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【緊急提言】飲食労務のスペシャリストが警鐘

2020年4月9日 11:42 am

戦略を持って休業を
集約営業も目的重要

 現状と目的に合った選択・判断をする必要があるわけで、例えばキャッシュフローが3カ月を切っているのなら、助成金を当てにした資金計画を立てることは間違いなく危険だ。あくまで、後々、補完してくれるのが助成金で、そもそも「ありき」で当てにする類いのものではない。

 全店舗を閉めるのではなく、少しでもキャッシュが欲しい場合、「集約営業」というのも、一つの考え方だ。それにより、垂れ流す赤字が減るのであれば実施することも選択肢になるが、その時の注意点は「閉める店と開ける店」という考え方ではなく、「会社全体でどう考えるか」が重要となる。集約営業をする場合、社員の公休を増やしながら回すことだ。

 例えば、通常月に8日の公休に対し、2~4日公休を増やしてワークシェアする。公休を増やせば助成金の対象にもなるからだ。その時に注意しなければならないのは「全休するスタッフを作らず、全員でバランスを取りながら公休を取らせることが重要

 なぜならば、休んでいても休業補償で給与が払われるとなれば不公平が生まれ、チームが壊れてしまう」からだと、黒部さんは指摘する。

 単に「集約営業」を勧めているわけではなく、やるのであれば、「目的を持った集約営業」が重要だということだ。コロナ明けの通常営業に戻ったときに、壊れたチームでは戦えない。「助成金に安易に手を出すとチーム崩壊に繋がりかねないケースもある」と黒部さんはこう続ける。

 「例えば、『小学校休校等対応助成金』は、雇用主である事業者が申請する。小学生の子供を持つパートさんが9割を占めているのなら話は別だが、働いていない人に補償し、一方でシフトを削られて生活が苦しくなる人が出てくる。この不公平感に対する説明がキチンと付けられなければ、せっかく作ってきたチームそのものが崩壊しかねない。特に女性の不公平感や嫉妬は一瞬でチームを壊す。しかも、補償分は会社が一旦、立て替えておく負担も生じる。経営者がどう判断するかによるが、『ノーワーク・ノーペイ』の原則に従って、『小学校休校等対応助成金』の申請をお願いされても、断ることができることを覚えておいて欲しい」

 つまり、ある種の助成金に手を出すことで、子育てしている人は優遇されるがその他の人は補償がないという「誰かが得して誰かが損した状態」ができると、チーム崩壊に繋がりかねないということだ。
 前述した休業補償に話を戻すと、いきなり60%にするのではなく、どこまで長期化するのかといった判断の下、段階的に減らしていくなど、自社の会社の状況に合わせた設計をする必要もある。どの会社にも当てはまる一律の答えなどない、ということだ。それもこれも「雇用を守る=会社を存続させる」という大前提があっての話だ。