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低コスト・高品質な海ぶどう生産する養殖システムが完成! 全国に販売開始【ゼブラファーム】

2024年8月9日 8:44 am

 食物繊維やカリウム、マグネシウムなどの美容成分をはじめとするミネラルを豊富に含み、低カロリーでプチプチとした食感で居酒屋などの飲食店でも人気の海ぶどうを、コストを抑えつつ安定的に供給できる養殖システムが開発された。

 農業・養殖技術の開発・提供などを手掛けるゼブラファーム(東京・岩本町、木村太一社長)は、三重県志摩市で養殖屋(三重・志摩、前田勉社長)と「閉鎖循環式室内養殖による海ぶどう」の共同生産・販売を開始した。同時に、どこででも「閉鎖循環式室内養殖」を実施できる「コンテナ型海ぶどう生産システム」の販売と技術サポートも始めた。

 養殖には「海水面漁業の養殖」と「内水面漁業の養殖(陸上養殖)」の2種類があり、「海水面漁業の養殖」では、養殖可能な地域が限定されることや、天候・災害、プランクトンの異常繁殖・水温上昇などの自然環境の影響を受けやすいといった課題がある。

 一方、「陸上養殖」の「かけ流し式(小川や海から水槽に取水し汚れた水を排水する方式)」でも、自然から常に新しい水を供給するため、水質調整が難しく外部環境の影響も受けやすい。さらに、大量の排水が生じることで外部環境の汚染も懸念されている。

 「陸上養殖」のもう1つの方式である「閉鎖循環式(槽の水を浄化して再び水槽に戻す方式)」では、生育環境の制御が比較的容易な反面、運用には高度な技術が必要なため、設備や運用コストが高いという課題がある。

 そして海ぶどうでは、ビニールハウス内でのかけ流し式による陸上養殖が一般的である中、ゼブラファームは設備費用や運営費用を比較的安価に抑えた「閉鎖循環式の陸上養殖システム(閉鎖循環式室内養殖)」の構築に成功。安定した高品質の海ぶどうを安定供給できるようにした。

シリンダー水槽内で波や潮流を再現

 今回開発した閉鎖循環式室内養殖では、海水を平面ではなく立体と捉え、LED照射で光の当たる面積効率をあげて海ぶどうの成長を促進。水温管理を徹底し、シリンダー水槽内で波や潮流を再現し、海ぶどうに必要な成分・栄養を精密に管理する。また、海水中にCO2を溶解させることで光合成を促し、天然由来のミネラルを添加する施肥も行うことで品質を高めた。

 これにより、粒付きや色、長さ、味などの品質が高い海ぶどうを、植付けから約1カ月と短期間で収穫可能にした。また、施設面積や使用海水量を小さくし、作業時間を短縮することも可能なため、一般的な陸上養殖と比べて設備費用や運営費用を抑えることもできるという。

 ゼブラファームでは、すでに一部の飲食店で導入されている同システムで養殖した海ぶどうを、全国各地の多くの飲食店に販売することを目指すとともに、自社のECサイトで家庭向けの販売も開始した。参考価格としてECサイトでは家庭向けに1㎏7344円で販売している。

「コンテナ型海ぶどう生産システム」のコンテナ

 また、閉鎖循環式室内養殖をコンテナ内に内蔵したシステム(コンテナ型海ぶどう生産システム)を販売することで、どこででも海ぶどうを養殖できるようにした。現在、大阪府中央区、鹿児島県指宿市、鹿児島県曽於郡、滋賀県長浜市、東京都西多摩郡、長野県佐久市、山形県鶴岡市、沖縄県国頭村、広島県府中市、大阪府堺市の10カ所でコンテナ型海ぶどう生産システムが導入されているという。

 今後、電気や熱などのエネルギーの自立(オフグリッド化)機能を開発・付与することで、災害時や世界の貧困地域でも活用できるオフグリッドモデルの開発を進めていくとしている。