アプリ開発やECの開発・運営事業を手掛けながら都内に「焼肉おおにし」などの焼肉店も運営するスマートフード(東京・小伝馬町)社長の大西淳さんが、集客などにかかるコストと手間を軽減するために開発したのが、ショート(短尺)動画で店舗を紹介する、無料グルメ検索アプリ〈smafoo(スマフー)〉(https://smafoo.jp/owner/)だ。自ら飲食店を運営するからこそ飲食店ファーストで開発できたという〈スマフー〉とは、どういうサービスなのか。[2024年「日本外食新聞」2月5日号掲載]
短尺動画サービスのティックトックの平均利用年齢は約36歳(2023年調査)に上昇しており、インスタグラムのリール機能も幅広い年代に利用されている。そして、これらのSNSを使い慣れている人たちは、飲食店探しにも短尺動画サービスを活用している。
一方、飲食店の集客方法は、グルメサイトに写真を掲載し掲載料や送客手数料を支払う方法が定着しており、コスト高や人手不足が深刻化する飲食店にとって、金銭的にも手間の面でも大きな負担となっている。
そんな中、大西さんが立ち上げたスマートフードは22年8月、SNSとグルメサイトの良いとこ取りをしたサービスとして〈スマフー〉のβ版を提供。昨年4月に正式版をリリースし、昨年末にかけて大規模な機能追加も行った。
〈スマフー〉とは、10秒のショート動画をメインコンテンツとし、ティックトックなどのSNSのように各店舗の動画または写真(以下、動画で統一)を見るだけでも楽しめるグルメ検索アプリだ。表示する動画は、検索ユーザーの半径100mから15㎞の店舗で、ユーザーがエリア(または現在地からの距離)・ジャンル・予算などの条件を設定することで、その条件に沿った店の動画が表示される。
動画が表示される画面には、店名とジャンル、予算、距離といった情報と各種アイコンという最低限の情報のみが掲載されている。上にスワイプすると次の店に移り、表示順は、ユーザーが距離・ランキング・オープン日・いいね数・昼または夜の予算額(高い順と低い順)から選ぶ。
つまり、グルメサイトのように検索してから店舗情報にたどり着くのではなく、動画が気になれば右にスワイプ(または店名をタップ)するだけで、その店舗の営業時間、予算、電話番号、地図、公式SNSへのリンクといった店舗情報が即座に表示されるのだ。これにより近くにいる潜在客に店舗情報の届く確度が高くなり、グルメサイトのように上位表示されないとアクセスされないといった不公平感もなくなる。
スマートフードは、食べログやグーグルマップなどに掲載されている店名や住所などの基本情報を自動的に収集するシステムを構築したため、全国の飲食店約62万店がすでに掲載されている。そして月に1度、最新情報に更新するため、開店・閉店情報も素早く反映されるようになっている。そのため、オーナー登録されていない店については基本情報欄に「オーナーの方はこちら」のバナーが貼られており、利用申請した際には10秒動画を最大3本登録するだけで即時利用できる仕組みだ。
そして、同サービスがグルメサイトやSNSと違う最大の点が、表示する動画やコメントなどの管理をすべて店側ができることだ。ユーザーは自分が撮影した動画を投稿できるのだが、店舗のトップ画面に表示する動画3本は店側が選択するので、公式動画よりも投稿動画の方が良いと思えば、その動画をトップに表示できる。ユーザーは店舗の詳細情報で他の投稿動画を見ることもできる。投稿されたコメントの表示・非表示を店側が個別に決められるので、良いコメントのみを掲載できる。
直感で店を見つけるワクワク感取り戻す
さらに、投稿数やいいね数を基にしたランキング画面では、店舗と投稿動画に加えて投稿者の順位も表示される。ここには著名なグルメインフルエンサーも数多く入っており、投稿者の自己紹介欄にSNSのリンクも貼れるので、店と投稿者だけでなく、投稿者同士で新たなコミュニケーションが生まれる仕様となっている。
同社には有名なグルメインフルエンサーの東京グルメ氏が役員として参画しており、インスタグラムのリールとの投稿連携など、インフルエンサーのニーズにも対応している。現在、約5000ユーザーが登録。これまで動画投稿された店舗数は2万店を超えた。
大西さんは「〈スマフー〉だけで十分という世界を実現する」ために23年末、「空席情報」と「求人」「インフルエンサー募集」の新機能を追加した。利用すると、トップ画面の右下にある店舗アイコンの隅に「求人」や「空席」などの小さな表示が追加され、そこをタップすると詳細情報が表示される。
空席情報では、「○時に△席空席あり」など自由に空席情報を表示でき、詳細部分で電話や予約サイトのリンクを貼ることもできる。SNSと違い商圏内のユーザーのみに届くので、より大きな効果を期待できるという。
求人についても近隣のユーザーにのみ表示されるので、ポスティングのような効果を得られる。近日中に離れたエリアにいても仕事を探せるよう求人検索機能も追加する予定だ。
また、SNSで拡散されたいという店舗を対象とした「インフルルエンサー募集」では、インフルエンサー向けの特典や条件などを表示できる。
そのほか英語・中国語・韓国語・フランス語・スペイン語での表示にも対応しており、各国でダウンロードできるようになっている。これらはすべて、飲食店が通常有料で利用しているサービスであり、大西さんは「中間業者に搾取されずに済むようにしたかった」と無料とした。
では、どのようにマネタイズするのか。同社は、中小企業でも低予算で実施できる「リール広告」と、主に全国展開している大手チェーンを対象にした「メイン広告」の2プランを用意した。
まず「リール広告」は、通常の店舗紹介と同じ仕様で、右下の店舗アイコンに「広告」と小さく表示されるだけなので、ユーザーにとってストレスを感じづらい仕様となっている。表示範囲はユーザーの半径1㎞以内で、9店舗ごとに繰り返しその店が表示される。1回表示するごとに5円かかり、最大1万円(2000回表示)までとなっている。広告の表示・非表示は管理画面から設定できるので、広告を出したい時だけ利用でき、広告用の動画などを用意する必要もない。
「メイン広告」は〈スマフー〉起動時に、ユーザーの位置に最も近いチェーン店が必ず表示されるというもの。こちらは表示無制限で月1000万円からとなっている。将来的には、〈スマフー〉に蓄積されたビッグデータを活用したサービス提供も視野に入れている。
大西さんは「もう一度昔のように自分の直感でお店を見つけてワクワクする原点に立ち返り、お店とユーザー間に中間利害がなく、お互いが繋がれるサービスを目指す」と想いを語る。その実現に向け、まずは28年に1000万ダウンロード、広告収入60億円を目指す。