「モクテル(Mocktails)」をご存じだろうか。「似せた、真似た」という意味の英単語「モク(mock)」と「カクテル(cocktail)」を組み合わせた造語で、ノンアルコールカクテルの新しい呼び方だ。イギリス・ロンドン発祥といわれる「モクテル」、最近じわじわと広まりつつある。
酒離れ進むもノンアルは伸長
「お酒は健康に良くないから」「飲み会の雰囲気は好きだけど、お酒は苦手」……など、さまざまな理由で飲酒習慣は年々減少傾向にある。居酒屋・バー業態にとっては頭の痛い傾向ではあるが、一方でノンアルコール飲料市場は堅調に推移している。
記者をはじめとした、三度の飯より酒が好きな人からは、「アルコールが入っていないなら、モクテルじゃなくてもソフトドリンクでいいんじゃないの?」などという声が聞こえてきそうだが、それはアルコールが苦手だったり体質で飲めなかったりするお客さんの要望や不満をみすみす見逃していることになる。
ソフトドリンクと「モクテル」との最も大きな違いは、ソフトドリンクは単品で構成されるものが多いのに対し、「モクテル」は数種類のジュースやフルーツ、シロップや割り材などを組み合わせて作った、複雑な味わいの飲み物であるという点だ。
グラスに単品を注いだだけのソフトドリンクよりも、レシピに沿って作る「モクテル」の方が利用者には「本格的」「手が込んでいる」「見た目がおしゃれ」「アルコールが入っていないからヘルシー」と受け取られ、顧客満足度の向上や客単価アップにつなげられる。
お客さんにとっても「モクテル」は嬉しいメニューだ。一見すると普通のカクテルに見えるため、たまーにいる「飲み会でノンアルなんぞ許さん!」派に絡まれる心配も減り、「ソフドリよりもアルコールの方が単価が高いし、仕方ないとはいえ全員均一ワリカンの飲み会だと不公平に感じるなぁ」という密かな不満(これが結構バカにできない)も解消できる上、お酒が苦手な人やハンドルキーパーの人でも、飲み会の雰囲気そのままにおいしく楽しめる。
また、日本での食事を楽しみに来日するインバウンド(訪日外国人)客は非常に多く、彼らの中には宗教上の理由などでアルコールを嗜まない人も少なくない。それらの理由から、「モクテル」は都市部の居酒屋やバー、ホテルなどでじわじわ広まりつつあるのだ。