NPO法人居酒屋甲子園は来年、誕生から20周年を迎える。その活動は、この20年で大きく変わったが、実はその活動内容は意外と知られていない。
活動内容は大きく変わっているにも関わらず、かつての「お涙ちょうだい的な感動系プレゼンテーション」のイメージが強く、アレルギーを示す向きが少なくないのも事実だ。
しかし、実態は大きく変わった。「ロマンとソロバンと感謝」という飲食業にとって重要な要素を重視する、愛と情熱を持った実業家集団へと変わりつつあるのだ。
今年1月、第9代理事長に就任した和田裕直さん(てっぺん代表)は、第18回居酒屋甲子園に向けたテーマとして「夢」を掲げた。和田理事長に、その真意と、今後のビジョンなどを聞いた。
もう一度「ワクワク」を取り戻そう!!
「夢は本来、一度決めたら変えられないような、とても重いものではない。むしろ、心が動いて、ワクワクする――それはすべて夢。ワクワク、そしてそれに伴う情熱が夢の出発点であることは、これからも変わらないと思うんです」
開口一番、和田さんは、こんな言葉を口にした。「夢」というテーマを掲げた1月から9カ月が経ち、和田さんの中で、さらにこの「夢」という概念が、熟成され、深化していっているのだという。
元々、飲食店のオーナーの多くは、自らの熱いビジョンを掲げ、そのビジョンにワクワクした人たちが集まり、店が大きくなっていった経緯がある。しかし、飲食店を取り巻く環境が大きく変わってしまった。
能力に関係なく給料が無限に上がっていく時代。雇用される側が雇用主より強い時代になり、オーナーたちは一様に、「こんなにみんなを可愛がってきたのに……」と感じるようなことが頻発するようになり、創業時の熱い思いが疲弊しているようにも映る。
そうしたさまざまな変化が、コロナでドラスティックに加速した。そして、世界規模で巻き起こっている経済不安の渦――なぜ起業したのか、ワクワク感、あの時の情熱はどこへ行ってしまったのか――そうした飲食店経営者の疲弊が、分社化やバイアウトといった出口戦略に色濃く反映されていると、和田さんは分析する。
「夢」について考えているときに、和田さんの頭の中を、こんな考えが支配した。
「日本の飲食業は世界的に見ても、かなり高いレベルにある。つまり、『夢がない』『誇れない』と思い込んで、そう言っている我々自身に問題があるのではないか。もう既に、夢あふれる職業のはずなのに、自信や誇りを持てないのは我々従事者自身に問題があったのだ。興味や情熱、ワクワクがキッカケで夢を見ていたはず。それをもう一度取り戻そうと、訴えていく大会にしたい」
誇り高き日本の「食」
物心両面の幸福こそ
1次産業からその物流などのインフラ、関わるIT産業なども含めると、食関連産業の規模は100兆円をゆうに超えるとの試算もある。日本のGDPから見ても大きな割合を占める重要な産業だ。日本の食文化への世界的なリスペクトは、飲食産業への誇りへと繋がる。和田さんがこう続ける。
「職人の育成をはじめ、いまの経営者は厳しい労務環境の条件の中で経営の舵取りをしなければならないので、きれい事では済まされない部分が非常に多いこともわかる。しかし、手段や方法は『気持ち』の先にあるものだ。まずは『気持ち』がないと何も始まらない。経営者も、昔ながらの労務環境にこれまで甘えてきたことがあるのも事実」
「しかしこれからは、『物心両面の幸福』を追求していく時代だ。この『物心両面の幸福』を追求できる人こそが夢を叶えられる。夢を叶えるにはお金も必要だ。売上を上げる意味や、それが自分たちにどう還元されていくのか――そうしたことを従業員にしっかりと見せて説明してあげることも、個々の『夢』に繋がる経営者の責任であり役割だろう」
人間は食物連鎖の頂点にいる。例えばマグロの赤身一切れで人間は12分しか生きられないが、マグロ一匹が成長するまでに食べるイワシの量はトン単位。そのイワシが成長するまで食べるアミエビはさらに――と、とてつもない食物連鎖の上に、人間は居る。「その感謝を忘れてはいけない」と、和田さんはこう強調する。
「飲食は『いただきます』で始まり『ご馳走様』で終わる。これは命をいただくことであり、この食事を作るために、走り回って食材を用意してくれたことに感謝することを意味する。つまり、感謝で始まり感謝で終わるのが飲食なのです。特に飲食業に携わる我々は、これを忘れてはいけない。日本人の美しい心の表れでもある。夢も『感謝』がないと叶わない」
全国の地区予選を勝ち上がり、さらに最終審査に通った、第18回の決勝の壇上に上がる5店舗は、現在の飲食業界の抱えるさまざまな課題を自分たちなりのアイデアや仕組みで克服している飲食店ばかりだ。もちろん、感動ストーリーだけではなく、ロマンもソロバンも兼ね備えている。
「ロマンとソロバンと感謝」がないと、人生は幸せではないということ――第18回大会を通じて、その根幹の想いを和田さんは飲食業界全体に発信していきたいのだという。オープニング映像、そして総括の挨拶にも、そうしたことを織り交ぜて発信、飲食業界に誇りや自信を取り戻して貰いたいと願う。
11月11日、パシフィコ横浜でその熱きプレゼンテーションの幕が開く。スタッフ研修として、参加する価値のある大会だ。まず、この大会を体験することから、それぞれの「夢」がきっとスタートすることだろう。
第18回居酒屋甲子園全国大会のチケット情報(横浜)
https://izakaya-koshien.com/izako2025
共に学び共に成長し共に勝つ|居酒屋甲子園公式サイト
https://izakaya-koshien.com/









