クラウド型顧客管理・ポイントサービス「P+KACHI(ピーカチ)」を手掛けるピーカチ(東京・渋谷、船橋憲敏社長)と日本電気(NEC)は、顔をかざすだけでポイントを貯めたり利用したりできる〈顔パスポイントサービス〉の実証実験を東京と大阪の6店舗で始めた。顔認証によるハウス(自社)ポイントの顧客管理システムは国内初(ピーカチ調べ)となる。
「P+KACHI」は、スマートフォン用アプリと紙カードを併用できる使いやすさと会員情報をさまざまなマーケティングに役立てられる点を売りとしており、これまで1800社・5000店で導入され、会員数は1000万人となっている。そしてピーカチでは、以前からポイントシステムへの顔認証導入を検討しており、「顔パス」の商標もいち早く取得していた。
一方、NECが開発した、顔や虹彩、指紋・掌紋、指動脈、声、耳音響などによる生体認証ブランド「Bio-IDiom(バイオイディオム)」は、米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証ベンチマークテストで、これまでに1位を複数回獲得。世界トップクラスの技術として、空港や研究所などでで導入されている。今後、より身近なサービスとして一般の生活シーンにも広げたいと考えているNECが、飲食店への導入先として白羽の矢を立てたのがピーカチだった。
そして両社は、「バイオイディオム」の中核技術である顔認証を使い、ピーカチの「P+KACHIシステム」とNECの「Bio-IDiom Services ID連携」を組み合わせた〈顔パスポイントサービス〉を共同開発した。
ユーザーは、事前に会員サイトのプロフィールで自分の顔写真を登録しておけば、店頭に設置されたタブレットで顔認証することで、来店ポイントが付与されたりポイントを使用したりできるようになる。これにより、会計時にスマートフォンを取り出してアプリを起動させたり、財布からポイントカードを探して出すといったストレスがなくなり、スムーズな会計が可能となる。
認証の精度は99.9%以上を誇り、マスクやメガネ(色の濃いサングラスは除く)の着脱や化粧などには影響されず、加齢による顔の変化についても10年に1度更新すれば問題ないという。Wi-Fi環境が悪くなければ認証は一瞬で完了し、実際の運用時には、数時間~1日に1回のみ認証するといった設定ができる。また、顔写真を一度登録した後に別人の顔で再登録しようとすると、「登録できません」のメッセージが表示され、登録変更を受け付けない。
ピーカチ取締役副社長COOの西林厳史さんは「今回の実証実験で出てきた問題点を改善し機能を充実させてから導入店舗を拡大する。POSや決済との連携も考えており、セキュリティ面での課題はあるが、最終的には店舗スタッフが顧客データを参照して接客に活用できるようにしたい」と語った。
今回実証実験に参加したのは、東京では「鍋ぞう新宿三丁目店」「ババガンプシュリンプ東京店」「カプリチョーザオリナス錦糸町店」、大阪では「但馬屋千里店」「ババガンプシュリンプ大阪店」「カプリチョーザリンクスウメダ店」の計6店舗。
「鍋ぞう新宿三丁目店」の畑中勲支配人は、「事前準備としてタブレットを設置していたところ、常連さんから『これは何?』と聞かれ、説明すると興味を示す反応が多かった。これから実際に利用してもらうことで、便利さを感じてほしい」と語った。同店では、通常の来店ポイントに加えて、〈顔パス〉登録者には毎回50ポイントを付与するキャンペーンを実施し、登録者を増やす考えだ。