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ロボ接客の立ち飲み店登場も間近か!?~ここまで来たロボット最前線~【QBIT Robotics & コネクテッドロボティクス】

2019年11月21日 6:37 pm

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ドリンクバーなど飲食店内の一部に設置する可能性も

 「おもてなしコントローラー」は、周囲にいる人の距離、動きの緩急、表情、目配りなどから、より購入してくれそうな人を瞬時に判断。ターゲットを惹きつけるために最適な対応を選び実行する。機械学習(ディープラーニング)により、数をこなせばこなすほど精度は高まり、多店舗展開した際には、すべてのロボットの学習結果を共有することで、一気に成長する可能性を秘めている。すでに開発当初に100項目ほど入力した会話内容が、数カ月で800項目に増えているという。

 また、カメラ画像の記録は保存しないため、サーバーなどへの負担が少なく、コンピュータシステムを店舗内に内蔵することで、AIの判断から実際の動きまでの遅れが出ない。設備はすべてパッケージ化しているため、設置も数時間で完了し、すぐに営業を始められる点にもこだわった。

 利用しやすいように、トータルでのリース額を月25~27万円と、従業員1人分と同程度の料金設定とすることで、常駐での利用を増やしたい考えだ。営業許可を取るためには店員が最低1人必要になるため、店長とロボットでの出店となる。

中野浩也社長(右)と狩野昌央会長

 中野社長は「楽しい空間を作れるロボットを目指した。一見、奇抜なサービスと思われるかもしれないが『変なカフェ』は黒字経営を続けている。休みなく働くため1人当たりの生産性が向上し、収益面でも期待できる」と説明する。

 今後、さらなる軽量化・小型化を進めるとともに、フルパッケージ以外にも、ドリンクバーなど飲食店内の一部に設置することにも対応していく予定だ。その場合は新たな営業許可も必要なく、よりスムーズに進められ、生産性はさらに上がると予測する。

 狩野昌央会長は「会話能力はどんどん進化しており、そのうち雑談もできるようになるだろう。カフェに限らずさまざまな業態や、外食以外の小売り店舗や車に搭載することで、現場の状況をリモートで瞬時に判断し、かつ現場の反応・反響をフィードバックする『おもてなしプラットフォーム』を構築する予定だ。ロボットが雑談する立ち飲み居酒屋もできるかもしれない」と話す。近い未来に、ロボット相手に一杯ひっかけながら、愚痴をこぼすサラリーマンの姿が見られるかもしれない。

 

「Octo chef(オクトシェフ)」とソフトクリームロボット「レイタ」を初導入した《ポッポ 幕張店》

人と一緒に働くことを目的に調理やサーブを援助
【コネクテッドロボティクス】

 コネクテッドロボティクス(東京・小金井、沢登哲也社長)が開発し、長崎・ハウステンボスで営業していた自動たこ焼きロボット「Octo chef(オクトシェフ)」とソフトクリームロボット「レイタ」が、セブン&アイ・フードシステムズが展開するファストフード店「ポッポ 幕張店」に初導入された。両ロボットが関東で常時営業する店舗に導入されるのは今回が初めて。

自動たこ焼きロボット「Oct Chef(オクトシェフ)」

 今回の出店に向けて「オクトシェフ」は、たこ焼きをしっかりとひっくり返すスキルを向上させるとともに、設備面でも、より容易に設置できるようにした。また、消耗品を長持ちさせて、メンテナンスもしやすくした。設置スペースは、鉄板や材料を載せる台、ロボットアームなどの一式で、間口1.6m×奥行1.1mの0.6坪。「レイタ」の場合は、ソフトクリームサーバーも含めて間口1.2m×奥行0.7mの0.3坪となる。この大きさであれば、ほかの「ポッポ」既存店でも、それほど大きな改修工事をしなくても導入できるという。

 また、たこ焼きの味にもこだわった。セブン&アイ・フードシステムズがブラッシュアップを図り、外はカリッと中は熱々でトロッとした独自レシピを開発。焼き加減のプログラムや具材などを変えることで、同じロボットを使っても全く違う味にできる点も、今回の調理ロボットの特徴の一つだ。

 たこ焼きは約20分で96個(12人分)作ることができ、ソフトクリームは約45秒で1個提供する。ちなみに「ポッポ」では、たこ焼きロボットには〝ハッピー〟、ソフトクリームロボットには〝ワンダー〟という親しみやすい愛称を付けた。今後、ほかの「ポッポ」での導入を進めると同時に、「ポッポ」で提供している〈黄金焼き〉(今川焼き)などもロボットで調理できるように、両社で協力して開発を進める予定だ。

自動ソフトクリームロボット「レイタ」

 コネクテッドロボティクスが目指しているのは、ロボットと人が同じ場所で共に働ける環境を作ることだ。そのために、大規模なロボットではなく、安全性が高く、スペースもそれほど必要としないロボットアームに特化した。たこ焼きの自動調理を選んだのも、夏の暑い時期に鉄板のそばを離れずに焼き続けることがスタッフにとっては大きな負担となり、募集のネックになっているためだという。

 商品として提供できるレベルのたこ焼きを作るために、まず焼き具合や丸い形状になっているかを判断できるように、機械学習(ディープラーニング)を施したAIに、最良の焼き加減や形のたこ焼きと失敗したたこ焼きなど4000個のデータを学習させ、その後、AIが自ら日々学習できるようにした。これにより、数をこなせばこなすほど失敗が減り、より正確な調理が可能となる。

 同社は、ロボット自体を販売するのではなく、調理プロブラムを開発・販売するビジネスモデルで今後、人間では真似し難いスキルの追求や見た目のエンターテイメント性を追求し、五感を刺激するプロダクトサービスを作り上げ、娯楽施設などに提供していくことを考えている。人とロボットが共に働く姿が日常の風景に溶け込むのは意外と早いかもしれない。

1人分の人件費で導入でき集客と収益化実現

 ロボット従業員を導入することについて、無機質な動作でメンテナンスが難しく、割高なイメージを持っている人が多いかもしれない。しかし、今回取り上げた2社はともに、人件費高騰や働き方改革などによる人手不足とコスト増に対して、ロボットを有効活用することで課題解決に役立つことを目指している。

 そのため、導入費用も1人分の人件費程度とし、特別なメンテナンスや専門知識なども必要ない仕様としている。ロボット従業員であれば、昇給や有休なども必要ないため、長く稼働すればするほど、収益が増える計算だ。

 また、バックヤードで無機質に稼働するのではなく、売り場に設置するためにエンターテイメント性を重視し、集客にもつなげて売上増を図ることも狙っている。

 日本の外食業界は最もIT化が遅れていた業界の一つであったが、ロボットに関しては、世界の最先端をいく業界になり得るかもしれない。

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