〈TABASCO(タバスコ)ソース〉を製造しているマキルヘニー社(アメリカ・ルイジアナ州、ハロルド・G・オズボーン代表)は、7月1日に「TABASCO」ブランド史上最も辛い、〈TABASCO スコーピオンソース(以下スコーピオンソース)〉を発売した。日本における新製品発売は約7年ぶりとなる。
〈スコーピオンソース〉は、サソリの針の形に由来するスコーピオンペパー、グァバやパイナップルなどのフルーツ、オリジナルの〈TABASCOソース〉少量を組み合わせ、刺激的な辛さとフルーティーな甘さの絶妙なバランスを実現した。バーベキューや手羽先、スープやエビ料理に合うという。
ところでこれだけ世界的に有名なソースだし、最新の近代的工場で極めて工業的に生産管理されているのだろう……と思いきや、1868年の誕生以来151年経った現在も、生誕地であるアメリカ・ルイジアナ州のエイブリー島のみで、ファミリー経営による生産が続けられている。日本でいう、味噌や醤油を代々作っているのと同じだ。創業以来、数代にわたり同社で働く従業員一家もいるという。結構な家内制手工業!?的な製造のようだ。
オリジナルの〈TABASCOソース〉の原材料は、唐辛子(タバスコペパー)、岩塩、ビネガー(穀物酢)の3つのみ。唐辛子の辛さを測るスコヴィル単位(SHU)で測定すると、生のタバスコペパーは5万SHUにもなる。まず、丸ごとすり潰したタバスコペパーをオーク樽に詰め、蓋をしてから岩塩をかぶせる。やがて発酵した液体が蓋の上に少しずつ染み出していき、塩が水分を吸って固まり、樽が密封される。そのまま約3年間熟成させた後、酢を加えて辛さを薄め、さらに1カ月ほど寝かせて完成する。
日本でよく使われる〈オリジナル〉は2500~5000SHUなのに対し、今回新発売の〈スコーピオンソース〉は2万3000~3万3000SHUと桁違い。約10倍の辛さだ。ちょっと工業製品としては信じがたいことだが、〈TABASCOソース〉の辛さにはかなりのバラツキ幅がある。だがしかし、この数値のブレはマキルヘニー社から公開されている公称値なのだから仕方ない。なので、やたら辛い〈TABASCOソース〉に当たったらきっとラッキーです。
〈スコーピオンソース〉は2017年に本国アメリカで数量限定で発売された時は、わずか数時間で初回出荷分が完売したほどの人気製品。試しにほんの1滴〈スコーピオンソース〉を舐めてみたところ、「ん? 言うほどそんなに辛くな……あっすみませんやっぱり辛い、辛い辛いよ!ごめんなさい!!」と何かに謝罪してしまうほどの刺激的な辛さ。しかもただ単に辛いだけではなく、後引く辛さだ。
ちなみに、日本における〈TABASCOソース〉の消費量は米国に次ぐ世界第2位なんだとか。それだけの量が使われているにも関わらず、用途はピザやパスタぐらいと意外に狭い。同社は「〈TABASCOソース〉の主な原料は唐辛子と食塩、ビネガー。これらは和食や中華料理にも使われていて親和性が高いので、さまざまな料理に応用できる」と、固定観念を持たず色々な料理に使ってほしいんだそう。
〈スコーピオンソース〉発表会の会場では、卵2個分の卵白に〈スコーピオンソース〉を1滴入れたメレンゲをチョコブラウニーケーキに添えたものを試食したところ、爽やかな辛味が甘味をより引き立て、飽きない味に仕上がっていたから驚きだ。そのほかにも、〈ガーリックソース〉を数滴入れた「とろろ昆布のお味噌汁」や、豚バラ肉を煮込む調味料に〈オリジナルソース〉を合わせた「豚の角煮」などが提供されたが、確かにおいしかった。特に味噌汁は、味噌の甘さの後に〈ガーリックソース〉の刺激的な辛さがピリリときいて印象的な味となっていた。
「TABASCO」と和食や中華のマリアージュ、意外にアリかも!?