ロボット設備機器ピックアップ開発秘話店舗のアレ読むと得する

AI搭載ロボットがたこ焼きを作る時代に?!~AIは人手不足の救世主になるのか~【コネクテッドロボティクス】

2019年2月26日 12:54 pm

約2年で投資額回収できるよう月額20万円でレンタル

 現在、たこ焼きだけでなく、焼き鳥や焼きそば、お好み焼きなどの鉄板料理や、カレーやスープ類も調理できるように研究を進めている。

 沢登さんは「焼く・揚げる・煮るの調理は、調理現場での負担が大きく、焼き具合、煮込み具合など判断力も必要となるため、教育にも時間がかかる。こういう分野はロボットアームで代行することに適している。温度センサーやサーモグラフィーなども装備すれば、ステーキのレア、ミディアムなどの焼き具合をAIで判断して焼き分けられる」と話す。

 実際の販売方法としては飲食店が導入しやすいように、開発したソフトウェアを代理店に販売し、代理店はそのソフトウェアを組み込んだロボットアームを飲食店にリースまたはレンタルする仕組みを考えている。 サンプル価格として、初期費用250万円、月額20万円を想定。これは1人分の人件費と同程度としたもので、ほぼ2年で投資額を回収するモデルだ。 上の表はロボットアームの導入費と1人分の人件費を比較したもの。1年目は導入月分が無料となるため、250万円+220万円で470万円となり、その後は毎年240万円の支出となる。一方右側の人を雇った場合は、採用費込みで初年は350万円と想定し、その後、年2%上昇した場合を試算した。

 当然、ロボットの場合は教育のための費用や期間、昇給や休暇は必要ない。 月額料金には最新状態へのアップデートや、メンテンナンス費用も含むため、追加費用はかからない。ただ、たこ焼き用ロボットアームに焼き鳥調理の機能を追加したり、10種類のメニューを50種類に増やすなど、大幅にアップグレードする場合は、別途費用が発生する。ロボットアーム自体は、さまざまな工場などですでに使われている産業用ロボットのため耐久性が高く、24時間365日稼働しても5年間は故障しないという。 沢登さんは「故障のリスクは低く、ドタキャンなどの心配もない。人手不足が深刻化して、今後、人件費が右肩上がりとなる外食業界でのメリットは大きい」と話す。

 ロボットアームのデータはすべてクラウド上に集められ、その内容を基にAIが学習したデータを再びロボットアームに送ることから、日に日に精度が向上し、より綺麗にピックを使ったり、なめらかに早く動かすなどの新しいスキルも追加されていく。沢登さんが言う。

 「オクトシェフの場合、最初は96個のたこ焼きを一気に調理していたものの、お客さんがロボットが調理する姿を見られないことを残念がっていることがわかった。そこで、24個や12個ずつとして調理しているところを見せるようにした。このような個数の変更はクラウド上の設定だけでできるため、現場の手を煩わせることもない」 そのため、時間帯による個数の調整もでき、それらのデータが蓄積されれば、店舗側に翌日の仕入れ量を予測したアドバイスもできると期待を寄せる。 すでに大手外食企業の工場でたこ焼きロボットを導入することが決まっており、それが完了次第、店舗での展開も始める。そのため今春には東京でもたこ焼きロボットの店舗が見られる予定だ。

 また、厨房機器メーカーとの共同開発やパートナーシップ関係も進んでおり、同社のAIを搭載した厨房機器が、日の目を見る日も近そうだ。 調理用以外でも、お客さんが返却口に置いた丼やコップなどの食器やトレーを、ロボットアームが食洗器に入れて、洗い終わった食器をもう一つのロボットアームがケースに詰めるという仕組みも出来上がっており、今春には大手飲食店で導入することが決まっている。

 ロボットを導入する際の注意点と今後の未来像について沢登さんは「AIロボットを導入する前に、まずオペレーションを見直し、ゼロから作り上げるくらいしないとうまく機能しないかもしれない。また、自動販売機のような店舗になっても魅力がなくなる。接客など人が担う仕事の意味をより深く考えなくてはいけなくなるだろう。働き方についても、忙しい時間のみ従業員がいて、アイドルタイムはロボットのみにするなど、働く時間が細切れになるかもしれない」と話した。 ロボットを従業員として当たり前のように受け入れる時代はもう、すぐそこまで来ているのかもしれない。

日本外食新聞1月1日号掲載