
飲食店などが店舗内装を発注する際、平面図だけでは内装をイメージしづらかったり、やり取りを繰り返すうちに、その分が上乗せされて見積もり金額が増えたり、工期が伸びて空家賃の期間が長引いたりといった目に合ったことがあるという人も少なくないのではないだろうか。
そのような課題を解決するため、実業家の堀江貴文さんによる起業家向けオンラインサロン「neoHIU」のメンバー5人が、AIを活用することで店舗施工にかかる時間とコストを削減するサービスを提供する新会社「お店の工務店株式会社」(東京・赤坂)を立ち上げサービスの提供を始めた。
新会社の代表を務める神谷匡さんは、竹中工務店に15年勤務し、名古屋城天守閣の木造復元をすべてBIM(ビルディングインフォメーションモデリング/ コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデルを再現するシステム)を使って進めるプロジェクトに参画するなど、施工やBIMに精通している。今回、それらの知見なども盛り込み、AIを活用することで最短1日で最初の立体パース画像を数十枚作成するサービスを開発した。
具体的には、工務店が発注主である店舗から業態やイメージなどを聞き、スマートフォンやタブレットで物件内部をスキャニング。その後、店側の要望とスキャンデータ、図面などをお店の工務店本部に送ると、最短1日でテーマや画角が異なる3次元のパースが数十枚(標準45枚)提示される。
それを基に店側と本部が、カラーや小物、照明など細かい部分も含めたイメージをすり合わせると、約1週間後にはBIMが作成され、デザイン通りに施工できるデータが工務店に渡されるという流れになる。
見積もり期間が短くなることで、店側にとっても空家賃を支払う期間が短くなり、営業売上を早く上げられる。また、デザインを外注している施工会社などでも、AIを活用したデザインを短期で提供できることを売りとして打ち出せるようになる。
記者会見で代表の神谷さんは「パースには、壁や床などで実際に使用している素材のテクスチャ(物体の質感や風合い、表面の様子など)を使っているので、出来上がりに近いものをイメージできる」と説明。同社のアドバイザーを務める堀江さんは「AIやデジタルのことが苦手な工務店でも、全て丸投してもらえれば本部で対応する。既存の生成AIを活用しつつ建築に特化し、自動で設計できるレベルのものが出来上がった。今後、さらに賢いAIができれば、さらにローコストにできるかもしれない」と語った。
スケルトンと居抜きの両方に対応でき、実際に東京・赤坂のトークライブハウスでの内装に活用したところ、施工費が坪33万円と通常の3~4割程度に抑えられたという。今後、フランチャイズで展開していき、FCの加盟料は税別300万円、ロイヤリティは設計・施工費の20%となる。