製本や デザイン制作を手掛ける豊翔(埼玉・川越、仁居弘一社長)の飲食事業部が約2年前に発売した、-60℃まで急速に冷凍する業界初(同社調べ)の冷凍システム〈フードタイムマシン〉が、飲食店などを中心に評判となり導入を拡大している。
多くの急速冷凍庫が-35℃程度までしか冷凍できない所、同製品では-60℃まで冷凍できる点が大きな特徴となっている。これにより「味、触感の劣化」 「凍結焼け」 「油焼け」「色の劣化」が起きず、アニサキスなどの寄生虫も完全に死滅し、融点が-44℃のDHA(ドコサヘキサエン酸)や-54℃のEPA(エイコサペンタエン酸)よりも低い温度で冷凍するため青魚も完全凍結できる。そして、-60℃では酸化や細胞内酵素、微生物の働きが完全に止まるので、半永久的に劣化が生じない状態を維持できるという。
同製品は温度だけでなく、冷凍時間の速さも大きな特徴となっている。通常の冷凍では最大氷結晶生成帯(-1~-5℃)を通過する際、細胞内の水分が膨張し、細胞壁を破壊する。さらに、その氷同士が結合することで氷の芯ができ、更なる細胞破壊を引き起こし、この現象がドリップを引き起こす要因となっている。
しかし〈フードタイムマシン〉では、振動を加えることで最大氷結晶生成帯を業界最速レベル(同社調べ)で通過させることを実現。細胞内の水分(細胞液)が膨張する時間を与えないことで細胞破壊が生じず、それぞれの細胞内で凍るため氷同士の結合も起きない。「凝固速度≒融解速度」の関係となるため解凍時間も通常冷凍に比べ早く、ドリップも出ないため、導入した飲食店では、肉や魚だけでなくパスタやカレー、弁当なども冷凍保存してロスを削減できているという。
この凍結を可能にしたのが、特許を取得しているエタノール製剤の不凍液「FTF(フードタイムフリーザー)」だ。電流で振動させることで液の凍結を抑制し、炭素の持つ超低温安定化冷媒により温度上昇を抑えることに成功。ムラなく冷凍できるようにした。この不凍液は食品添加物のみで作られているため、もし食材などに直接不凍液がかかったとしても人体に影響はなく、洗うか火を通すかすれば味も変わらないという。
100Ⅴの電源で利用でき、用途に合わせて3種を用意しているが、規格やサイズについては特注の相談も受け付けている。
個人店でも使いやすいよう半分をフリーザー、半分をストッカーとした〈急極冷凍ハーフ〉(w608×D755×H840/79万円)では、1回で最大4kg、1日の目安で10kg凍結できる。同じサイズで庫内すべてがフリーザーの〈急極冷凍60〉(同/110万円)では1回最大8kg、1日の目安16kg。セントラルキッチンなどで便利な〈急極冷凍330〉(w1470×D755×H840/170万円)では1回最大20kg、1日の目安40kgとなる。
基本は白色の筐体だが、有料オプションで木目も用意している。不凍液は利用頻度によるものの、半年から1年ごとに交換する必要がある。
同社は川越市に〈フードタイムマシン〉を利用したステーキ店
「Steak&Curry RockenRoll 66(ロッケンロール)」など2店舗を運営しており、例えば低温調理済みの肉などは湯せんして味付けするだけで提供できるためアルバイトでも簡単に調理でき、フードロスもほぼゼロにできるため味の良さと提供時間、価格面などで競争力を高められたという。