新型コロナウイルスの第2波への不安が拭えない中、免疫力を高める料理や食材に注目が集まっている。また「コロナ太り」を解消しようと、ヘルシーな料理のニーズも高まっている。その両方の要求に応えるぴったりの料理がサラダだ。
そこで今回、東京栄養食糧専門学校と東京調理製菓専門学校を運営する食糧学院の副学院長の馬渕知子教授と、同学院のキャリア支援室課長で食育指導担当の沢辺利男講師に、テイクアウトなどにも応用でき、アルバイトでも簡単に作れる、簡便で作り置きできるサラダメニュー3品を提案してもらい、馬渕教授には【免疫力強化のポイント】を、沢辺講師には【調理のヒント】をそれぞれ聞いた。
免疫力を高めるサラダレシピを紹介する前に、馬渕知子教授に聞いた、免疫力を高める効果がある食材や、その基本的な働きなどについて簡単に紹介する。
「免疫には第1段階の粘膜免疫と第2段階の細胞性免疫があり、粘膜は、外敵の侵入口である呼吸器や消化器で体内に入るのを防ぐ働きがある。特に免疫グロブリンという抗体が、体内に入ってきた菌やウイルスと戦う。その免疫グロブリンの分泌をよくするのがβカロテン(ビタミンA)なので、にんじんやパプリカ、トマトなど赤やオレンジの色が濃い野菜を取ると粘膜が強化される」
「そして、粘膜で防ぎきれず通過した菌を防ぐのが細胞性免疫。ここに働くのがタンパク質なので、卵、チキン、豆腐などをたくさん取ることはとても効果がある」
「もう一つ、免疫に関係してくるのが腸内環境。そのためには、食物繊維をしっかり取ってほしい。日本人は、これだけ食べ物が溢れているのに、カルシウムと食物繊維は摂取基準に届いていない。生の葉物野菜よりも火を通した方が量をたくさん食べられる。これら三つを兼ね備えたサラダメニューは、免疫力強化に非常に効果があるメニューと言える」
「またビタミンには、水に溶ける水溶性と油に溶ける脂溶性の2種類がある。例えば、夏バテや動脈硬化の予防に役立ち、抗酸化作用が高いことで知られるビタミンCは水溶性なので、油には合わない。そのため火を通すときは、脂溶性ビタミンの中で抗酸化作用が強いビタミンEを多く含んでいるナッツやごまを使うと効果的だ。ちなみに脂溶性のビタミンはA・D・E・Kのみで、残りのビタミンはすべて水溶性となる。この2種類のビタミンの特性を知って、上手にバランスよく取ることが、免疫力強化に役立つ」
●豆腐サラダ(温製)●
【調理のヒント】
豆腐はそのまま生で使ってもよいが、少しだけ塩を入れた出汁で温めるだけで、食感も味も変わる。また、多少乱暴に扱っても型崩れしなくなるので、使いやすくなる。小松菜は、ほうれん草などほかの青葉で代用しても構わない。
既製品のドレッシングを使っている店も多いだろうが、今回はごま油と塩と赤ワイン酢を混ぜて作ってみた。赤ワイン酢の代わりにバルサミコ酢を使ってもいい味になる。ただその場合は、塩を少し減らした方が味は整う。また、このドレッシングに温めた豆腐をしばらく漬け込ませると、豆腐に味が染み込んで、さらに味わいが深くなる。
ごま油は最後の香りづけにかけ、ナッツを振りかけた。また、夏には針しょうがを添えると体にもいいし、ミニトマトやスプラウトなど、店にあるもので飾って彩りを足してほしい。
ちなみに、ドレッシングを作る時は、生の油を食することになるため、オリーブオイルや米油、ごま油など単一品種の油のみを使い、複数の油を混ぜた調合油は使わない。油32g・酢8gは、私が作る際の基本的な割合。ドレッシングは基本、酢と油と塩しか使わないので腐ることがない。店独自のドレッシング作りに挑戦するのもいいかもしれない。
【免疫力強化のポイント】
パプリカや小松菜など脂溶性ビタミンが多い野菜は、ベーコンと一緒に使ったり、油で炒めたりすると吸収が良くなる。野菜だけだとタンパク質がとれないため、豆腐を加えることで細胞性免疫に働きかけ、内側から免疫力の働きを高めるので、素晴らしい組み合わせ。
また、しょうがは殺菌効果が高いため、感染症予防にはとても良い食材。特に冷房で冷えた体を温められるため、夏のサラダに加えるのは、女性にも喜ばれるだろう。