障害者差別解消法施行から8年、身体障害者補助犬法施行からは20年以上が経過しているの中、法律に対する社会の理解は進んでいるのかを調査するため、公益財団法人日本盲導犬協会(井上幸彦理事長)が毎年実施している盲導犬ユーザーを対象にした聞き取り調査によると、受け入れ拒否が起こった場所では「飲食店」が55%と半数以上を占め、最多となった。
同調査は、2023年1月1日~12月31日の期間、職員が電話とメールで聞き取り盲導犬使用者236人から回答を得た。
盲導犬同伴を理由にした「受け入れ拒否」については、103人(44%)が「ある」と回答。経年変化をみるとコロナ禍で減少した数値が前回増加し、今回はほぼ横ばいとなっている。
続いて、「あった」と答えた人に拒否の回数を尋ねたところ、延べ208件発生しており、前々回(184件)から前回(196件)、今回(208件)と増加傾向にある。208件の受け入れ拒否が起こった場所では、「飲食店」が114件(55%)と最多で、「交通機関」25件(12%)、「宿泊施設」18件(9%)と続いた。
同協会は、「拒否の原因としては『従業員の教育不足』や『(法律による)受け入れ義務を知らない』など、法律の認識不足が70%以上を占めました。2023年7月に協会が市民を対象として実施した『盲導犬および視覚障害に関する意識調査』でも、『身体障害者補助犬法を知らない』と回答した人が74.4%に上っており、受け入れ拒否の解消には法律の周知と理解が欠かせないことが鮮明になりました」とコメント。
さらに近年の傾向として、「『タッチパネル画面の操作ができない』とする回答が80人(34%)からあり、ICT技術の進化が加速する一方で、視覚障害者への配慮が追いつかず、情報・文化面での障壁が急激に増えている」と課題を指摘した。
具体的に「社会参加の障壁だと感じること」を尋ねたところ、さまざまな意見があがり、飲食店や一般の生活に関するものでは、以下のような意見が寄せられた。
「タッチパネルが増え、不便に感じる」
「クレジットカードの決済端末がタッチパネルだと、店員に暗証番号を伝えるしかない」
「水がセルフサービスの飲食店が増えている。店員にお願いしたところ『私たちがすることではないので』と断られた」
「色々な場面でアプリの利用を求められるが、視覚障害者には使いづらい」
「盲導犬だと説明し入店できたが、店員に『周りに迷惑をかけないように』と言われた」
「商品説明や会計時のおつりの受け渡しを、自分ではなく同行しているヘルパーにされる」
「まだまだ受け入れ拒否があり、新しい所へ行くには勇気がいる。もっと気軽に出かけたい」
「歩道がない。車との距離が近く、怖い思いをする」
「通勤中、歩道や点字ブロック上に駐車されている車があり歩きづらい」
「障害者への対応が分からない人が多い。聞いて貰えれば答えるのに聞かれない」
「通りすがりに犬が可哀想だと言われる。心理的障壁が一番ある」