中小・個人事業者が、あるエリアに出店しようと考えた時、そのエリアについての商圏分析や家賃相場を知るには、多額の資金を支払ってコンサルティング会社に依頼するか、オープンデータを集めて分析する人材が社内にいないと難しい。また、家賃については不動産業者との情報力や交渉力の違いにより、足元を見られて相場以上の家賃を求められることもある。
地図とテクノロジーを活用したマーケティングサービスなどを提供するデータインサイト(東京・幡ヶ谷、中西義樹社長)は8月30日、国内初(同社調べ)となる店舗賃料をAIが査定する出店エリア無料診断サービス〈CHARTA(カルタ)〉のウェブトライアル版(https://charta.jp/)をリリースした。
〈CHARTA〉トライアル版はサービスサイト上で、出店を検討しているエリアについて、政府統計データや独自に収集したデータを基にAIが診断した推定賃料と1日あたりの平均売上予測の結果を表示。さらに、最寄り駅の乗降客数と距離、昼間と夜間の人口比較、ライバル店情報、商圏分析などのレポートも無料で提供する。トライアル版では東京23区内のみを対象としているが、今年度末までにローンチ予定の本サービスでは、全国に対応したアプリ版としてリリースする予定だ。
同社は、大企業がコンサルタントに多額の料金を支払って分析していた商圏や家賃相場の情報を、個人や中小でも無料で利用できるようにすることで競争力を高め、大手との情報格差をなくすことを目的に、商圏分析やエリアマーケティングシステムを提供する技研商事インターナショナルと同サービスを共同開発。まだ一部でズレが生じる場合があるものの、独自のアルゴリズムを構築し参考データとして利用できる精度になったことから、トライアル版の提供を始めた。
商圏分析では現時点だけではなく、人口動態や再開発などの情報を組み込むことで5~10年後にどのように変化していくかも予測し、数年後を見据えて準備できるようにした。調べられるエリア数は、メールアドレスを登録して利用する場合は月5回まで、未登録の場合は月1回までとなる。
アプリ版の本サービスでは、より多くのデータを組み込んで精度を高めるとともに、6回以上利用する場合は有料とし、より詳細な各種分析データを提供する有料のオプションプランも用意する予定だが、トライアル版で提供しているサービスはそのまま無料で使えるようにするという。将来的にはエリアや条件に合う不動産業者や仕入れ業者、税理士、集客サービスなど出店に関係するさまざまな事業者を紹介するサービスを組み込み、その事業者から紹介手数料を得ることで収益化することも視野に入れる。
「店舗家賃は交渉や言い値で決まることが多く、隣同士でも数倍の開きがあったりする。同サービスを普及させることで適正な店舗向け家賃相場を作りたい」(同社)という。