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あか毛と黒毛のいいところ取り! 牧草のみで育てた赤黒和牛が誕生【東京農業大学】

2019年12月20日 12:57 pm

 東京農業大学総合研究所(山本祐司所長)は、黒毛和種を母牛とし、あか毛(褐毛)和種を父牛とした赤黒和牛を作ることに成功した。今後も試作を続けながら、健康的な赤身と適度な脂身がある柔らかな肉質の「農大和牛」ブランドで出荷できる体制を整えていく予定。

 肉質に強い影響力のある黒毛和種の卵子と、草の利用が上手なあか毛和種の精子を合わせた体外受精卵を、東京農大の乳牛(ホルスタイン)のお腹に入れて出産。和牛は育て方で肉の仕上がりが大きく変わるため、双子のうち一方を東京農大の牧場の牧草100%で、もう一方は従来の黒毛和種と同様の穀物飼料で育てて比較した。

左が牧草食牛、右が穀物食牛

 12月18日に開いた試食会でローストビーフとして提供したところ、牧草食の方は肉量も多く、肉色が健康的で脂が少なく、草のきつい風味もなく、たくさん食べられる肉に仕上がったという。

 黒毛和牛は世界にも通じるブランドとなってきたが、霜降りの肉質重視の傾向があり、輸入穀物飼料を使った特別な飼養方法で飼養されている。また、特定の血統に人気が集中するため価格が高騰し、肥育農家の経営を圧迫しているという課題がある。

左が牧草食、右が穀物食

 そこで同大学農学部動物科学科の岩田尚孝教授と研究室の学生が、国産飼料で育てられる健康的な赤身を持った国産和牛肉の需要もあるのではと考え研究を開始し、出荷までこぎつけた。

 今回は、草をよく利用する赤牛の資質を発揮させるには、牧草と穀物の餌に占める割合をどの程度にするのが最適かを調べるために、穀物食100%と牧草食100%で育てた。「牧草だけで和牛を育てるといったことは初めてでありどのくらい大きくなるのかは興味深かった」という。また、移植に使った胚は、凍結保存に対して耐性が強くなるように工夫したという。

 当面は付属牧場と関係牧場で試作を続けながら、興味を持ったレストランや肉店などへの流通も整備したい考えだ。