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阪大や伊藤ハム米久など5者が培養肉のコンソーシアム設立! 大阪万博で試食の提供目指す!!

2023年3月31日 2:05 pm

 培養肉の研究が世界中で進められている中、大阪大学大学院工学研究科(以下、大阪大学)と伊藤ハム米久ホールディングス(以下、伊藤ハム米久)、島津製作所、凸版印刷、コンサルティング会社のシグマクシスの5者は3月29日、培養肉の食用化を世界に先駆けて実現することを目指す「培養肉未来創造コンソーシアム」を設立した。

 培養肉はミンチ状や平面状の成功例は見られるものの、ブロック状の培養肉はハードルが高く実用化されていない。そこで大阪大学と凸版印刷らは医療用の技術を転用して、筋・脂肪・血管と異なる線維組織をそれぞれ3Dプリントで作製し、それらを束ねて統合することで肉の塊を作る3Dバイオプリント技術を開発した。

 同技術の最大の特徴は、束ねる際に筋繊維と脂肪の割合を調整できるので、霜降りや赤身など、肉質を自由に調整できる点だ。さらに、すでに調理した後の肉に近づけた培養肉ではなく、生肉に近い培養肉となるため、熟成させて旨みを増すことも期待できるという。また、元となる細胞については、伊藤ハム米久が優良な和牛の細胞を鮮度を保ったまま提供。国内外で評価の高い和牛の代替になることも目指す。また、培養肉自体は白色のため、バイオインクなどで肉の赤色を加え、見た目でも本物らしさくしていくという。これらの培養肉自体の技術開発と並行して、自動化や大量生産を視野に入れた機器の開発も同時に進める。

 目下のところ、2025年開催の大阪万博で「培養肉自動製造装置」を展示し、同意書への署名を条件に試食を提供することを目標に据える。同時に社会実装に向けたパートナーを幅広く募り、関係省庁に法整備を求め、消費者に不安を与えないための啓蒙活動を推進していく。

「培養肉未来創造コンソーシアム」設立記者会見でのテープカット

 設立者となる5者は以下のような役割を担う。

大阪大学=3Dバイオプリント技術の開発推進
島津製作所=3D バイオプリント技術の自動化、3D バイオプリント技術で製造された培養肉の食味や香りなどの分析・評価、培養に係る分析等の周辺技術開発推進、自動生産に適した培地の開発、組織化と成熟化、培養プロセスのモニタリングとフィードバック
伊藤ハム米久=良質な培養肉の基となる食肉細胞の提供、3D バイオプリント技術で製造された培養肉の喫食と官能評価、組織化と成熟化等の周辺技術開発の推進
凸版印刷=3D バイオプリント培養肉製造技術の筋および脂肪線維構造の最適化、細胞外マトリックス材料 (バイオインク・つなぎ材)の開発および1 次包装等に資する周辺技術開発推進
シグマクシス=周辺技術やノウハウを有する企業・団体間の連携、進捗管理などを行うプロジェクト・マネジメント・オフィス

 そして、コンソーシアムは3つのパートナーに分けて運営される。「R&Dパートナー」と「社会実装パートナー」については、多様な領域から協力者を募り、特に、外食企業や食品メーカーなどは「社会実装パートナー」としての協力を期待されている。

「運営パートナー」=上記5者が、コンソーシアムと共同研究所の運営、培養肉社会実装に向けた技術開発、省庁や関連団体との連携、対外情報発信を行う
「R&Dパートナー」=運営パートナーとの共同研究を通じて、培養肉社会実装に向けた要素技術の開発を行う
「社会実装パートナー」=情報共有、情報交換を通じて培養肉社会実装技術の開発動向や、市場動向に対する理解を深め、それらをベースにした情報発信を通じて培養肉の技術や製品の社会への普及の起点となる

 また、コンソーシアム設立と同時に、大阪大学と伊藤ハム米久、凸版印刷は大阪大学吹田キャンパス内に「培養肉社会実装共同研究講座」を開所し、すでに設立されている「大阪大学・島津分析イノベーション協働研究所」と共に研究推進拠点とする。

 現時点では、一部に医療・研究用の材料を使っていることから、これらを食品または食品添加物に切り替えることと、味や噛み応えなどの食感をより本物の肉に近づけることなどの課題が解決していない。また、法整備も急務になることから、培養肉の研究をしている他の企業や研究機関などとも協力して、早急な法制化を目指す。