特集 開発秘話

きっかけはパパ友のある一言だった―計画5年、試験醸造350回以上の末に誕生した〈キリン一番搾り糖質ゼロ〉とはどんなビールか?

2020年8月29日 8:44 am

 キリンビールは、ビールカテゴリーとしては国内で初の糖質ゼロとなる、〈キリン一番搾り 糖質ゼロ〉を2020年10月6日に市販用として発売する。

 「これは市販用の話だから、業務用には関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれない。だが、05年4月に発売された新ジャンルカテゴリー〈キリンのどごし<生>〉は、12年12月までの累計販売本数が120億本(350mL缶換算)を突破するヒット商品になった結果、業務用の〈キリンのどごし<生>大樽15L〉が誕生したのだ。〈キリン一番搾り 糖質ゼロ〉も、時期は未定だが業務用での販売も視野にいれているという。

業務用キリン樽詰ラインナップ
https://www.kirin.co.jp/products/beer/taruzumenama/ryointen/linup_i.html

キリンホールディングス飲料未来研究所の廣政あい子さん

 開発のきっかけは、キリンホールディングス飲料未来研究所の廣政あい子さんが、育児休業中にママ友・パパ友とお花見をしている時、パパ友が言った「ビールが好きなんだけど、体型も気になるから、ビールは最初の一杯だけ」という言葉だったという。

 その言葉を聞いた廣政さんは、「ビール好きな人がもっと気兼ねなく飲めるおいしいビールをつくりたい」と考えるようになった。育児休業が明けるとすぐに、「ビールの原材料だけで、糖質を限りなくゼロにする技術開発に取り組みたい」と社内プレゼンを実施。プロジェクトがスタートしたのは、2015年の春だった。

 過去にも例がない「ビールで糖質ゼロ」を目指したこの取り組みは、社内でも極秘プロジェクトとして扱われた。キリンビールの培ってきた技術を用いて、いかに糖質をゼロに近づけ、かつビールならではのおいしさを最大限引き出すか。

 まず最初に、糖質低減に適した麦芽を選定。同社独自の仕込技術を進化させ、これまで以上に効率的に糖質(でんぷん)をバラバラにする。次に、通常のビールに使用する酵母よりもより糖質を分解する、元気な酵母を使用して発酵させる。この過程で、酵母が糖質を食べきることにより、麦汁中の糖質ゼロが達成できた。

キリンビールの資料から引用

 麦汁ろ過工程においては、最初に流れ出る一番搾りの麦汁のみを使う製法「一番搾り製法」により、「一番搾り」ブランドに共通する、雑味のない澄んだ麦のうまみが感じられるおいしさが実現できた。

 こうしてプロジェクト発足から5年、350回以上に及ぶ試験醸造の結果、〈キリン一番搾り 糖質ゼロ〉が誕生した。アルコール度数は通常より1%少ない4%。飲んでみると、スッキリと飲みやすいながらも麦のうまみがしっかり残る、味わいのあるビールに仕上がっている。

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