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ロスビール活用したクラフトジン発売で蒸留酒製造に参入【FarYeastBrewing】

2021年10月25日 8:56 am

 コロナ禍による時短営業や休業により業務用ビールが余る事態となり、ブリュワリーにとっては深刻な事態となった。そこで、賞味期限のあるロス(廃棄)ビールを賞味期限がない蒸留酒にすることで環境負荷を削減するとともに、日本発のオリジナル蒸留酒を展開しようという企業が現れた。

 〈Far Yeast〉や〈馨和 KAGUA〉などのオリジナルクラフトビールを製造・販売するFar Yeast Brewing(山梨・小菅村、山田司朗社長)は10月29日、コロナ禍により発生したロスビールを再活用したクラフトジン〈BeerDistilledGin-NewPot(ビアディスティルドジン・ニューポット)〉(希望小売価格:500ml・5434円、限定45本)と〈MaltGin-NewPotBlended(モルトジン・ニューポットブレンディッド)〉(希望小売価格:500ml・4994円、限定370本)の2商品を限定発売する。

 今回、蒸留酒製造に新たに参入するにあたり新ブランド「OffTrail-Azeotrope(オフトレイル アゼオトロープ)」を立ち上げた。「OffTrail」は「舗装されていない道」、「Azeotrope」は「共沸混合物」の意で、新しい風を送り込むとの想いを込めた。

△アドバイザーを務めた「BAROSSA cocktailier」(岐阜)のオーナーバーテンダー・中垣繁幸氏

 ロスビールを活用することから、ビールと同じ麦(モルト)由来の蒸留酒にすることでビールと蒸留酒のクロスオーバーを実現するというコンセプトを設定。初めての挑戦となることから、国内外のコンテストで多くの受賞歴を持つ「BAROSSA cocktailier」(岐阜)のオーナーバーテンダーである中垣繁幸氏をアドバイザーに招いた。

△ポルトガル製「ポットスチル(単式蒸留器)」

 製造に関しては、これまで同社がビール醸造で培った発酵やバレルエイジ(木樽熟成)の知見を活かし、原材料のフレーバーを残しながら蒸留できるポルトガル製「ポットスチル(単式蒸留器)」を輸入。現在、日本で人気のロンドンドライジンとは一線を画した製品とした。

 香りにもこだわり、ホップやコリアンダーなどビールの原料をボタニカルに使用。こちらもビール製造で培った香気成分抽出技術によりウッディーで清涼感のある新しい味わいのスタイルに挑戦した。

 〈ビアディスティルドジン〉はロスビールを活用し、原酒ビールのモルトやホップのフレーバーを引き継ぎつつ、ボタニカルとして加えたジュニパーベリーとゆずの清涼感あるアロマが重なる、上質なフレグランスのような香り高いクラフトジンとなっている。

 〈モルトジン〉は、蒸留酒用に特別醸造したモルト原酒を自社のポットスチルで2回蒸留したベースジンと、山椒とゆずを使った同社のビール〈馨和KAGUA〉を蒸留したスピリッツをブレンド。ボタニカルにはジュニパーベリー、コリアンダー、ネルソンソーヴィンホップ、ゆずをふんだんに使い、モルトとボタニカルのフレーバーが最適なバランスとなるブレンド比率を見つけて仕上げた。

 山田司朗社長は「モルトフレーバーを活かしたことで、普段ジンを飲まないビール好きにも喜んでもらえる味になっている。山梨・小菅村で取れる梅などの果実も使い、風土を活かした取り組みにしていき、次は赤ワイン樽で熟成したスピリッツや梅酒などを製品化する。まだ生産量が少ないため当社直営の3店舗で提供するほか、オンラインストアで限定販売するのみとなっているが、将来的には業務用として販売しオーセンティックバーなどでも提供できるようにし、海外にも展開していきたい」と抱負を語った。