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ハラル認証だけがすべてじゃないぞ!? ムスリム対応って思っていたより簡単かも!!(前編)

2019年7月23日 4:56 pm

自己申告制のハラルマークも

 近年、日本に多くの外国人旅行客が訪れる中、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックにより、外国人旅行客がさらに増加することが予想される。また、外国人人材受け入れも拡大することから、日本に住む外国人も増えていく。

《スナリ》のラーマン店長

 その中には当然、ムスリムの人が多く含まれるものの、日本は世界でも珍しいほどムスリムが少ない国であるため、あまり理解が進んでいない。
 飲食店経営者の中には、高額な料金を支払ってハラル認証を取る必要があると考えている人も多い。しかし、実際にはハラル認証を受けなくても、ハラル対応は出来るのだ。

 モスクがあり、ムスリムが多く住む東京・大塚でハラル食材の専門店「ラーマニア」を経営するラーマンさんは3月、ショップ近くにインド・バングラデッシュ料理店「スナリ」をオープンした。メニュー表にはハラルマークを付けているが、公的なハラル認証を得たわけではなく自己申告によるハラルマークだ。

 ラーマンさんもほかの従業員も全員ムスリムであるため、当然ハラルに対応した食材のみを使用し、ハラルに則して調理している。そのため、ハラル認証がなくても、そのことを知っているムスリムのお客さんは安心して料理を注文する。日本に訪れたり住んでいるムスリムにとって、ハラルに関して判断材料となる信頼できる情報がしっかりと入手できるかどうかがカギになる。

 また同店では、完全ハラルの店にすると日本人客が来なくなり、飲食店として売上が成り立たないため、ムスリムにとっては厳禁である酒類も提供している。当然、戒律を厳しく守るムスリムは入店してこないものの、実際には、アルコールドリンクの保管場所や提供する場をきっちりと分け、ほかの食材や料理と混ざることがないように管理すれば、それほど気にしないというムスリムのお客さんは多いという。現在はまだお客さんの大半は日本人だが、モスクで礼拝がある日には礼拝後にやってきて食事するなど、ムスリムのお客さんも増えているという。

 冒頭にも書いた通り、「スナリ」のメニュー表には、認証を受けたわけではないのに「ハラル」マークが記されている。ハラル認証マークは世界中で200以上あると言われており、日本にも数多くの認証機関がある。

グリル料理の盛り合わせ

 しかし、実際には認証されたもの以外に付けてはいけないという決まりはないのだ。ラーマンさんの食材ショップでも、公的なハラル認証だけでなく、企業が自由にデザインしたハラルマークを付けている製品も多く並んでいる。

 基本的に野菜、果物、穀物、豆類、魚介類、海藻類、牛乳、卵などはすべてハラルであるため、特別気にすることはない。注意すべきは肉類と豚由来の製品、アルコールを含んでいる調味料などだ。肉類に関しては日本でもハラルマークが表示されているもの以外は使えないということが浸透してきたため、ハラルマーク付きの肉を使っていることを表示すれば問題ない。日本の飲食店にとって一番厄介なのが豚由来の製品だ。

ハラル食材が所狭しと並べられている「ラーマニア」

 豚とは関係ないと思われるパンやクッキーでも、ショートニングが使われているとムスリムにとっては食べられないものになるのだ。そのほかの一見、豚とは関係ない食品であっても、ゼラチンやラード、乳化剤、コラーゲンなどの豚由来の成分が使われていることがあるため要注意となる。

 こう聞くと「やっぱり面倒そう」と思われるかもしれないが、逆に言うと、これらのものを使わないメニューであれば安心ということだ。大切なのは、使用している加工品の成分まですべて情報開示し、日本語だけでなく英語などでも表示すること。そうすることで、食べるか食べないかをムスリムのお客さんが自分で決めることができる。ムスリムにとって一番の不安は、何が使われているのか分からないことなのだ。(続く)