インタビュー加工品(野菜・果物)特集読むと得する

今こそ「植物性食材」に着手すべき理由とは?メニューの選択肢広げ潜在顧客にアピールを!

2022年5月6日 9:36 am

 ようやくSDGsの意味を理解し、フリガナなしでもつかえず読めるようになったと思いきや、今度は「エシカル消費」や「エシカルフード」といった言葉が出てくる。

 消費者庁によると、「エシカル消費」とは、消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うことを指す。「エシカル」は英語の”ethical”で、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞だ。

 「エシカルフード」は、環境や社会の課題解決につながる食べ物だ。「フェアトレード」や「オーガニック」、「アニマルウェルフェア」「地産地消」「フードロス」というキーワードは、どれもエシカルフード関連と言える。

 この「エシカルフード」に、動物由来の原料を配合せず、植物由来原料のみを使用した食品「プラントベースフード(植物性食材)」も含まれる。

 ここでは詳細を省くが、食肉や乳製品のための畜産は水質汚染や温室効果ガス排出、土壌劣化などで環境に負荷をかける割合が農産よりも高い。そのため、個人の嗜好や信条ではなく環境負荷軽減のために菜食を選ぶ人もいるのだ。

 数年前まではベジタリアンやヴィーガンなど一部向けに限定されたものという認識だったが、今ではスーパーやコンビニに植物性食材製品が通年で並ぶようになった。

 その中で、飲食店ではどのように活用していけばいいのだろうか。植物性代替肉〈Green Meat(グリーンミート)〉を製造販売するグリーンカルチャー(東京・金町)代表の金田郷史さんに見解を聞きながら、外食におけるプラントベース市場の今後を見通す。


◆おいしさと価格を訴求しメリット説明できるか

グリーンカルチャー代表取締役 金田郷史さん

──TVやネットなどでは植物性代替肉や植物性ミルクなどが注目され始めています。

 現時点ではプラントベースフードが流行っているというより、ようやく取り上げられ始めたという状態。日常的に食べられているフェーズにはまだ至っていない。

──飲食店が植物性食材やメニューを導入するメリットはどこにあるのでしょうか。

 「プラントベースメニューがあったら注文してみたい」という潜在的な欲求は多いと考えられる。文房具専門店の伊東屋(東京・銀座一丁目)が運営する『Cafe Stylo』では、2021年9月から〈グリーンミート〉を使用した〈グリーンミートバーガー〉1760円を提供しており、50代以降の女性客を中心に人気だ。

〈グリーンミートテリヤキバーガー〉

 ビーフパティを使った〈Styloバーガー〉1760円もあるものの、店員が〈グリーンミートバーガー〉をお勧めすると注文する人も多いという。中高年層は牛肉を好む一方、健康を気にする人も多い。メニューの選択肢を増やすことで、今まで取りこぼしていた潜在顧客に訴求できるのではないか

──その上で、飲食店が注意すべき点はどこでしょうか。

 単に「大豆ミートを使用した動物性原料不使用のプラントベースメニューです」と打ち出すだけではなく、「コレステロールが気になる方におすすめ」とか「食物繊維が豊富に摂取できる」など、プラントベースメニューを食べると、どのようなメリットがあるのかを具体的に言語化できているかがポイントだ。それにより、お客さんも安心して頼みやすくなる。

──植物性食材メニュー普及のハードルは何でしょうか。

 主なものは価格面だ。現在は食材メーカーなどが奮闘している段階のため、どうしても価格が高くなりがちだ。消費者は風味や価格といった点をシビアに見ている。プラントベースメニューが高い理由をきちんと説明できていない点も、敬遠される理由にあるのではないか

──飲食店が今やるべきことは何でしょうか。

 プラントベースフードは徐々に普及していき、将来は畜肉や牛乳と同じように手軽に選べるようになるだろう。売れるとなった時点で手を出すのではなく、今から着手しておくことが大切だ。

 例えばヴィーガンラーメンと通常のラーメンの両方を用意するとカニバってしまうのではないかと懸念を持つかもしれないが、どちらかを選べるようにしておくことで、より多くのパイが取れる。


◆植物性食材の認知度高く味と本物らしさ希望

 インサイトテック(東京・西新宿、伊藤友博社長)は2021年10月、同社が運営するサービス「不満買取センター」ユーザー5204人に、植物性食材に関する意識調査を実施した。

 植物性食材認知度は男女ともに約8割に上り、喫食・飲用経験は男性が58・2%、女性が65・9%だった。口にする理由は主に「健康に良さそう」「カロリーが低い」「話題だから」「肉が苦手だから」「たんぱく質が摂れる」といった内容が挙がった。

 今後の喫食・飲用意向は男性45・1 %、女性48・1%で、条件としては「おいしい」「本物に近い」「身体に良さそう」「カロリーが低い」「栄養がある」などが挙げられた。

 年代別では、喫食・飲用経験が低い若年層ほど意向は高く、同社は「若年層を取り込むことで、植物性食材市場は急成長すると考えられる」と分析する。

 近年の健康志向は、コロナ禍を経てますます高まっている。健康に良くてカロリーが低いエシカルフードであるプラントベースフードは、一過性のブームにとどまらず、今後は牛や鶏などと並んで選ばれていくようになるだろう。

 飲食店が植物性食材を活用し、プロの手によるおいしい料理を提供しつつ、具体的なメリットを説明できれば、多少高くてもプラントベースメニューを選ぶ消費者はいるはずだ。金田さんも指摘するとおり、消費者にとって選択肢の幅が広がることで、来店機会を増やすチャンスになるかもしれない。