ピックアップ酒・ドリンク開発秘話

新ブランド「サブ」に統一しブレンデッドウイスキーの海外展開強化! 樽再生の新事業も始動【若鶴酒造】

2024年12月11日 11:16 am

 若鶴酒造(富山・砺波、稲垣貴彦社長)は、同社のウイスキーを製造する三郎丸蒸留所のブレンデッドウイスキーを統一した新ブランド「SAB.(サブ)」を立ち上げた

 三郎丸蒸留所のウイスキーはスモーキーさを特徴としており、世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」を開発するなど、新しい技術も積極的に導入している。今回、グローバル展開を強化するにあたり、全世界のウイスキー消費量の大半を占めるブレンデッドウイスキーへの挑戦を決めた。

 

世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」

 現在販売中のブレンデッドウイスキーは終売とし、「サブ」のブランド名で、スモーキーさはそのままに、一貫性のある味わいに仕上げた3種を新たに開発。エントリー向けで甘く丸みのある〈SAB. SUNSET RED(赤)〉(参考小売価格:700ml・税込3498円)と、より奥深く、複雑さをもったスモーキーさが光りピートを極めた〈同 NIGHT BLACK(黒)〉(同5390円)を12月12日に、力強いスモークとフルーティな魅力が際立つ数量限定の〈同 OCEAN BLUE(青)〉(同9900円)を25年夏にそれぞれ発売する。

 同社は本社建屋をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)にするなど環境保護にも力を入れており、今回の製品についても、瓶にリサイクルするために回収した瓶を粉砕したカレットを90%以上使用。軽量なので輸送時の二酸化炭素削減にもつながるとする。

若鶴酒造・稲垣貴彦社長

 都内で会見した稲垣貴彦社長は「国内外で蒸留所が増え競争が激化する中、当社のブレンデッドウイスキーは名前がバラバラで覚えられづらかった。そこで外国語でも覚えやすくグローバルで勝負できるウイスキーを新たに開発。ロゴマークについても、日本特有のカタカナ2文字の筆文字にすることで、デザインとして受け入れられるようにした。全体での輸出割合も現在の20%から30年度に50%にしたい」と説明した。各製品のテイスティングノートは以下の通り。

■〈SUNSET RED〉


コンセプト:スモーキーなウイスキーへの入門からこだわりのユーザーまで幅広く対応する甘く、丸みのあるブレンデッド。

香り:潮気、落ち着いたウッディさ、オレンジ、灰、ほのかなワックス、キャラメル、全体を包み込むスモーキーさ。

味:滑らかで、ふくよかで丸みのある甘み、キャラメル、スモーク、赤いリンゴ。ブレンデッドとしてはボディが十分にあり、飲み応えがある。後味はウッディさと丸みのある甘みが続く。

■〈NIGHT BLACK〉


コンセプト:より奥深く、複雑さをもったスモーキーさが光る「ピートを極める」を体現したブレンデッド。

香り:落ち着いた香り立ち、燃えさしの木の様なスモーク、爽やかなウッディさ、黒胡椒のヒント。

味:滑らかで柔らかな口当たり、苦味、わずかな黒胡椒、舌を覆う灰、全体を引き締めるしっかりとしたウッディさ、土っぽさのあるピート。穏やかにスパイシーでしっかりスモーキー。

■〈OCEAN BLUE〉


コンセプト:三郎丸の特徴である力強いスモークとフルーティな魅力が際立つ三郎丸最高峰のブレンデッド。

香り:力強いピート、灰、リンゴ飴、みりん干し、ほのかな蜂蜜、スモークウッド、かすかに山椒、火の消えた蝋燭のワックス。

味:丸みがありスムーズ、舌を覆う灰としっかりとした酸味、力強いピート、蜂蜜をかけたリンゴ、しっかりとしたウッディさ、海藻。後味は上品で穏やかにウッディさとピートの暖かさが残る。

 日本初となる洋樽・木桶の再生事業も開始

 同社は同時に、世界的な樽不足に対応するため、樽の「修理・再生・再活性化」を担う新事業「Re:COOPERAGE(リク―パレッジ)」を立ち上げた

洋樽だけでなく木樽の再生も請け負う

 独立系の樽メーカーは宮崎に1社のみであることから、日本のほぼ中央の富山県で請け負うことで輸送コストの軽減も図れるという。

 同事業では、日本で1人のみといわれる洋樽と木樽の両方を作れる祝迫智洋氏が責任者として就任。両方の樽のリペア・リメイク・リチャー・リトーストなどを請け負うとともに、樽職人も育成していく。また、作業効率向上のため、樽再生の仕上げで使用する自動樽削り機「バレルロール」を開発し特許を取得した。

独自開発し特許を取得した樽内部自動削り機「バレルロール」

 稲垣社長は「日本ではこれまで良質な樽のみを輸入してきたが、樽不足により漏れや欠減する樽が増えきたことから、この事業を立ち上げた。日本のウイスキー産業を支え、基盤を底上げすることに寄与したい」と語った。

 さらに2025年には、10カ所以上のパートナー蒸留所から原酒を購入し、独自のノウハウで商品化して販売する世界初(同社調べ)となるジャパニーズウイスキーのボトラーズ事業で、最初の製品を販売する予定となっている。同事業により、パートナー蒸留所のキャッシュフローを生み出し安定した操業を支援するとともに、製造やマーケティングに関するコンサルティングも実施。同社は今後も、「ジャパニーズウイスキーを産業にするため、下支えするインフラを整える」(稲垣社長)施策を推進する。