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中堅・中小の新規事業挑戦支援する「事業再構築補助金」の指針発表【中小企業庁】

2021年3月26日 8:47 am

▲経産省の資料より抜粋

 経済産業省の中小企業庁は、過去に実績がない業態への変更や新規事業を始める中小・中堅企業を支援する「事業再構築補助金」の指針を発表した。同補助金は、例えば居酒屋の経営企業がオンライン専用の注文サービスを新たに開始し、宅配や持ち帰りの需要に対応する場合や、レストランの一部を改修し、新たにドライブイン形式での食事のテイクアウト販売を実施する場合などに申請できる補助金だ。具体的な内容については以下のようになる。

【対象となる事業者の条件】
 同補助金を受けるには以下の3点を満たす中小企業(飲食店の場合は資本金5000万円以下の会社又は従業員数50人以下の会社及び個人)または中堅企業(資本金又は出資の総額が10億円未満の法人または常勤の従業員数が2000人以下)が対象となる。

①申請前の直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高がコロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業など
②事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業など。
③補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画書を策定する。

【補助額】
・中小企業向け

通常枠=補助額100万~6000万円。補助率2/3
卒業枠(※1)補助額6000万円超~1億円。補助率2/3
(※1 400社限定。事業計画期間内に、①組織再編②新規設備投資③グローバル展開ーーのいずれかにより資本金又は従業員を増やし、中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する事業者向けの特別枠)

・中堅企業向け
通常枠=補助額100万~8000万円。補助率1/2(4000万円超は1/3)
グローバルV字回復枠(※2)補助額8000万円超~1億円。補助率1/2
(※2 100社限定。①直前6カ月間のうち任意の3カ月の合計売上高がコロナ以前の同3カ月の合計売上高と比較して15%以上減少している②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員1人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること③グローバル展開を果たす事業であることーーの要件をすべて満たす中堅企業向け特別枠)

・緊急事態宣言特別枠
上記①~③の要件に加え、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛などにより影響を受けたことにより、2021年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している場合、以下の補助額が適用される。

【補助額】
従業員数5人以下:100万~500万円
従業員数6~20人:100万~1000万円
従業員数21人以上:100万~1500万円

【補助率】
中小企業3/4
中堅企業2/3

 事業再構築補助金を申請するのには、銀行や商工会議所などの認定支援機関と申請書類を策定する必要があるため、まずは取引銀行などに相談することが先決となる。取引銀行が対応できない場合は、「認定支援機関検索」(https://satr.jp/url/d752ee7f?c=3bdf7a2552fbc390-f4755c6c33d97ffd)から探すこともできる。

 指針では、「事業再構築」の定義として①新分野展開②事業転換③業種転換④業態転換⑤事業再編ーーの5つの類型を発表。「中小企業卒業枠」と「中堅企業グローバルV字回復枠」についても要件を定めた。

▲経産省の資料より抜粋

 では、「事業再構築」の定義の5つの類型について具体的に見ていく。

①新分野展開
 中小企業などが主たる業種や事業を変更せずに、新たな製品を製造するなどで新たな市場に進出することと定義。以下の3つをすべて事業計画で示す必要がある。

Ⓐ製品等の新規性要件……①過去に製造などした実績がない②主要な設備を変更する③競合他社の多くが既に製造などしている製品ではないこと④定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合)――の4つ全てを満たしていることを、事業計画で示す。

Ⓑ市場の新規性要件……新製品などを販売した際に、既存製品などの需要の多くがそのままで売上が販売前と比べて大きく減少しないこと。あるいは、むしろ相乗効果により増大することが計画されている。

Ⓒ売上高10%要件……3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定する。ちなみに10%は最低条件で、より大きな割合になるほど高評価となる場合がある。

②事業転換
 中小企業などが新たな製品を製造するなどで、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更することと定義。上記ⒶⒷと以下の要件のすべて事業計画で示す必要がある。

売上高構成比要件……3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品などの属する事業が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定する。

▲経産省の資料より抜粋

③業種転換
 中小企業などが新たな製品を製造することにより、主たる業種を変更することと定義。上記ⒶⒷと以下の要件をすべて事業計画で示す必要がある。

売上高構成比要件……3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の属する業種が、売上高構成比の最も高い業種となる計画を策定する。

④業態転換
 製品などの製造方法などを相当程度変更することと定義。ⒶⒸと以下の2点をすべて事業計画で示す必要がある。

製造方法等の新規性要件……製品の製造方法などに新規性があること。

設備撤去等又はデジタル活用要件……既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小などを伴うもの又は非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化などに資するデジタル技術の活用を伴うもの(単に汎用性のあるデジタル機器やソフトの利用ではなく、これらを新たな提供方法のために事業に応じてカスタマイズする、改良するなどの工夫が必要)。これは、商品又はサービスの提供方法を変更する場合に限り、先進的なデジタル技術(AI・IoT技術など)を活用する計画を策定することで、審査においてより高評価を受ける場合がある。

⑤事業再編
 会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)などを行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことと定義。以下の2つをすべて事業計画で示す必要がある。

組織再編要件……合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡など会社法上の組織再編行為などを行う。

その他の事業再構築要件……その他の事業再構築のいずれかの類型(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換)の要件を満たす。

 

 続いて補助額が異なる「中小企業卒業枠」「中堅企業グローバルV字回復枠」について。

「中小企業卒業枠」
通常枠の要件に加えて、以下のいずれかの要件を満たし、中堅企業・大企業などに成長する計画を策定することが必要
となる。

事業再編……会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)などを行うこと。

新規設備投資……新たな施設、設備、装置又はプログラムに対する投資であって、中小企業卒業枠による補助金額の上乗せ分の2/3以上の金額を要するもの。

グローバル展開……グローバル展開を果たすための事業に取り組むこと。

「中堅企業グローバルV字回復枠」
①海外直接投資②海外市場開拓③インバウンド市場開拓④海外事業者との共同事業ーーのいずれかの要件を満たすことを事業計画において示すことが必要
となる。

①海外直接投資
・補助金額の50%以上を外国における支店その他の営業所又は海外子会社など(当該中小企業等の出資に係る外国法人などであって、その発行済株式の半数以上又は出資価格の総額の50%以上を当該中小企業などが所有しているもの)の事業活動に対する費用に充てることで、国内及び海外における事業を一体的に強化すること。
・応募申請時に、海外子会社などの事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料を提出すること。

②海外市場開拓
・中小企業などが海外における需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業の海外売上高比率が50%以上となることが見込まれること。
・応募申請時に、具体的な想定顧客が分かる海外市場調査報告書を提出すること。

③インバウンド市場開拓
・中小企業などが日本国内における外国人観光旅客の需要の開拓を行うものであって、事業計画期間終了までに本事業に係る製品又は商品若しくはサービスの提供先の50%以上が外国人観光旅客の需要に係るものとなることが見込まれること。
・応募申請時に、具体的な想定顧客が分かるインバウンド市場調査報告書を提出すること。

④海外事業者との共同事業
・中小企業などが外国法人などと行う設備投資を伴う共同研究又は共同事業開発であって、その成果物の権利の全部又は一部が当該中小企業者などに帰属すること(外国法人又は外国人の経費は補助対象外)。
・応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書(日本語訳。検討中の案を含む)を追加すること。

 このように、今回の補助金は非常に要件が多く厳しいものとなっている。しかし、補助額は大きい。パンフレットや指針については経産省のホームページ(https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html)で入手できるので、新たな事業に取り組む場合は、該当するかどうかを確認した上で取引先銀行などと相談することが良いだろう。