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訪日外国人の次はペット対応の”ワンバウンド”!? 同伴可にすることで客数・客単価アップも

2022年8月12日 10:47 am

 コロナ禍による行動制限やインバウンドの消失により売上が大幅に減っている飲食店にとって、新たな収益源を得ることは早急の課題となっている。そんな中、テイクアウト・デリバリー、ECなどと比べると特に注目されているとは言えないものの、実は大きな売上増につながる可能性を秘めている取り組みがある。それがペットと飼い主が一緒に利用できる店にする”ワンバウンド”対応だ。

 一般社団法人ペットフード協会が実施した調査によると、現在、単純計算で約10世帯に1世帯が犬を飼育しているという。また、ペット用品市場もコロナ前から右肩上がりが続いており、ペットと一緒に行きたい場所ランキングでは、ホテルが1位で2位が飲食店という結果も出ている。つまり、潜在需要は非常に大きいにも関わらず、ペットを同伴できる飲食店はまだまだ少ないというのが現状なのだ。 そこで、飲食店の経営支援サービスを提供するぐるなびは、衛生用品メーカーのユニ・チャームが推進しているペットと飼い主が一緒にでかけられる場所や時間を増やしていく取り組み「GO WITH わんこ プロジェクト 」に協働し、飲食店がペット同伴を受け入れらえるようにするための環境づくりを支援することとした。ちなみに「ワンバウンド」とは、ぐるなびが「インバウンド」と「わんこ」とを掛け合わせて作った造語だ。

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◆ペット同伴可能な店への再来店率は6割超◆

 では、実際に店舗をペット同伴可能にすることで期待できる効果や注意点などについて、ぐるなびが7月28日、すでにペット同伴を可能にしている飲食店や興味のある飲食店向けに都内で開催したセミナーで紹介された内容から見てみよう。

 

 ぐるなびが6月に実施した調査結果によると、「気になる店がペット同伴可だった場合、お店に行きたい気持ちは変化するか」の問いに「行きたい気持ちが高まる」が39.1%という結果になった。そして「ペットと飲食店で食事をする事で特別感(非日常感)を感じるか」では、「特別感を感じる」と「やや感じる」を合わせると80%を占めたことから、新規客の来店動議に大きく寄与する可能性を秘めていることがわかる。 続いて、「過去に訪れたペット同伴可能な店を再来店したことはあるか」では、63.2%が「ある」と答えた。「普段行く店がペット同伴可能になった場合、来店頻度は今よりも上がるか」では「上がる」と「やや上がる」を合わせると34.5%という結果になり、「普段良く来店しているペット同伴不可の飲食店がないのでわからない」(13.3%)も含めると約半数となる。これは、すでにリピートしているお客さんが多く、新たにペットを同伴できる店を見つけた際にもリピートにつながりやすいことを期待できる数字となっている。 しかし、実際に「ペット同伴可能な飲食店に同伴させたことがあるか」では「行ったことはない」が71%を占めた。その理由について2位の「ペットと一緒に飲食店に行く文化がない」と3位の「近くにペット同伴可能な飲食店がない」を合わせると63.2%となる。この結果から分かることは、ペットを飼っている人が多い地域でペットと一緒に食事する楽しさを提供し、同伴する文化を広めることができれば、新たなお客さんを一気に獲得できるブルーオーシャンであるということだ。

◆来店条件示しトラブル回避を◆

 では、具体的にペット同伴を可能にしようとした場合、どういう店づくりやPRをして行けばいいのだろうか。

 

 まず「ペットと同伴する時間帯」では「ランチタイム」が64.7%と圧倒的に多く、次いで「カフェタイム」の46.0%となった。これは通常営業時のアイドルタイムとなる時間帯で集客を増やせる可能性が高いということだ。

 「ペット同伴可能な飲食店の探し方」では「検索サイト」と「店のホームページ」が44.4%と同率となり、「飲食店検索サイト」、「家族や知人からの情報」と続いた。ペット同伴可能にしても、それを周知できなければ意味がないため、ネットでの情報発信は欠かせない。 続いて、半数以上を占めた「ペットメニュー」を注文したことがある人に単価を聞いたところ「1500円未満」が33.3%と最も多く、次いで「1000円未満」、「2000円未満」と続いた。これは、ランチやカフェの時間帯に新たな胃袋を獲得できるということで、「3000円以上」も5.9%あることから、単価アップも期待できそうだ。

 これまでのアンケート結果を見ると、ペットを同伴可能にできる状況にある飲食店にとっては、大きな売上増につながる可能性が大きい。ただ、そうはいっても、生きている動物が相手なので、トラブルなどの不安も大きい。

 セミナーで講師を務めた、ぐるなび大学の小崎俊幸さんは、飲食店がペットを受け入れる際に最も大事なことは「来店条件を明示すること」だと指摘する。具体的には以下のような条件を明示しておくことで、トラブルを減らせるという。

・受け入れ対応可能なペットの種類
□小型犬 □中型犬 □大型犬 □猫 □その他小動物
・ペット同伴可能な席
□店内可(小型~中型犬のみ) □テラス(大型犬含む全犬種可) など
・入店の条件
□トイレのしつけ □キャリーバックに入っていれば可 □無駄吠えしない など
・持参いただくもの
□カラー(首輪) □リード □トイレシーツ □おやつ □ケージ など

◆ペット用の食器は高さのあるものが好まれる◆

 また、「当然ながら、店内のお客さんの大半はペット同伴ではない。そこで、双方が気兼ねなく過ごせるよう、ペットが苦手な人やアレルギーのある人のために、ペット同伴席と一般席を分けたりペット専用の椅子を用意したりすることも大きなポイントになる」(小崎さん)という。テラス席があればテラスのみ同伴可にしたり、厨房から遠く入り口に近い席のみを同伴可の席にするといったことも有効だ。ある店舗では、入り口近くの席を同伴可にしたところ、その席はウェイティングが出るほどの人気席になっているという。

 ほかにも、店頭の立て看板やメニューブックの目立つところにペット同伴可能であることをアピールすることで認知度が高まり、店頭のボードに「わんちゃん予約」が入っている時間を表示すれば、PRになるとともに犬が苦手な人はその時間を避けられるのでトラブル防止にも役立つ。 実際にペット同伴を受け入れる際には、清掃やにおい対策も重要となる。アンケートでも、ペット同伴可能な飲食店の懸念材料としては「衛生面」が7割を超え、2位の「匂い」についても半数を超えている。

 そこで、コロナ対策と同様にテーブルや椅子、メニュー表などを消毒し、通常のバッシングに加えて床やテーブル席を粘着テープで清掃すると抜け毛の料理混入防止に役立つ。また、粗相をした時のために、一気に水気を吸収するシーツやペットが舐めても安心な消臭剤、マナーウェア(おむつ)のストックなどを用意すると安心だという。

ぐるなびが開催したセミナーでは、マナーウェアの付け方なども体験した

 ペットを受け入れる次の段階として、店にある食材を使って簡単にできるペット用メニューを提供できれば、売上アップを期待できる。特にケーキなどを用意しておけば、誕生日などのお祝いの席で利用され、価格を高くしても需要を見込めるかもしれない。

セミナーで紹介された、オートミールやイチゴを使った〈豆腐のミニショートケーキ〉

 ただし、犬には下記の表のように食べてはいけない食材もあるため注意が必要だ。そして、この表でオススメとなっていてもアレルギーなどの個体差があるため、「メニューに原材料や量を明記し、飼い主に判断してもらう」ことで、お互いに安心感を得られる。

 ペット用メニューを用意する際には、専用食器についても意識しておくと評価が高くなりやすい。「いぬのきもちWEB MAGAZINE」によると、以下の点に注意すると効果的だという。

 

ペット用食器の選び方
(1)
 高さのある食器や食器台を使うと、わんちゃんも食べやすくなり、身体(特に首)に負担がかからないメリットがある。特にシニア犬などは、普段から体高に合った食べやすい高さの食器や食器台を使っている家庭が多いため、お店からの配慮として喜ばれる。
 またごはんの飛び散りを軽減でき清潔なのと、食べるときにわんちゃんの顔が器に沈み込みにくくなるので、飼い主さんからするとかわいい愛犬の写真が撮りやすくなる。
(2)
 犬の食器は金属や陶器、プラスチックなどさまざまな種類があり、どの食器であっても古くなると傷ができ汚れがたまり不衛生になるので、人用と同じように傷がついているものは新調する必要がある。
 また飼い主さんの間で「ペット用も陶器の器だった!」などと喜ばれることも多く、お店のペットフレンドリー度を示す重要なアイテムになる。

ペット用食器の洗い方
 犬の食器はヌルヌルしやすく、洗剤をつけたスポンジで洗ってもヌメリが残ることがある。ここで効果的なものがクエン酸。犬の唾液はアルカリ性なので、汚れの性質と逆の性質を持つ酸性のクエン酸を使用すると効果的に汚れやヌメリが取れる。ただし、犬の口にクエン酸は入れないこと。クエン酸がない場合は、同じ酸性のお酢でも効果が期待できる。

 ぐるなびでは、今回のプロジェクトに参加する飲食店に対して、「GO WITH わんこステッカー」やマナーウェアのサンプル、参加マニュアルを配布し、9月15日から特設サイト「GO WITH わんこ応援サイト」(https://jp.unicharmpet.com/ja/manner-wear/gowithwanco/home.html)内に犬同伴可能な飲食店として紹介する予定だ。同社では、飲食店にとっても利用者にとってもプラスになる取り組みとして、今後もペット同伴可能な店を広げる取り組みを進めるとしている。