おいしいポテトサラダの作り方については、温かすぎず冷たすぎず、粗熱を取ったじゃがいもとマヨネーズを混ぜ合わせるのが一番とされている。しかしなぜ、その作り方が一番おいしいのかについて、科学的な根拠は明確でなかった。そこでキユーピーは、惣菜の製造販売を手掛けるグループ会社であるデリア食品と共に、おいしいポテトサラダについて科学的に検証した。
実験では、じゃがいもの温度の違いによる影響を確かめるため、じゃがいもの皮をむき蒸し煮(98℃で55分)してから、70℃以上、40℃、15℃以下の温度に調製してマヨネーズを混ぜ合わせた。その後、じゃがいもとマヨネーズの味の一体感について官能評価(研究員8人がフリーコメントで評価)を実施。また、その時のマヨネーズの状態について、マヨネーズの乳化粒子を赤く染色し顕微鏡で観察した。
官能評価では、粗熱を取った状態の40℃にしたじゃがいもにマヨネーズを混ぜ合わせた方がじゃがいもとマヨネーズに一体感があり、両方の味を感じるという評価を得た。顕微鏡観察でも、マヨネーズの乳化粒子が微細なものと、熱などの影響で粗大化したものが混在していることがわかった。
一方、70℃以上ではマヨネーズがしみ込んではいるものの、味が均一でじゃがいもの風味がなく舌に重く感じ、油っこいとの官能評価を受けた。15℃以下では表面にしか味が付いておらず、じゃがいもとマヨネーズの一体感がないとの結果となった。
この結果、ポテトサラダのおいしさにマヨネーズの乳化粒子の大きさやその混在状態の違いが影響するという仮説を立てて、さらに検証を続けた。
じゃがいもの皮をむき蒸し煮(98℃で 55 分)し、製品に近い15℃以下に調製したものに、マヨネーズの平均粒径が、①:10μm 未満、②:10μm 以上、③:①②を併用−−の3条件のものをそれぞれ投入して混ぜ合わせた。その結果、官能評価では、以下のような結果になった。
①:じゃがいもの味があまりせず、少し口に残る。
②:じゃがいもの味しかしせず、よく混ざっておらず、マヨネーズの味が薄い。
③:マヨネーズとじゃがいもの両方の味がして、一体感が強い。
これら二つの試験から、マヨネーズの乳化粒子の大きさやその混在状態の違いが、風味や一体感(まとまり)に影響することが分かった。ポテトサラダのおいしさに影響する因子はさまざまあるものの、マヨネーズの乳化粒子の分散状態が総合的なおいしさに影響しているとの結論を得た。
この結果を踏まえて、デリア食品では、じゃがいもの周囲に大小の油粒子を分散させ、口どけが良く、いも本来の風味をより感じやすくする新製法を導入。検証を重ねるため、関東など一部地域から新製法のポテトサラダを試験販売していく予定だ。
デリア食品の柴崎健社長は「当社の主力製品であるポテトサラダは、常にわかるかわからないかの改良を積み重ねている。(今回の結果を受けて)さらに家庭の味に近づけることができ、また買おうと思ってもらえるようにブラッシュアップを進めていく」と話した。