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野菜の摂取量は大丈夫? チェック機設置で野菜メニューの注文率が増加!【カゴメ×ゼンショーHD】

2024年9月10日 8:47 am

 カゴメと「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)は、外食の顧客の野菜摂取を促す方法を検証するため、ゼンショー傘下のファミリーレストラン「ココス」で実証研究を実施しところ、行動変容を後押しする掲示物と野菜摂取量推定機〈ベジチェック〉を設置した店舗で、休日の推奨野菜メニュー注文率が約0.5%増加した。

手をかざすと約30秒で推定野菜摂取量を測定する〈ベジチェック〉

 両社は、厚生労働省の過去の調査や研究論文などで外食の利用頻度が高い人ほど野菜の摂取量が少ないとの報告がある一方、飲食店ではさまざまな野菜メニューが提供されていることから、外食で十分な野菜摂取が難しいのは環境だけではなく、消費者の意識や行動による要因もあると考え、行動経済学を専門とする竹林正樹・青森大学客員教授監修のもと、実証実験を実施した。

 具体的には、カゴメが提供している、LED搭載のセンサーに手のひらを当てるだけで、野菜摂取レベルを推定できる野菜摂取量測定機器〈ベジチェック〉や、ナッジ(個人の選択の自由を制限せずに小さな介入で行動を良い方向に誘導する手法)を活用することで野菜メニューの選定を促進出来るかを検証。首都圏の立地など条件が類似する「ココス」の店舗から、〈ベジチェック〉を設置する店舗(以下、VC店舗)3店舗、〈ベジチェック〉とナッジ掲示物を設置する店舗(以下、ナッジ店舗)3店舗、それぞれの比較対照の基準となる6店舗(以下、対照店舗)を選定し実証研究を行った。

 〈ベジチェック〉は、いずれの店舗でも店舗入口付近に設置し、ナッジ掲示物については、①〈ベジチェック〉の位置を示す床面ステッカー②〈ベジチェック〉の設置を告知し測定を促す漫画を掲載した卓上メニュー③〈ベジチェック〉の測定結果に応じた推奨野菜メニューを記載したポスター――の3点を設置。1カ月間(2023年11月1日~30日)の〈ベジチェック〉測定率や推奨野菜メニュー注文率を測定し、出口調査で野菜摂取に関する意識の変化を調査した。

左:〈ベジチェック〉測定率/右:推奨野菜メニューの注文率

 その結果、〈ベジチェック〉測定率は、VC店舗、ナッジ店舗ともに平日が約20%、休日が約29%と休日の方が高くなり、推奨野菜メニューの注文率も休日では対照店舗よりもナッジ店舗で0.5%、VC店舗で0.4%高くなった。差は小さいものの平日でもナッジ店舗、VC店舗の方が対照店舗よりも注文率は高かった。また、〈ベジチェック〉測定率は小学生以下の子どもと一緒に来店したお客さんが最も高く、そのグループが測定したタイミングは注文前と食事後がおよそ半々だった。

〈ベジチェック〉測定後の野菜摂取意向

 〈ベジチェック〉測定後の野菜摂取意向については、ナッジ店舗、VC店舗ともに野菜摂取を「すぐに実行したい」、「今回の食事で実行した」と回答した人が合計60%以上となり、休日では「今回の食事で実行した」と回答した人が約20%にのぼった。

 両社は「今回の実証研究の結果から、ナッジや野菜摂取量推定装置を活用することで、来店客に野菜メニューの注文を促すことが出来ることが示唆された。一方で注文率の増加量はそれほど大きくなかったため、外食で十分な野菜摂取を促すためには、介入方法のさらなる改善が必要と考えられる」と結果を分析した。

 同実証研究の成果は、2024年9月6~8日に開催された第71回日本栄養改善学会学術総会で発表された。