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飲食店の強み+αのハイブリッド─withコロナ時代の生存戦略に賭ける想いとは

2020年6月6日 8:03 am

(2020年6月5日号「日本外食新聞」2~3面より抜粋)

コロナで呼びかけ
繁盛店弁当一堂に

 ――そっち持って。テント立てたら、テーブルをセット。そろそろ、弁当が到着するから――

 5月11日、午前10時。群馬・高崎にあるラジオ高崎の前で数人の有志がテントを組み立て始めた。ここで飲食店10店舗の弁当が11時から販売される、臨時ショップが作られている最中だった。

 その中心に、すぐ隣のビルの地下に店を構える「割烹さわ」代表の深澤龍一さんの姿があった。深澤さんは高崎飲食店組合(総勢約110店舗)の組合長で、この日から、組合員の若手有志の弁当を買い上げて販売を開始しようとしていた。

 初日のこの日に参加したのは8店。
準備がまだ終わらないのに、テントにはお客さんが集まってきて、開店前の10時39分には、パスタの街として知られる高崎で開かれる「キング・オブ・パスタ」という有名なイベントで3回の優勝を誇る、「バンビーナ」特製の〈えびジェパスタ〉900円と〈ノックスの欧風カレー〉800円、そして〈焼きとり えにし唐あげ弁当〉650円が次々に売れていった。

 そして、12時には80個の弁当が完売し、ラジオで弁当販売の話題を放送してくれたときにはすでに弁当は無かったという、初日の引きの強さだった。

 普段から弁当を販売している店も多く、原材料や消費期限表示などのラベルもきっちり貼られており、許可関係も抜かりがない。それは普段から組合を通じて「各種の衛生研修を含めて保健所とのコミュニケーションを密にしている」ことが功を奏したようだった。

 「炭火焼肉 千味庭」や「ぷるぷるホルモン」などを群馬県で展開する千容植(せん・ようし)さんが経営するZION(ザイオン)も、この高崎飲食店組合に加盟しており、その上部組織である群馬県飲食業生活衛生同業組合は34の支部で構成される大所帯。

 高齢化が進む飲食業生活衛生同業組合の中でも、高崎飲食店組合は若手が中心で、活動も活発だ。その理由を同組合の副会長でもある千さんはこう説明する。

 「当初、若手だけで新たな勉強会を作ろうとか、そういう意見があったのも事実だが、周りを見ると自分たちで作っても続かない例が多い。ならば、もともとある公的な組合をしっかり運営していこうとなった」

 「公的な組合なので、商工会はもとより、市役所や保健所も好意的に活動をバックアップしてくれる。若手の役員には全員、食品衛生指導員の資格を取らせ、保健所や食品衛生協会とのコミュニケーションを密に取り、味方にしている。やりたいことをまず相談すれば、実現する方向で相談に乗ってくれる」

 千さんはこの組合のコミュニティを使い、コロナ禍で苦しむ飲食店仲間の弁当を1カ所で売ることを考えついた。全量買い取り。ただし、ロスも出るので一律15%の手数料は貰う。高崎でも人気の飲食店の弁当ばかりだ。それを集めて売る狙いは、別に弁当店を開くためでは無かった。