POP・ポスター・のぼり類がんばろう外食!(支援等)特集

店内では「黙食」にご協力を──苦肉の策のポスターに賛同多数!データは無料ダウンロードOK

2021年1月19日 1:17 pm

ミツジ@マサラキッチンさんのツイートから引用

 西村康稔経済財政・再生相は1月12日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言に際し、「昼間も外出自粛をお願いしたい。昼に皆とご飯を食べていいということではない」と語り、ランチを含めた外食を極力控えるよう呼びかけた。

 大臣クラスでさえこの程度の認識だということに、正直失望の念を禁じ得ない。外食自体が感染の原因になるのではなく、「マスクなしの会話」によって飛沫感染のリスクが増えるのだ。みんなで行っても「孤独のグルメ」のように、黙々と飲食を楽しむのならほぼ問題はないはずだ。

 福岡県福岡市にあるカレー店「マサラキッチン」の三辻忍店長も、Facebookに「夜の外食だけでなく昼もダメですよ、って言うなら昼も営業禁止にすれば良いのに。外食がダメなのではなく、食事中にノーマスクでしゃべることが問題だと思うのですが。」投稿した。

 そして、「黙食にご協力ください」というポスターの画像とともに、「このまま飲食店が悪者になるのも嫌なので、積極的に黙食を推奨していきます。外食がダメなわけじゃない。食事中の無防備かつ至近距離での会話がいけないのだから、黙って食べれば問題ないはず。その他の対策を行うのは必須として。 POPを作りましたのでご自由にどうぞ♪と、「マサラキッチン」の店内では黙って食べる「黙食(もくしょく)」を呼びかけるツイートを1月15日に行った。

 「黙食にご協力ください」の下には、「お食事中の会話が飛沫感染リスクになります」「このリスクは外食に限らず、学校や職場でも同様です」といった言葉が続く。

 三辻さんの前職がデザイナーなだけあって、「黙食」の文字が目に飛び込んできて、その理由が下に続くため分かりやすく、お客さんも納得しやすいデザインなのではないだろうか。

 これが大変な反響を呼び、19日13時時点で5万リツイート、7.8万いいねがつくことに。TVやネットニュースなど、各種メディアでも取り上げられる事態になった。

 「想像以上にバズった。同じように感じていた人がたくさんいて、そう言ってくれるお店を待っていたというお客様側の声、思っていてもなかなか注意しづらかったという飲食店側の声、どちらからも比較的好意的なご意見をたくさんいただいた」と三辻さんは話す。

 また、「世の中にはコロナ禍における食事中の会話ルールの曖昧さが気になってストレスになってる人がまぁまぁいた」「黙食を掲げることで『おひとりさま』は入店しやすく感じる」ということが分かり、特に後者は意外だったと感じたという。

 三辻さんが運営する「マサラキッチン」は、2014年2月2日に福岡・大橋にオープン。「博多スパイス料理」をコンセプトに、和の感性を取り入れながら新しいメニュー開発をしている。

「マサラキッチン」のサイトより引用

 同店では、「入店後の手洗い」「ノーマスク入店拒否」「食事中以外のマスク着用必須」「座席制限」「1グループ1会計」といった感染を徹底している。

 三辻さんは「かなり厳しく徹底している方ではないか。当初はかなり嫌がる人も多かった」と言う。それでも通い続けてくれるお客さんはこれらの趣旨に賛同しているということだし、「今後イートインが制限されたり縮小していく中で生き残るには、より徹底するしかない」と考えていた。

 しかし、「自分はマスクや手洗いなど感染対策に気をつけてお店に行ったのに、隣の席の団体がマスクもせず、大声で喋っていて不安を感じた」という趣旨のSNS投稿がたくさんあることに危機感を抱く。

 「自分はちゃんとしているのに、一部の人達によってそれが無効化されてしまう不合理さ」に対して、自分のお店はどう応えたらいいのだろうかと考えた結果、「黙食」のポスター掲示に至った。

 「この緊急事態宣言下、テイクアウトやデリバリーといった選択肢もあるなかで、あえてイートインを選んでくれるお客様に対して誠実・健全でありたい」と語る三辻さんは、「別に飲食店全体が『黙食』をやるべき、とは思っていない」と強調する。

 その上で、「ただ、同じように感じる人はいるかもしれないなぁ、せっかく作るんだから同じように困ってるお店でも使えるようにしとくか」と、フリー素材にした理由を話し、「社会的意義とか政治思想とか、そういうものはありません」と笑う。

 さらに、「イートインが縮小していく中、デリバリー、テイクアウト、通販、物販、業販、オンラインセミナー、動画配信などなど、飲食店の稼ぎ方も広く薄くやっていくしかないのかなと思っている。飲食店の形自体が変わっていくのかもしれない」とした上で、「ストレスを抱えてまでイートインに拘る必要もないというか、本当に理解してくれる人にむけてサービスを提供したほうが効率的だ。最初の緊急事態宣言がでる前後あたりは多少のトラブルもあったが、結果的に理解してくれるお客様が残っているので、私はその方々を大切にしていきたい」と述べた。

「黙食」ポスターはフリー素材。リンク先はこちら↓
https://www.masalakitchen.jp/mokusyokuPOP.pdf

 三辻さんは、「お好きなように使ってください。ただし、それなりに嫌われる覚悟が必要です。同時に、目に見えなかった賛同者が現れるかもしれません」という。

 居酒屋やバーなど、会話によるコミュニケーションを目的の一つとする業態では、「黙食」を推奨したくても難しい場合もあるだろう。

 とはいえ、一人客が多い立ち飲み店などは協力をお願いしやすいだろうし、これを機におひとりさま客を取り込みたいお店にとっては、心強いPOPとなりそうだ。