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外食企業の中食参入で高価格帯で競争激化か!?【ホットペッパーグルメ外食総研】

2020年9月16日 3:11 pm

 リクルートライフスタイルの外食市場に関する調査・研究機関であるホットペッパーグルメ外食総研(以下、HPG外食総研)が毎月1万人規模で実施している外食市場調査の結果を受けて、HPG外食総研上席研究員の稲垣昌宏氏と同総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が、現在の分析と今後の見通しを示した(市場調査の結果については「首都圏・関西・東海3圏域の4~7月外食市場は6割減に【ホットペッパーグルメ外食総研】」を参照)。

 新型コロナ対策として宴会や大人数での会食の自粛、テレワークの実施などが広がり、会社の上司や同僚、取引先との会食や宴会が減り、家族や友人を相手とするプライベート利用が増加した。また外食する場所についても、職場近辺の利用が減り、居住地近辺が増加した。これらの点について稲垣氏は「(消毒やマスク着用など新型コロナ対策としての)衛生意識は新たに加わったものだが、それ以外についてはコロナ禍前からゆっくりと進んでいた流れであり、それがコロナ禍を機に一気に加速した」との見方を示した。

 4月の「外食店のテイクアウト」実施率が18.7%から39.4%と倍以上の伸びを示したことを受けて、「日常の食事のかわりではなく、豪華なものを家で食べたいとのニーズに、飲食店のメニューが活用される流れがある。我々の調査でも、平均的な中食の単価よりも、飲食店のテイクアウト・デリバリーの方が単価は相当高い。今まであまりなかった高価格帯の中食市場が新しい戦場になり、外食企業が積極的に参入してくることで、競争が激しくなる」(稲垣氏)との見通しを示した。

 また、8月に実施した外食実態調査で「外食で食べたいメニュー」を聞いたところ、1位が「ラーメン」となり、以下「焼肉」「フレンチ・イタリアン」「洋食」「すし・海鮮」と続いた。稲垣氏は外食に求められているものについて、「家で作ることができない手の込んだ料理やクセになる味など、外食ならではの魅力が求められている」とし、それらを踏まえて「衛生面での新型コロナ対策は店が選ばれる条件にはなるものの、それを満たしているからと言って、その店が選ばれるというわけではない。家で食べられない味付け、食材、調理法、施設、空間など外食が提供できる『魅力的品質』が大事なキーとなる」と分析した。

 

 竹田氏は、外食、中食、内食(小売)の垣根がなくなるボーダーレスな競争に突入する今後の外食市場では「CX(顧客体験価値)とDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要なキーワードになる」と指摘。「これまでの店側の合理性(都合)に消費者が合わせて選択していた提供方法から、個々の消費者のニーズに合わせてCXを高めることが求められる」との見通しを示し、そのためには「デジタル技術やロボット、調理のアウトソーシングなどでDXを活用して生産性を向上させることが重要」であると持論を展開。

 今後の消費者が求める飲食店の価値として、「メニュー」「食材の質」「ストーリー」「空間の魅力」「接客」の5つに、顧客都合に合わせた店外への提供方法を「提供態」と名付け、この6つの価値が求められるとした。

 さらに、デリバリーの普及で料理とサービスのそれぞれに対価を支払う「食サ分離」の概念が受け入れられつつあるとして、「時間帯などの需給状況に合わせて価格を変動するダイナミックプライシングが外食業界にも広がる可能性がある」(竹田氏)との見通しを示した。