インタビュー開発秘話読むと得する

老舗醤油メーカーが肉料理向け「醤」を作るとこうなった!!【ヤマサ醤油】 

2018年6月15日 11:37 am

   

肉に合わせて醤油が変わった–老舗メーカーヤマサの挑戦 これが肉に合う「醤」だ!!

 2017年春に第1弾〈ヤマサ香るGARLIC醤(ガーリックジャン)〉を新発売し、同年秋に〈同辛旨!SPICY醤(スパイシージャン)〉、18年春に〈同玉ねぎPEPPER醤(ペッパージャン)〉と、3種の醤シリーズをリリースしてきたヤマサ醤油。

 1645年(正保2年)創業という国内有数の老舗メーカーでありながら、古い価値観にとらわれない製品開発を続けてきたが、ここにきてまたトガった製品をリリースしてきた。醤油といえば和風を連想するが、ガーリック、スパイシー、ペッパーと洋食に合いそうなラインナップだ。醤油メーカーの新たな試みにフィーチャーした。

営業本部マーケティング部商品企画室主任・松倉広平氏

 このシリーズを開発した営業本部マーケティング部商品企画室主任・松倉広平さんは同社入社後、千葉の銚子本社で開発部門に2年従事した。その後、業務用製品の営業を10年近く担当した。そこで培ったノウハウをもとに、2年前から製品企画や開発の業務に携わる。そんな松倉さんに、まず、〈醤シリーズ〉それぞれの特色について訊いた。

 「〈ヤマサ香るGARLIC醤〉は、とにかくにんにくをがっつり利かせた製品です。開けていなくてもガーリックの香りがすごいんですよ」と言って渡された新品未開封ボトルの蓋に鼻を近づけると、確かににんにくの匂いが漂ってくる。

 〈GARLIC醤〉はにんにくの強い香りに、醤油やもろみ、魚醤、ローストオニオンを入れ、深いコクとうま味をあわせた、濃厚かつ風味豊かな食欲をそそる味に仕上げたタレだ。少し舐めてみると、鼻から脳天へ強烈なガーリック臭が突き抜ける!風味は濃厚だがまろやかで嫌味がない。これを肉と焼いたら約束された勝利のウマさになる、そう確信した。松倉さん曰く、「これを食べたらデートに行けなくなる(笑)」風味だという。

しょうゆもろみと魚醤の深いコク にんにくガッツリ&黒胡椒で差を

 パンフレットには「ヤマサ醤油史上、にんにく最強配合!」という文字が大きく躍る。松倉さんによれば、「にんにくをこれでもかというぐらい入れました」とのこと。詳しい配合比率については企業秘密ということで教えてもらえなかったが、容器の下にはすりおろしにんにくが層になって沈殿していたので、相当な量が入っていることは確かだ。

 「肉に合う調味料としては、醤油+油+にんにくで十分なのではないかと考えました。そこで、とにかくにんにくの量を増やしたのです。さらに醤油の醸造中に出るもろみや魚醤を加えたところ、複雑な旨みや深み、まろやかさが出せました。これを使ってお店で調理をすると、店内中に香ばしく食欲をそそる匂いが充満するので、『この良い匂いは何だろう?隣の人が頼んだ料理だ。おいしそう、私も頼んでみよう』という波及効果につながると思います」

 確かに、匂いにつられて注文したり入店したりすることはある。ちなみに〈GARLIC醤〉は焼肉たれやガーリックライスはもちろん、肉を使用したボリュームサラダのドレッシングや、ポテトサラダのコクを足したい時にもおススメだという。

 面白いのが、「東南アジアで高評価を得ており、海外輸出も増えている」のだとか。確かにフィリピンやタイではにんにくをふんだんに使う料理が多いが、その国にある調味料を使えばいいのでは?という疑問には、「ベースに醤油を使っているため、日本ならではの風味が好まれるようです」ということだ。

 次に発売された〈同辛旨!SPICY醤〉は、醤油をベースににんにくと唐辛子、りんごを入れたことで、辛味とフルーティな甘みが感じられる、絶妙なバランスの辛さと旨さが特徴。最初の〈GARLIC醤〉に比べてとろみがあり、色も赤く刺激的。舐めてみると唐辛子の強烈な辛みとにんにくの風味が舌と鼻を直撃する!しかしフルーティな甘みもあり、あとを引く辛旨さがやみつきになる。なんとも奥深い味だ。

 この〈SPICY醤〉は豚肉や鶏肉に合うという。粘度が高いため料理に絡めるだけで味付けができる手軽さがある。チーズタッカルビの味付けや揚げた鶏手羽先に絡めてバッファローチキンにしたり、フライドポテトのディップソースにしたりと、さまざまに応用が利く。 「唐辛子由来の赤い色で、着色料は不使用です。味だけでなく見た目にも鮮やかなので、フォトジェニックな赤みを出したい料理にも向いています」(松倉さん)。

 もはや当たり前になってきたSNS映え対策も万全だ。ちなみに今月5、6日に開催された「TAKASE FOOD SERVICE EXPO2018(髙瀬物産)」では、チーズフォンデュのチーズに〈SPICY醤〉を混ぜたスパイシーフォンデュを提案。チーズの甘みと〈SPICY醤〉の辛みがマッチしており、飽きない一品になっていた。

 続いて今年春に発売したのが〈同玉ねぎPEPPER醤〉。実は好評を博した前の2製品に使われている材料が入っていない。それは「にんにく」だ。にんにく推しのラインナップだったのにここに来てなぜ?という疑問には、 「〈GARLIC醤〉や〈SPICY醤〉を使いたいが、オフィス街のランチや産業給食、社食など、にんにくが入っていると難しい飲食店からの要望が多かったためです」と松倉さん。

 にんにくの替わりに、粗びき黒胡椒とみじん切りの玉ねぎを大量に入れることで強いインパクトを出した。刻み玉ねぎが手作り感を演出し、肉と相性がいいブラックペッパーがパンチの利いた味になる。試飲すると、醤油のコクとうま味に玉ねぎの甘みがよく合う。にんにく不使用だが、〈GARLIC醤〉や〈SPICY醤〉の個性に負けていない。「レモンやりんご、生姜などを隠し味に入れています」と言う通り、爽やかな酸味がアクセントになって飽きず、深みのある味わいに仕上がっている。

 〈PEPPER醤〉は、チキンステーキやハンバーグのかけダレやローストビーフサラダのドレッシングとの相性がいい。また、にんにく不使用のためビジネスパーソン対象のランチ需要はもちろん、「丼の具材やそばつゆの味付けなどにも使えるので、和食業態でも人気の製品です」。 醤油メーカーが〈醤シリーズ〉を開発するに至った経緯については、「自分が肉好きだったからというのもありますが、飲食店や卸への営業を通じて、料理の潮流が和から洋へ、魚から肉へと変わりつつあるのを感じました。とはいえ、既製品のようなものを出しても差異化が図れません。尖がった製品が出せないか、醤油をベースにした肉用の新しい調味料を、という観点から開発が始まりました」という答えが返ってきた。

 和食に多用される醤油メーカーだとしても、こだわり過ぎずニーズに対して柔軟に対応している現れだろう。 品名にもこだわった。「漢字+ひらがな+英語の組み合わせにして、あえてどういう製品なのか分からないようにしました。ただし、醤油を使っていることはアピールしたかったので、『醤』の字は必ず入れました」。購入者の興味を引くネーミングを狙った。また、サイズも昨今の人手不足を考慮した。「女性や高齢者のスタッフでも取り回ししやすく、また鮮度がいい状態で使いきれるように、1.14~1.16㎏の容量」にした。

 ちなみに〈醤シリーズ〉の開発にあたって苦労した点は、「まずは世の中にないものを作りたいと思ったのですが、例えば『ポン酢を作りたい』『焼肉のたれを作りたい』という明確なイメージがないため、カテゴリーにない製品をイチから作るのは大変でした」。〈醤シリーズ〉の製品開発は16年春に着手し、約1年を費やした。 ちなみに〈醤シリーズ〉の次回作について伺ったところ、「今年の秋以降に、ラインナップを強化する予定」とのこと。フレーバーは発売されてからのお楽しみだ。和を代表する醤油の世界はこれからも広がっていく。

日本外食新聞2018年6月15日号掲載