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[食品メーカーの研究発表①]酢の「酢酸菌」が風邪の諸症状を減少させる!?【キユーピー】

2021年12月28日 9:53 am

 キユーピーは、神奈川歯科大学の槻木恵一教授とともにヒト臨床試験を行い、酢の発酵菌である「酢酸菌GK-1(G. hansenii GK-1)」を摂取することで、病原体やウイルスの侵入を防ぐとされる「分泌型免疫グロブリンA抗体(分泌型IgA)」を増加させることと、風邪に見られる鼻汁・せき・倦怠感といった諸症状を減少させることに効果があることを明らかにした。[公益社団法人日本食品科学工学会 2021年度中部支部大会で発表]

 キユーピーはこれまで、酢の発酵菌である「酢酸菌GK-1」が、ウイルスなどの感染源の侵入を阻止する「免疫グロブリンA抗体(IgA)」の産生を促進することを細胞を用いた試験で報告している。

 「免疫グロブリンA抗体(IgA)」は免疫細胞で作られたのち、「分泌型IgA」として粘膜上に分泌され、細菌やウイルスと結合してその侵入を防ぐ働きがあることから、今回、新たにヒト臨床試験を実施した。

△「分泌型IgA」による生体防御の概念図

 ヒト臨床試験では、酢酸菌の摂取が免疫機能や体調維持に及ぼす影響について検討するため、20~64歳の健常成人で、風邪にかかりやすい人(事前アンケートによる)95人を2グループに分けた。

 一方のグループは1日あたり酢酸菌GK-1を150億個含む食品を12週間摂取し(酢酸菌群)、もう一方のグループは酢酸菌を含まない食品を同様に摂取(プラセボ群)。摂取から6週間後、12週間後にそれぞれ、唾液中の「分泌型IgA」量を測定した結果、酢酸菌群ではプラセボ群よりも唾液中の「分泌型IgA」量が多いことが分かった。

△摂取6週間後および12週間後における唾液中の分泌型IgA量(解析対象外の被験者を除いたプラセボ群50人、酢酸菌群45人の平均値)

 また、摂取期間中、風邪に見られる「5つの症状(鼻汁・鼻づまり・せき・全身倦怠感・疲労)」と「体調の変化」を記録した結果、酢酸菌群の方がプラセボ群より、各症状の発症率が低かった

 これらの結果を受けて、酢酸菌GK-1が唾液中の「分泌型IgA」量を増加させ、風邪に見られる諸症状を減少させることが確認できた。なお、酢酸菌GK-1はこれまでに花粉やホコリ、ハウスダストによる鼻の不快感を軽減させることもヒト臨床試験で確認している。花粉症などのアレルギー症状は、免疫機能が正常に働かないことによって引き起こされると言われていおり、今回、酢酸菌の免疫機能への作用機序の一部が新たに確認できたことで、酢酸菌のアレルギー症状に対する効果との関連が示唆さた。

△試験期間中における風邪に見られる症状のプラセボ群を100%としたときの発症率(解析対象外の被験者を除いたプラセボ群50人、酢酸菌群45人)

 酢酸菌を多く含む食品は「黒酢」(日本)、「バルサミコ酢」(イタリア)、「香酢」(中国)を代表とする「にごり酢」が挙げらる。一般的に使われている酢は透明になっているが、これは元々濁っている酢をろ過されているためで、その過程で濁りの原因でもある酢酸菌の大部分が取り除かれている。同社では「近年、酢酸菌をろ過しない『にごり酢』を販売する醸造元も増えていることから、酢酸菌をより手軽に摂取するきっかけの一つになりそう」との見方を示した。