広島大学とキユーピーは、共同研究で作った卵アレルギーを引き起こす主要なアレルゲンである「オボムコイド」をゲノム編集で取り除いた鶏卵の安全性を世界で初めて確認したと発表した。この研究成果は学術誌「Food and Chemical Toxicology」に掲載される。
食物アレルギーの発症は小児に多く、アレルギーの原因食物の第1位は鶏卵(約33%)となっている。また、インフルエンザなどの一部ワクチンには発育鶏卵が使われているため、重度の卵アレルギー患者はワクチン接種できないこともある。
鶏卵のアレルゲン物質は、卵白内のタンパク質にある「オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチーム」などと言われており、「オボムコイド」以外は熱に弱いため十分に加熱すればアレルギー発症の心配はない。しかし、「オボムコイド」は熱や消化酵素にも強いため、加熱調理や消化酵素を用いた加工でもアレルゲン性が失われない。
そこで2013年から広島大学とキユーピーは基礎研究を続け、一般的な手法とは異なる広島大学が独自開発したゲノム編集の手法により、20年にラボレベルで「オボムコイド」を含まない鶏卵作出に成功。今回、食品として利用するに際して、ゲノム編集による副産物や、標的以外へのゲノム編集の影響を解明し、安全性を確認した。
今回の共同研究では、社会実装するための品種化も考慮して、黄斑プリマスロック種とロードアイランドレッド種の2系統の鶏で卵を作出。一般的な卵と比べても見た目や味にはほとんど違いは感じられないという。また、今回開発したアレルギー低減卵は、一部の遺伝子の働きを止めているだけなので、遺伝子組み換えには当たらない。
今後、他の鶏卵成分への影響や安全に利用するための加工方法、味や形などの物性や官能評価などを進め社会実装を目指す。