がんばろう外食!(支援等)特集

「休業命令は1回で済む?」~「過料」について知っておくべき基本的なこと~

2021年6月1日 9:05 am

 「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」が再延長されたものの、今回は要請に応じず営業を再開する飲食店が増えそうだ。政府もそのような動きを察知してか、過料を科すための「命令」を適切に運用して公平性を保つよう都道府県に求めた。

 では「命令」に背いた場合、どのような流れとなるのか。また、何度も「過料」を科せられるのか。各自治体や裁判所により対応に多少の違いはあるかもしれないが、基本的な部分は変わらない。大阪府と東京都に質問した回答を元に紹介するが、まずはその前に「過料」について知っておこう。

 金銭を支払う罰則には主に「罰金」「科料」「過料」「反則金」があり、同じ読み方の「かりょう(科料)」は刑事罰、「過料」は行政罰となる。

 「罰金」と「科料」は【財産刑】といわれる【刑罰】で、裁判所が有罪と判決した際には強制的に徴収する刑罰である。罰金は1万円以上、科料は1000円以上1万円未満と、金額によって呼び方が変わる。また、有罪としての刑罰なので「前科1犯」になってしまう

 一方、「過料」は「行政上の処分」として反則金を納付するものなので、前科は付かない。そのため、営業許可の更新などにも影響はしない。ただし、いつまでも納めないと刑事罰の対象になることがある。また、弁明する機会が与えられるため、弁明の状況によっては「過料」を支払わなくてもよくなる場合もある。言うまでもないが、これらは法的な話なので、どの自治体でも共通だ。

 では、自治体が飲食店に時短営業または休業の「命令」を出しても酒類の提供や深夜営業などを続けた場合、どういう動きになるか。

 自治体は飲食店に対して「過料」を科す手続きを裁判所に通知する。通知を受けた裁判所は、検察官の意見を求めるなどした上で判断。過料を科す場合には、緊急事態措置区域で30万円以下、重点措置区域で20万円以下の過料についての決定書を、裁判所が当事者に送付する。自治体の手続き通知から当事者に決定書が届くまでの期間については、裁判所次第だという。

 ちなみに、裁判所に通知して以降の動きについて、自治体は一切関知しない。そのため、いくらの「過料」がいつ送付されたかなどを、自治体では全く把握できないことになっている。

 東京都も大阪府も、「命令」を出したにもかかわらず応じないすべての飲食店に対して「過料」の手続きを進める方針だ。

 ただ、「命令」を出す回数については、大阪府と東京都で異なる対応となる。

 大阪府は、命令書に要請期間の月日を記入しているため、要請期間中に1度という仕組みになっている。そのため、期間が延長された場合や要請内容に変更があった場合は、その度に再度「命令」できる

 つまり、現状で「命令」に応じなかった場合は6月20日までに1度過料を科せられる。そして、21日以降、再度延長された場合は、21日以降に同じ飲食店に再度「命令」でき、応じない店舗には2度目の「過料」を科すことができることになる。

 一方、東京都は命令書の要請期間が「緊急事態宣言が終了するまで」との記載になっているため、延長期間も含めて1回となる。つまり、21日以降さらに延長となっても再度「命令」を受けることはない。

 ただし、東京も大阪も「緊急事態」から「まん延防止」に変わった場合は、再度「命令」でき、「過料」の金額も変わる。

 ちなみに、東京都が「命令」を出す店舗の基準は以下の2つだそうだ。
・営業することで、人の流れを増やしている。
・ほかの経営者に影響を与え、営業することを誘発している。

 具体的にはホームページやSNSなどで営業していることを広く発信している場合や、繁華街でネオンを付け、離れたところからも営業していることが分かる場合などが該当するという。

 言い方を変えれば、現時点では、やむにやまれず広く宣伝することもなく、常連客向けにひっそりと営業しているような店舗などには、「命令」を出すことまではしないようだ。