レストランテック連載

レストランテック経営者が拓く飲食業界の明るい未来とは? 第1回 インフォマート

2024年9月30日 1:28 pm

外食産業新聞社創業50周年記念特別コラボ企画
日本外食新聞×レストランテック協会/主要経営者インタビュー

事業成長に繋がるサービス提供
飲食業に集中できる環境作りを

 飲食店の受発注システムである〈BtoBプラットフォーム 受発注〉をメインの事業とするインフォマート。この受発注のシステムをベースに、いまでは店舗の運営管理の領域まで、インフォマートは新たなフェーズへと飲食店フォローの体制を進化・深化させている。

 膨大な業務が集中する店舗運営において、いかに飲食店がクリエイティブな競争領域に特化できる環境を提供することができるのか――

 シリーズの第1回目は、飲食店の受発注システムとともに歩んで来たインフォマートのいまとこれからをフィーチャーする。
※2024年6月25日号「日本外食新聞」の記事を再掲します。記事中の数値などは掲載時のものです


 ―― 飲食店DXを前へ。私たちの誓い――

 2024年、インフォマートはこの言葉を実行に移し、行動していく。つまり、システム導入に終わらず、そこで蓄積したデータの利活用を提案していくということだ。その想いをフード事業・上席執行役員の杉山大介さんはこう語る。

 「いまは受発注のシステムから日次PL(日次損益)を取れる連携もしている。例えば仕入れデータをもとに、収益性の高いメニューを考えるなど、データの利活用再活用をもっと提案していきたい。それが我々の目指す飲食店業務のDX化推進の今年のテーマだ」

フード事業・上席執行役員の杉山大介さん

 インフォマートはご存じの通り、飲食店と卸を繋ぐ受発注システムの運用がメインの事業だ。現場の仕入れ、受発注業務をデジタル化し、効率化するサービスを提供している。飲食店は約3960社・7万3000店舗、卸は約4万5000社がインフォマートのシステムを導入しており、23年の流通額は実に2兆2700億円超、マーケットの34・6%のシェアを占める(※注)。

※注 日本フードサービス協会の「令和3年(2021年1月~12月) 外食産業市場規模推計について」と「外食産業市場動向調査 令和5年(23年)年間結果報告」から、23年の外食産業市場規模の金額を21兆9114億円と計算し、仕入金額を30%と仮定して計算すると6兆5734億円となることから、流通金額2兆2743億円は34・6%のシェアに相当する(インフォマート独自推計)。

 その〈BtoBプラットフォーム 受発注〉は、まず飲食店側が導入し、仕入れ先である卸に案内するというスキームで、03年2月、まだ飲食店にパソコン導入が進んでいない頃にスタートしたサービスだ。

 卸はいまだに多くの個店をメイン顧客としている関係上、FAXや電話による注文を受けているのが実情だ。しかし、コロナ禍で人員不足が加速し、卸側も能動的に受注システムに関心を持つようになってきたという。

 そこでインフォマートは、これまで「飲食店向きの仕組み」と言われてきたが、23年から「卸企業様 寄り添い宣言」を発表し、「卸の受注デジタル化100%」を、今後、注力する取り組みとして掲げたのだった。

 その真意は、これまでのように受注業務に労力の大半を取られるのではなく、「卸が商品提案をはじめキチンと本業と向きえる環境を作るためにサポートする」ということに他ならない。

 インフォマートが有する3つの受発注システム(飲食店向けの〈BtoBプラットフォーム 受発注〉、卸向けの受発注システム〈BtoBプラットフォーム 受発注ライト〉、同じく卸向けの受発注システム〈TANOMU(タノム)〉)に加え、23年3月から提供を開始したFAXで来た注文をデータに落とし込む〈発注書AI OCR(invox)(エーアイ・オーシーアール・インボックス)〉を活用し、卸の受注デジタル化100%を目指している。

〈BtoBプラットフォーム 受発注〉の利用イメージ図

 〈発注書AI OCR(invox)〉には、①飲食店使用の発注書(先方書式)でも学習して読み込める②(例えば単にビールと書いていても)商品特定できる③FAXをデータ化できるので人の手を介さず受注データにできる――という卸のDX化を進める3つの大きなメリットがある。

 また、串カツ田中全店で導入している飲食店運営のタスク管理チェックツール〈V-Manage〉(串カツ田中と合弁で作ったRestartzが開発)は、オープンから閉店まで、清掃や備品補充など飲食店業務のさまざまなタスクがある中、そのタスクが時間通り、ルール通り実行できているかをリアルタイムで、遠隔でも管理できるアプリだ。

 タスク管理画面は、何時に何をやるというのがひと目でわかるようになっており、バイトが主体で動く店でも、店長に聞かず〈V-Manage〉を見るだけで次に何をするかがわかる仕組みだ。まさに、人手不足・バイト依存の飲食業界をカバーする「飲食店のもう1人のマネージャー」と言える。

 いままで受発注で企業と企業とを結ぶビジネスをずっとしてきたインフォマートだが、いま、店舗の運営管理の領域まで支援するようになってきた。杉山さんが言う。

 「我々は飲食店運営のノウハウを持っているわけではない。飲食業に集中できる環境を作ることが我々の仕事。人が手を掛けなくて良い業務を我々がやる。飲食店にはその分の人手・コストを良い店を作ることにかけてもらいたい。我々のサービスを通じて飲食店とそのビジネスパートナーである卸の課題も合わせて解決するお手伝いをできればと思っている」

 「便利なシステム屋から早く脱却し、我々のサービスが飲食店の事業成長の1つのキッカケとなり、飲食店がホスピタリティの向上や業態・メニュー開発にもっとリソースを割き、面白い業態をたくさん拡げていける業界になることを望んでいる」

 これからの日本を支える重要な産業の1つである外食産業をもっと輝く産業に――請求書や受発注の管理をはじめとした「非競争領域」を一手に引き受け、飲食店はホスピタリティの向上や業態・メニュー開発、そして卸は良い物・良い情報を得意先へ届ける本来の卸機能の提供といった「競争領域」に、もっとリソースを割ける環境づくりをする「縁の下の力持ち」こそが、インフォマートの立ち位置であり、経営哲学の根幹にある。

 インフォマートは、「『卸企業様 寄り添い宣言』『飲食店DXを前へ』を標語に、お客様のビジネス成果を追求していく」。