には30~40ブランドを掲載する予定」と話す。

 「タノメル」は元々、テクノロジーを活用した「小規模店舗向けセントラルキッチン」サービス「シコメル」https://shikomel.com/の延長線上で提供する予定だったサービスだ。

 「シコメル」は、それぞれの店が独自に持っているレシピをシコメルFTに提出すると、そのレシピを元に7~8割の工程を削減できる「仕込み済み商品」を提携工場で製造。店舗側がOKを出せば、「シコメル」のアプリにその「仕込み済み商品」が登録され、スマホで発注し、宅配便で受け取る仕組み

 一般的に流通している野菜や肉、ソースなどを使用している食材やメニューであれば、卸3社で食材を仕入れて、そのまま店側の要望通りに加工する。例えばカットした野菜や、一口大にしてタレに漬け込んだ鶏もも肉、独自の配合のソースやスパイスなど、レシピ通りの「仕込み済み商品」が提供されるので、作る手間や仕入れ時に発生する中間マージンを削減できる

 また、店舗の人件費や光熱費も減らせるため、専用キッチンがなくてもセントラルキッチンを持つことと同じメリットを得られる。そのため、店舗では希少な部位やこだわりの食材を使った仕込み、調理に力を入れられるという。

「シコメル」の注文画面サンプル

 同社は同時に、このスキームを店舗にとっての新たな収益源に活用するスキームとして、「仕込み済み商品」をほかの店舗にも販売することを予定している。これが実現すれば、レシピを提供した飲食店は何もしなくても販売分のフィーという新たな売上を得られるとともに、例えば「宇都宮の名店〇×店の餃子のタレ」や「韓国料理の名店□△店の特製キムチ」などのように、ほかの店で自店の味が提供されることで認知度向上にも役立つ。

 肉、野菜、果物、惣菜、ソース・タレの製造・卸3社が揃っているため、さまざまなレシピに対応できるとともに、食材も市場から直接調達できるので、スピーディーで安価となる。また、既存の取引先店舗が3社合計で7500店舗以上あることも、「仕込み済み商品」を販売する際の強みとなる。すでに魚介類の製造・卸の企業との協力が決まっており、さらに取り扱える商品が広がる。今後、乳製品やスイーツを作れる卸の協力企業を探す予定だ。

 「提携工場を増やすことで、飲食店がアプリで発注すると、その店の位置や食材、メニューなどを元に自動的に最適な工場が選ばれる。この仕組みが広がれば、製造から卸、二次卸、店舗という多重構造が解消され、大幅なコスト削減を図れる」(川本氏)という。

 利用料や「仕込み済み商品」販売によるフィーについては、使う食材や加工の手間により変動があるため、都度の見積もりになる。