テイクアウト/デリバリーインタビュー読むと得する

料理への評価など活用できるデータも得られる〈UberEATS〉【Uber Japan執行役員社長・髙橋正巳氏インタビュー】

2017年10月11日 10:39 am

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「レストランパートナー」にとって ウーバーイーツを活用する最大のメリットは 新しい顧客へのアプローチが可能になること。

スマートフォンの無料アプリから、自由に多彩な料理を注文可能。手軽で、おしゃれ、しかも楽しめるスタイルがウケて、米国サンフランシスコ発の料理デリバリーサービス〈UberEATS(ウーバーイーツ)〉が日本でも急成長中だ。2016年9月に東京でサービスを開始したばかりだが、17年7月には、サービスを活用する「レストランパートナー」の数が5倍を超える800軒以上に急増。11月現在は1000店舗を超えている。11月1日にはサービスエリアも横浜まで広がった。マクドナルドやスシローが「レストランパートナー」になるなど、大手の外食企業の間でも存在感を高めている。どんな使い勝手のサービスで、外食店舗にはどんなメリットがあるのか。サービスを運営するUber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏に聞いた。

〈UberEATS(ウーバーイーツ)〉(以下、〈UberEATS〉)の仕組みとは

Uber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏

髙橋 〈UberEATS〉は、シェアリングエコノミー(モノ・場所・サービスなどをインターネットを通じて個人間で自由に共有・交換して利用し合う仕組み)の概念に基づいたサービスだ。〈UberEATS〉のアプリを使うのは「ユーザー」「レストランパートナー」「配達パートナー」の3者で、〈UberEATS〉は、自社が構築・運営するシステムのプラットフォーム上で、3者をオンデマンドでマッチングしている。

 このマッチングの仕組みを通じて、「ユーザー」は自分の好きな時間に好みの料理を選んで注文し、料理を指定した場所に配達してもらうことができる。「レストランパートナー」は専門の料理、「配達パートナー」は配達のための労働力という、それぞれの持つ資産を最大限、有効に活用できる。

 「レストランパートナー」は、車両や配達人員を確保することなく、少ない初期投資で料理のデリバリー業務を開始できるメリットがある。実際、サービスを開始した当初、東京では、「レストランパートナー」の60%以上が、以前はデリバリーのサービスを実施したことがないお店だった。〈UberEATS〉とパートナーシップを組むことで、事前に多額な投資なしに、サービスを始めることができる。

 また「配達パートナー」は自転車やバイクなどの車両を用意して「配達パートナー」登録をし、空いている時間を自由に活用して配達業務を行うことで、収入を得られる。アプリ上でオンラインモードにすれば配達業務を開始できるし、オフラインモードにすれば業務を終了できるため、自分の時間を自由に、柔軟に使って、都合の良いときに働ける。

3者がそれぞれ自由にサービスを利用し、それぞれのメリットを得て、高い満足を感じるためには、需要と供給が、高い確率でマッチングできる必要があると思うが

髙橋 需要と供給をいかにマッチングさせ、3者の満足度をいかに高めるかは、当社が開発したシステムの中で、技術的に中核となる部分だ。マッチングの確率を上げるために、システムを使って、過去のデータに基づいた細かい需要予測をしている。予測の結果、例えば、この曜日のこの時間帯にはもう少し「配達パートナー」の数が必要だと判断すれば、「配達パートナー」にメッセージを送って、できればこの時間帯に(アプリを立ち上げて)オンラインにしてくださいというお願いもする。

 また、「ユーザー」のアプリ上に表示される「レストランパートナー」は、「ユーザー」が配達先として指定した地域や、希望の配達時間に対応できるお店だけだ。対応できる店の基準は、温かい料理が温かいまま、冷たい料理が冷たいまま届けられること。そのために、営業時間や道の混雑状況などさまざまな要素を考慮し、独自のテクノロジーを駆使することで、「ユーザー」と「配達パートナー」「レストランパートナー」をマッチングしている。

〈UberEATS〉の提供する配達サービスの他社と違う強みについて、具体的に知りたい。「ユーザー」に対するサービスの強みとは?

髙橋 「ユーザー」は無料のアプリをスマートフォン(iPhone、アンドロイド)にダウンロードし、氏名、メールアドレス、携帯電話番号、支払い方法としてクレジットカード番号(PAYPAL、デビットカードも可)を登録することで、サービスを利用できるようになる。正式に「ユーザー」となって、アプリを立ち上げると、「ユーザー」個人のためにパーソナライズされた画面が見られる。

 お気に入りのレストランの希望を出したり、料理の種類や値段、配達に要する時間などからレストランを検索、表示してチェックしたり、実際に何度か注文をすれば、ウーバーイーツのシステムは、そうした「ユーザー」の挙動パターンを過去の事例等とつきあわせながら分析し、画面をパーソナライズしていく。このため「ユーザー」がアプリを使えば使うほど、アプリは使いやすくなっていく。

本格的なお弁当もデリバリー可能(イタリア料理の「Dal Matto」の例)

 〈UberEATS〉の技術は、サービスのスピードやロジスティクスと並んで、ユーザーエクスペリエンス(使い心地の良さ)も重視している。注文した料理が速く、確実に届くばかりではなく、アプリで料理を選んだり、料理が届くのを待つ時間も楽しめるようになっている。

 料理を選ぶ際には、上記のようにさまざまな基準でレストランを選び、料理やドリンク、デザートなどを画面に表示して楽しく選択できる。また料理を待つ間は、料理の準備状況や配送状況、到着予定時刻をアプリ上でリアルタイムに確認できるし、「配達パートナー」の顔写真と位置も地図上に表示される。さらに、料理が届き、食べた後は、料理に対する満足度や「配達パートナー」への満足度も、アプリから〈UberEATS〉へ評価やコメントでフィードバックできる。

アプリからレストラン、メニューを選び注文する

 非常に細かい場所の指定も可能だ。部屋に届けるばかりではなく、例えばマンションの1階の指定の場所に料理を届けてもらい、「ユーザー」がそこまで取りに行くといったこともコメント欄から詳細を指定するだけで可能だ。

 さらに、「ユーザー」が週末に子供と公園で遊ぶ予定がある場合は、「ユーザー」がいる公園の入口まで料理を届けることもできる。また、最低注文金額を設けていないので、「ユーザー」はたとえコーヒー1杯でも、数百円の料理1品でも、気兼ねなく配達を依頼できる。注文金額の大小に関わらず、1注文当たりの配送手数料は一律380円(税込)だ。このため、1人暮らしの「ユーザー」でも、気軽にサービスを利用できる。

「レストランパートナー」はデリバリーに出す料理のアイテムやデリバリーに対応する時間帯などを、自由にコントロールできるのか。

髙橋 「レストランパートナー」は料理が売り切れたり、お店が忙しくて配達注文に対応できない場合などは、「レストランマネージャー」というアプリを使って、一定のメニューの注文を受けないように「売り切れ」として設定したり、〈UberEATS〉での対応自体を「オフ」に切り替えるなどして、柔軟に対応をコントロールできる。一番のメリットは、デリバリーのサービスによって、これまで接したことがなかった新しい顧客へのアプローチが可能になることだ。レストランによっては、〈UberEATS〉限定のメニューを提供するなどの工夫もしている。

「レストランパートナー」がウーバーイーツに支払う手数料は? また、デリバリーした料理の料金が「レストランパートナー」に支払われるのは、決済から何日後?

髙橋 「レストランパートナー」との契約の内容については公開していないが、〈UberEATS〉と契約した「レストランパートナー」のメリットについて少し付け加えておきたい。従来、レストランの側からは、来店されたお客様から、料理への好き嫌いや評価を聞くのは難しかった。

 〈UberEATS〉のアプリには、「ユーザー」からの料理への評価などのフィードバックが多数、寄せられる。「レストランパートナー」は「レストランマネージャー」というアプリ上で、そのフィードバックを日々にチェックし、顧客の料理への好き嫌いや評価を定量化して理解できる。さらに、東京ではまだその段階ではないが、将来的には、〈UberEATS〉のシステムが各種データを分析し、「レストランパートナー」向けに、どの料理を、どのエリアで、どの時間帯に提供すべきかといったアドバイスもできるようになる。米国などでは、〈UberEATS〉のアドバイスによって、デリバリーするメニューの幅を広げ、成功を手にしているレストランの例もある。

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