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ロボ接客の立ち飲み店登場も間近か!?~ここまで来たロボット最前線~【QBIT Robotics & コネクテッドロボティクス】

2019年11月21日 6:37 pm

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エンターテイメント性兼ね備えたロボット従業員の実力とは

 これまで長崎・ハウステンボスなどアミューズメント施設や特別な店舗でしか見かけなかった調理ロボットが、一般の店舗にも導入され始め注目を集めている。これまでは配膳や食器洗浄など裏方の業務に使われることが多かったが、最近では人前で調理し、接客までこなすロボットが現れた。省力化だけでなく、集客にも効果を発揮する最新の飲食店向けロボット事情を紹介する。

QBIT Roboticsのカフェロボットを導入し阪神西宮駅商業施設「エビスタ西宮」にオープンした店舗《Cave de Terreエビスタ西宮店》

無人でカフェを運営し笑顔のタブレットで呼び込みや会話も
【QBIT Robotics】

 11月9日に開業した兵庫・西宮の阪神西宮駅商業施設「エビスタ西宮」1階に、関西初となるAIが接客するロボット「&robot cafe system」を導入したカフェ「Cave de Terre(カーブ ド テール)エビスタ西宮店」がオープンした。このカフェロボットをUCCグループと共同で開発したのが、QBIT Robotics(東京・半蔵門)だ。

 同社は、旅行代理店のH.I.Sが運営するフロントやクロークなどの業務をすべてロボットが担う「変なホテル」の開発に携わった中野浩也社長と狩野昌央会長らにより設立された。長崎・ハウステンボスに続き、H.I.Sが2018年に東京・渋谷に出店した「変なカフェ」でも導入されているロボットカフェ「& robot」を開発し、先日、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、深刻化する人手不足対策として飲食・小売、食品、施設管理の3分野でのロボット実装を加速するために立ち上げた特別チーム「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」にも選ばれた

 「& robot」は、約1.8坪(2.4m×2.4m)のスペースに給・排水管と電源があれば、1日2回程度ミルクなどの補充をする以外は、無人でカフェを運営するロボット一体型店舗だ。中央に設置されたロボットアームには、さまざまな表情を表示するタブレット画面が付いており、通行人への呼び込みから接客、会話、調理、商品の提供まですべての業務をこなす。カフェの営業許可も取得できる。

天井に設置した4台のカメラを駆使して、人の動きや表情を検知

 「& robot」の最大の特徴は、天井に設置した4台のカメラを駆使して、作業していない時に店舗に近づいて来る人を検知すると、「いらっしゃいませ」などと話しかける点だ。遠距離を写しているカメラから近くを写しているカメラに人が移動した際に、その人を同一人物だと判断するのは非常に難しい技術が必要になるという。

 またAIが近づいてくる人の表情やスピードを解析し、急いで移動している人はスルーし、ゆっくりと歩きながら、目線をこちらに向けた人には話しかけたり、手を振ったりして惹きつけ、購買につなげる。お客さんの表情から性別、推定年齢などを分析し、それぞれの属性に合わせた話題を話したりアームを動かしたりする。

 インターネット経由で天気情報を入手して、「今日は暑いですね」「雨が降っていますね」などの会話もできるという。相手の表情が笑顔になったと判断すると、AIはそれが正しい対応だったと学習し、次につなげる。「Cave de Terre エビスタ西宮店」では、一般的な会話に加えて、「今日は甲子園球場でも行こうかな」「今年一の福おとこに選ばれるのは、どなたかな?」「みなさんは、十日えびすにはもう行かれましたか?」などローカルネタの発話も盛り込んだ

タブレットが笑顔で接客する

 注文を受けると、ロボットアームがエスプレッソコーヒーマシンやドリップマシン、グラインダー、アイスディスペンサーなどを操作してコーヒーを淹れ、受取口に商品を置く仕組みだ。注文ごとに豆を挽くドリップコーヒーなら1時間で20杯、コーヒーマシンを使ったカフェラテなら30杯作れる

 基本設定では、多くの人が心地よく感じる女性の音声を採用しているが、ロボットの顔となるタブレット画面や声は、企業のイメージキャラクターの画像や声に変更できるため、企業ブランドのPRとしても活用できる。

 大手メーカーのほぼすべてのロボットアームに対応しており、調理機器やロボットアームを変更すれば、カレーやビールなどほかのメニューも作れる。12月4~9日、JR東日本スタートアップが「スタートアッププログラム2019」で採択したベンチャー企業のサービスを埼玉・大宮駅でデモンストレーションするイベント「STARTUP_STAITON」では、ロボットパスタカフェを出店する。

 これら声を掛けて会話したり、笑顔を見せながら手を振ったりする動作の要となるのが、同社が開発し、国際特許出願中の「おもてなしコントローラー」と名付けたAIシステムだ。

 「& robot」は、ロボットアームを稼働させる調理用のAIと接客するAIは別々で稼働している。中野浩也社長は「今は調理用のロボットアームとおもてなし用のタブレットが一体となっているため、コーヒーを淹れている間は集客や接客ができない。調理ロボットは他社でも開発が進んでいるため、そういう企業とコラボし、集客・接客と調理のロボットを別々にして、当社はおもてなしロボットに力を入れる形もありかもしれない」と話す。(次頁に続く)