日本の飲食店は、低価格の業態でもサービスが行き届いていることで外国人からも人気となっているが、今年は価格以上の価値がある料理を提供することを優先するために、あえてサービスを簡略化する店舗が増えるかもしれない。
リクルートのホットペッパーグルメ外食総研は、今年のトレンドとして、おいしい料理を提供することを優先するためにサービスを簡略化する「おもて無(なし)グルメ」が活発化するとの予測を発表した。
同総研の調査によると、消費増税により中食と2%の差がついたことで外食での支出額を以前より気にするようになった人が22.6%増えたことがわかった。一方、外食する際はサービスよりも料理をより重視する人が多いとの結果も得た。
稲垣昌宏上席研究員は、消費増税や人件費高騰などにより「最近の傾向として、おいしい料理を安く提供するためのセルフサービス化やファストフード化が進んでいる。また、日本では料理とサービスをセットにして価格設定されているが、今後は、料理とサービスを切り離し、価値の大きなサービスは有料にするか無料のまま残すかを、また価値の小さいサービスは省力化するかやめるかという風に、見直すタイミングが来ている。『スマイルはゼロ円』というサービスもあったが、実際には人件費という原価がかかっていることを意識せざるを得ない時代となっている」と解説。それに伴い、これまであまり競争がなかった、価値の高い料理を低サービスで提供するゾーンの店舗が人気となり、接客や設備・空間というサービスを効率化・省力化し、その分、食材や調理技術に転嫁する動きが活発になるとの予測を示した。
この具体例として、セルフサービスを導入することで、フォアグラなど高級食材を使ったフレンチをファミレス並みの価格で提供する「ルナティック」(東京・二子玉川)や、1日2組限定の完全予約制で5000円のコースのみの完全個室セルフ焼き肉「GU3F」(東京・大崎広小路)、銀座の高級中華店「レンゲ」の西岡英俊シェフが作った本格的レシピの料理を5分以内で提供する平均単価1200~1300円の「Chipoon(チプーン)」(東京・原宿)などを挙げた。
稲垣氏は同時に、「このような『おもて無グルメ』の伸びしろは、20代男女と30~40代女性を中心とした若い世代にある。また、2020年は飲食店でのチップやサービス料に慣れた訪日外国人が増加する。お通しなど外国人に分かりづらい習慣をサービス料として堂々と設定するなど、サービスの対価を見直すタイミングかもしれない」との見解を示した。
(画像はホットペッパーグルメ外食総研の資料から抜粋)