
大阪大学産業科学研究所(以下、大阪大学)と東日本電信電話(NTT東日本)、NTTアグリテクノロジーの3者は、果物などの生鮮品を凍らせずに氷点下で保存する冷蔵庫などを活用し、品質を維持したまま長持ちさせる最適な環境条件を割り出す技術を確立した。これを受けてNTTアグリテクノロジーは12月15日、それぞれの産品や品種にあった装置などと保存用レシピを提供する「鮮度保持コンサルティングサービス」を始めた。
3者は冷蔵庫内などに設置したICTセンサーで取得した温度・湿度・ガスなどのデータと特殊なフィルターを通したカメラ画像解析で老化酵素や老化する条件を可視化し、鮮度を劣化させる環境因子やメカニズムを解析。生鮮品に電気を通すことで氷点下でも水分子が揺らいで凍らないようにする電圧冷蔵庫にエチレン分解フィルム、アルデヒド分解シートなどを併用し、通常は冷蔵で2~3日しかもたないイチゴを、外観や味、食感などの品質を保持したまま2週間保存することに成功した。現在はイチゴと桃について実験を進めており、将来的には肉や花、生酒などにも活用できるという。
NTT東日本営業戦略推進部とNTTアグリテクノロジーデジタルファーミング推進部の担当課長である松田純氏は「今回のコンサルサービスは、電圧冷蔵庫を使いこなせていない事業者が多いことから、さまざまなデータを活用して成功率を高めるレシピを提供するビジネス。フードロスの削減や物流の2024年問題対策などに役立てられ、コールドチェーンの価値向上を目指している。今後、これまで届けられなかった域外への販売や物流の積載率アップ、出荷調整に役立てられるようチャレンジしていきたい」と語った。今回は氷感サプライズの電圧冷蔵庫を使ったが、他メーカー製にも対応するという。
設備としては業務用冷蔵庫タイプを約100~300万円、倉庫用のプレハブタイプを約150万円(3坪だと500万円程度)で販売。それらを使った鮮度保持レシピが1産品あたり約100万円となる予定。各種センサーを設置し常時チェックする場合は月額料として別途数万円が必要になる。また、レンタルプランや地産品お預かりプランなども用意する。
まずは、農業法人や自治体、農業協同組合などを対象とし、将来的には物流業者などと協力して保管庫を設置した中継地点を設け、駅伝方式で運ぶことで日本全国や海外にさまざまな産品を届けることを視野に入れている。