事例紹介コラム

「カスハラ」ってご存じ? これからは店がお客さんを選ぶ時代に突入だ!!

2022年10月24日 9:14 am

 飲食店で働く人の中には、接客業務が好きで飲食の道へ進んだケースも多い。とはいえ、店員に対してあまりに横柄な態度を取ったり、筋違いの難癖を付けるようなカスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」は困りものだ。

■丁寧なお客さんには1.9ポンドで提供、横柄な人には約2.6倍に

 先日、イギリスのカフェ「Chaii Stop」が始めた、カスハラへの対応策が話題を呼んでいる。

 店頭に置かれた黒板には、〈チャイティー〉の価格が3つ表示されている。商品名の「デシ・チャイ(Desi Chai)」とだけ言って注文した人は5ポンド(約834円)。「デシ・チャイをお願い(Desi Chai,Please)」と注文した人は3ポンド(約500円)、「こんにちは。デシ・チャイをお願いします(Hello,Desi Chai,Please)」と、挨拶をして丁寧に注文した人には1.9ポンド(約317円)とある。

 同店の公式インスタグラムには「これは素晴らしい」「これ大好き」「マナーに費用はかからない! 最高!」という賛同のコメントが多く寄せられており、ほとんどの人がこのボードを支持している。

  英・Mirror紙によると、オーナーのウスマン・フセインさんは今年3月に「Chaii Stop」をオープン。ボードを設置してからというもの、5ポンドを支払った客はいないそうだ。

 「無礼なお客さんに苦労したことはない」としながらも、 「もしお客さんがぶっきらぼうに頼んだとしても、私がボードを指差すと、すぐに丁寧に注文し直してくれる。このボードを用意してからはお客さんがよりオープンになり、一緒に笑うようにもなった」のだとか。

■日本でもカスハラ客対策が進みつつある

 日本でも同様の取り組みをする居酒屋もある。18年には、「大衆和牛酒場コンロ家 飯田橋店」(大阪・中津、畑中泰社長)の貼り紙が「炎上」した。

 「おい、生ビール」と注文した人には1000円(税別・以下同)、「生一つ持ってきて」だと500円、「すいません。生一つください」だと定価の380円になる。

 その下には、「お客様は神様ではありません。また、当店のスタッフはお客様の奴隷ではありません。当店にとって一人一人が大切な奴隷 宝物なのです。皆様のご理解とご協力をお願いします。 コンロ家より愛をこめて」と続く。

 この貼り紙がツイッターで紹介されるやマスコミをも巻き込む大きな話題に。賛否両論と報じるメディアが多かったが、この騒動をリアルタイムに見ていた記者には、「コンロ家」に賛同するユーザーの方が多いように感じられた。

 任天堂も10月19日、同社の「修理サービス規定/保証規定」に「カスタマーハラスメントについて」という項目を追加した。
 修理などの問い合わせの際、消費者から脅迫や保証の範囲を超えた無償修理の要求などがあった場合は、交換または修理を断る可能性があるとする。

任天堂のサイトより引用

 ツイッターでは「カスハラについて任天堂さんのようなグローバルリーダーが明文化されたのは事業者側の立場としてとても心強いです」「今は明らかに逆の立場が強すぎる 他の企業も続いて欲しいな」と、任天堂の姿勢を支持する声が多くみられた。
 
 カスハラが言いがちな「お客様は神様です」というフレーズは、故三波春夫が生み出したものだが、本来の意味とは全く異なる。
 
 「舞台に立つとき、敬虔な心で神に手を合わせたときと同様に、心を昇華しなければ真実の藝は出来ない」と考えた三波氏は、「お客様を神様」と見立て、歓ばせるために歌ったのだ。いわば奉納演舞の心意気に近いだろう。
 
 たとえ神様といってもカスハラは「貧乏神」だろう。スタッフのストレスをため、それを見た他のお客さんも「なんか雰囲気悪いよね」と敬遠してしまう。
 
 店の運気が下がりそうな客に平身低頭するよりは、「そういう人は来なくて結構です」という姿勢で運営したほうが、「福の神」は来てくれそうだ。