売上や原価、利益率のデータも公開するって!!
同じワインをグラスに入れ、一つは10ドル、もう一つは90ドルという値札をつけてワイン愛好家に飲み比べてもらったところ、高い値札をつけた方が満足度が高かったという実験がある。これは名声価格と呼ばれるもので、人間の心理は「価格が高い=品質が高い=ステータスが高い」と認識する傾向にあることを示している。
この実験から「価格が与える商品へのイメージが大きくて、時として本来の本質的な価値を見失っているのではないか」と考えたベンチャー企業Forbul(東京・竹橋)の平野晟也社長は、「飲食の質と共に、それ以外のサービスに価値を感じて支払いを発生させることができるのではないか」と考え、10種類の日本酒とお茶漬けを2時間飲み・食べ放題とし、その価格を顧客が自分で決めて支払う実験店舗「日本酒の本質」をオープンした。
同社は日本酒の良さを国内外に広めることを目的とした数々のイベントなどを実施しており、今回はリアルなクラウドファンディングとも呼べる居酒屋運営に挑戦。飲食店を開くのは初めてで、社会実験ということから売上、原価、利益データはすべて公開する。
消費量が減少する日本酒をもっと若者に楽しんでもらうことをミッションとしていることから、日本酒は〈大信州 別囲い純米吟醸 番外品〉や〈屋守 純米吟醸 無濾過〉など若者に好まれる飲みやすい日本酒を多く揃えた。平野社長自ら開発に携わり、少量しか生産できない〈鷹目石(ホークアイ) 純米大吟醸 無濾過生原酒〉もラインナップに加えた。料理は日本酒との相性がいいことから、さまざまな具材を取り揃えた十六穀米のお茶漬けとみそ汁にした。
コワーキングスペース「TOKYO PRODUCERS HOUSE」(東京都千代田区神田錦町3-11 弦本ビル2階)の一部を間借りし、6月27日、7月11日、同25日、8月2日、同16日の5日間、19時30分から23時30分まで営業。初回の6月27日は31人の来客があり、売上原価3万8449円、売上高7万2000円、営業利益2万2551円だった。
実はこの店舗、3カ月連続で赤字になった場合は閉店することとしている。平野社長は「この店は人の善意の上に成り立っており、この仕組みが本当に実社会で成り立つのか? という一つの社会実験として始めた。客単価は3500円を想定しており、初回は2323円と届かなかったものの、お客さんからの応援的な値付けもあり、黒字は達成できた」と感想を述べた。一方でただ飯・ただ酒を目当てとした来店もあったことから、次回からはこれらの顧客への対応策も講じていくという。すでに全日とも30人前後の予約が入っており、空席はわずかとなっている。