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まるで直火の香ばしさと旨みが出る〈グリルオイル〉のなぜ?【J-オイルミルズ】

2018年6月5日 11:10 am

 

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焼き鳥もハンバーグもおいしくなる?! まるで直火の香ばしさと旨みが出る油 〈グリルオイル〉のなぜ?

 J‐オイルミルズはこのほど、調味油〈グリルオイル〉を発売した。これがただのオイルではない。スチームコンベクションオーブン(スチコン)やレンジアップのメニューでも、直火で焼いたような香ばしい匂いを手軽に付けられるというのだから驚きだ。

 店内の厨房やセントラルキッチンで調理する際にも、例えばハンバーグの材料やソースに混ぜたり、串打ちした焼き鳥を漬けたりするなどして焼いても香ばしさが続く。一体、なぜ直火で焼いたような調理効果が出るのだろうか。担当者を直撃した 。

不飽和脂肪酸であるアラキドン酸核に旨みと独特の香り付加に成功

 今年3月、東京・池袋サンシャインシティ文化会館で行われた「18年ヤグチ春季見本市」の新商材コンテストでは、正式なプレスリリース前にも関わらず、〈グリルオイル〉が第3位に食い込んだ。来場者が実際に試食して投票した結果であり、〈グリルオイル〉が来場者に与えたインパクトの大きさを物語っているといえよう。

 そもそも、なぜオイルで直火焼き独特の香りを付けようと考えたのか。同社マーケティング本部油脂事業部業務用グループ・柏原章人次長に話を聞いた。 前提として、J-オイルミルズはフレーバーオイル 「J-OILPRO -プロのための調味油‐」(以下J-オイルプロ)のラインナップを充実させている。大きく分けて3種あり〈、ガーリックオイル〉や〈ソテーオニオンオイル〉に代表される「香味油シリーズ」、バターの風味が付く「バターフレーバーオイルシリーズ」、〈オリーブ&ガーリックオイル〉などの「オリーブオイルブレンドシリーズ」がある。これらのオイルは通常の飲食店でも自作しているような、ニンニクや唐辛子などの素材を油で煮出して香りを付けている。

 「J‐オイルプロ」は商品のコンセプトを、風味を付けるための「風味油」からさらに前進させ、風味付けに加えて味を調えて料理をおいしくする「調味油」としている。〈グリルオイル〉も同じカテゴリーだ。 しかも、この〈グリルオイル〉は、これら調味油の中でも「さらに進化した油」(柏原さん)なのだという。柏原さんがこう続ける。 「〈グリルオイル〉は、外食業界における人手不足の悩みへダイレクトに訴求するために、『焼く』という調理の工程を肩代わりしたオイルとして開発した。

 そのため、新たなシリーズとして『クッキングフレーバーオイルシリーズ』と位置付けた」言うまでもなく、今までにない「調味+調理油」というわけだ。 面白いのが、〈グリルオイル〉自体の匂いはさほど強くはない。しかし、食材に混ぜたり吹き付けたりして加熱すると、不思議と香ばしさがぐっと際立つ。料理の味をアップさせるだけでなく、なぜ直火焼きした時のような香ばしさを付与できるのか。柏原さんにズバリその仕組みについて訊いてみた。すると…

〈グリルオイル〉のなぜ?

マーケティング本部油脂事業部業務用グループ・柏原章人次長

 「具体的なメカニズムについては、残念ながら企業秘密の部分が多いため詳らかにはできないが、J-オイルミルズが長年取り組んできた『J-オイルプロ』シリーズの研究と開発のノウハウがあるからこそ誕生した製品」と、何ともつれない返事が返ってきた。

 技術の核心の部分だけに致し方ない点もあるのだが、少なくとも熱が加わることでフレーバーが変化する油であること、そしてその変化後のフレーバーが直火焼きしたときのような「香ばしさ」であることは確かなようだ。まさに味を調え調理も再現する「機能」を併せ持つ、画期的なオイルなのだ。

 この〈グリルオイル〉にはアラキドン酸という不飽和脂肪酸が入っていることもポイント。これは主に魚などに含まれているもので、リノール酸やリノレン酸などの必須脂肪酸から合成される。同社はこのアラキドン酸を活用することにより植物油のコクを向上させる「デリシアップ製法」(特許)を確立しており、その技術が〈グリルオイル〉にも応用されているということだ。この辺りに香ばしさや肉の旨みを増す秘密があると言えそうだ。

 例えば、焼き鳥の場合、チルドなら①カット後の鶏肉に馴染ませて②焼く前に噴霧し、タレにも混合する。冷凍であれば①解凍後の焼く前に噴霧し、次は②焼いた後に噴霧し、タレにも混合する。焼成済みの冷凍鶏肉の場合は、スチコン後に噴霧するだけだ。

 〈グリルオイル〉を開発するにあたって苦労した点は、「人工的な風味になりがちで、最初に口に入れた時に感じる『先味』と、咀嚼している最中の『中味』のバランスを取るのが大変だった」(柏原さん)という。 もともとのターゲットは冷凍食品メーカーや給食など、大量調理をする外食業界において調理で省かれた「焼く」工程を補うためだったが、人手不足に悩む飲食店からの問い合わせも多いという。「ハンバーグや焼き鳥だけでなく、豚の角煮やきんぴら、炙り寿司などにも使える」ので、幅広いメニューに応用できる。 今後の展開として、柏原さんは「さらなる体感と驚きをお客さんに提供できるよう、第4のシリーズである『クッキングフレーバーオイルシリーズ』のラインナップを増やしていきたい」と抱負を語る。オイルはまだまだ進化しそうだ。

日本外食新聞 2018年6月5日号掲載