海の力を借りてさまざまなモノを熟成する専門企業の北海道海洋販売(北海道・札幌、本間一慶社長)は、日本酒やワイン、ウィスキーなどの酒類を海底に沈め、熟成させることで味わいや香りの変化を楽しめる海底熟成の知見を業界に幅広く提供するため、「海底セラー」で保管し熟成させたい酒類の一般募集を始めた。
同社は北海道で唯一、国土交通省から水面占有許可を取得し、また酒類販売業免許を有している合同会社。海底では、船の通過や風などから発生するさまざまな周波数の音と海が生み出す自然の波動による細かな振動が瓶内のアルコール分子と水分子に作用し、香りや味わいに変化をもたらすという。
さらに北海道は、日本海、オホーツク海、太平洋の3つの海域に囲まれており、それぞれの海域で波の動きが異なるため、同じ酒でも海域ごとに異なる味わいや香りの変化を楽しむことができるというユニークな特性がある。加えて、北海道は年間を通じて水温が低く安定しており、酒類の熟成に快適な環境で、台風の直撃も受けにくいため、本州では実現不可能な1年間の熟成期間を確保できるという利点もある。 今回の募集では、全国の酒類メーカーや酒蔵、蒸留所、ワイナリー、酒販店、飲食店、宿泊業者、個人などを対象に、送られてきたボトルに特殊な加工を施した後、北海道南エリアの知内町海域または木古内町海域の「海底セラー」で酒を1年間保管し、熟成させて返却する。
返却された酒は、付加価値のついた酒として販売したり、熟成前と海底熟成酒の飲み比べセットを提供したりできるだけでなく、酒を保管するコンテナそのものが藻場となりCO2削減が期待でき、藻場が海底生物の住処となることで海洋生物の多様性にも貢献ができることから、サステナビリティへの貢献をPRすることも可能だという。
ウイスキー、ジン、ラム、テキーラ、焼酎、日本酒(発泡性は除く)、ワイン、スパークリングワイン、シャンパン、リキュールなどを保管でき、募集ロットは1口あたり12本(酒の種類の組み合わせは自由)。クレジット払いのみで、金額は1口あたり10万5600円(税込/沈める費用、1年間の管理費、蝋封加工費、損害保険料、海底監視システム利用料込)。
申し込み受け付けは4月19日までで、熟成期間は2024年6月30日~2025年6月29日(天候により微調整の可能性有)。申し込み後は、熟成させたい酒を日付指定・元払いで指定場所に発送し、引き上げ後は指定の場所に着払いで発送する。
同社では、味香り戦略研究所(東京・茅場町)や北海道立総合研究機構水産研究本部(北海道・札幌)などの専門機関と共に、味覚テストを含む分析を進めており、これまでに道内10カ所で行った実験データに基づき、味わいや香りの変化の科学的な見える化にも取り組んでいる。今回の募集については、「当社では世界で初めて海底に沈めたお酒を監視する海底監視システムを開発しました。これにより、スマートフォンやパソコンから海底の様子をリアルタイムで観察できます。また、国内の酒類消費量は1999年をピークに減少傾向にあり、海底熟成を通した付加価値の高い魅力的な商品販売を提案することで、新たな顧客層の獲得や酒類業界全体の活性化に貢献したいと考えています」と説明した。