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ワタミが動いた! 新たな飲食体験生み出し課題解決にもつながるアバター接客とは!?【アバターダイニングラボ】

2024年7月30日 8:40 am

 人手不足が深刻化する中、ホテルや企業の受付などではすでに見かけることも多い、サイネージやタブレットの画面上に表示されるアバター(オンライン上のキャラクター)が接客・案内するサービスが居酒屋などでも導入されつつある。

 ワタミは、飲食店向けアバター接客サービスを提供するアバターダイニングラボ(東京・五反田、青木幹夫・西口昇吾職務執行者、以下ADL)と協業し、7月29日から8月29日の期間(8月11~16日を除く)、東京・新橋の「ミライザカ 新橋銀座口ガード下店」でアバターを通じたリモート接客の実証実験を実施する。

 ADLはサントリーホールディングスとアバター接客サービスを提供するAVITAが組成した有限責任事業組合。同社が提供するアバター接客は飲食店向けに特化しており、遠隔地にいるオペレーターが大型サイネージやタブレット上のアバターを通して接客するサービスを提供している。

17時から間借り営業している《アバターパブリックスナック》

 今回の実証実験を前に、ADLは7月16日から調理用ロボットの開発を手掛けるTECHMAGIC(東京・青海、白木裕士社長)が東京・渋谷で運営するスープヌードル店「oh my DOT シブヤ」を間借りする形で17時以降、アバター接客を体験できる飲食店「アバターパブリックスナック」を営業している。今回、同店舗でアバターがどのように接客しているのかを取材した。

 まず、同店のアバターのオペレーターについては、コールセンターサービスを手掛けるENBASEが手配や教育を手掛ける。オペレーターは、最初に入り口にある大型サイネージで呼び出しボタンを押されると接続してお客さんに話しかけ、同店舗の注文方法やどういう店舗なのかなどを説明。お客さんが席に着いた後は、各テーブルのタブレットを順番に回りながら、会話したりオススメのメニューを紹介したりといった接客を行う。

各テーブルのタブレットで呼び出せばアバターと会話できる

 オペレーターは、アバターの表示を全身にしたり上半身にしたりと大きさを自由に変えることができ、身振り手振りもそのままアバターの動きに反映され、ドリンクを手に持たせてお客さんと乾杯することもできる。また、簡単なゲームや占いなども用意しており、会話が苦手な人とも楽しめるようになっている。ちなみにアバターのキャラクターはオリジナルのものにカスタマイズすることも可能だ。

 オペレーターのパソコン画面には各タブレットやサイネージのカメラ映像が分割表示されており、声をかける画面を選ぶと回線がつながり接客できるようになる。慣れてくれば1人で複数のテーブルや複数の店舗に対応できるようになるという。オペレーターの教育にはオンラインで3~4日かかり、店舗のメニューやオススメなどの情報も共有する。また、店舗スタッフに代わってアバターが会話の流れからそのまま注文を取って厨房に通す仕組みも用意しているので、QRコードで注文する味気無さも解消できそうだ。

 外国人のお客さんにも対応できるよう、約100言語に対応したリアルタイムの自動翻訳機能も搭載しており、お客さんが外国語で話しかけてきた場合はオペレーターの画面に翻訳された文章が表示され、オペレーターが話した日本語はアバター画面の下に文章として表示される。固有名詞以外は高い精度で翻訳されるという。ただし、翻訳が表示されるまで少しタイムラグが発生するため、会話するような自然さは難しいという。ADLでは今後、外国語ができるオペレーターも増やしていく予定だ。

画面下に自動翻訳した文章を表示できる

 同サービスの最大の特徴は、パソコンがあり通信環境が整っていれば、世界中どこにいてもオペレーターを務めることができる点だ。居酒屋などアルコール業態の場合は20歳以上としているが年齢や性別に関係なく、外に働きに出られない人や接客したいけれど近くにそういう店がないエリアの人、かつて働いていたけれど子育てのために辞めたスタッフ、ケガや病気で動けなくなった人など、さまざまな人に働き口を提供できる。そして、オペレーターの給料については、1人雇用した際と同額になる金額を想定しており、1人のオペレーターで3店舗受け持つことができれば、人件費としては3分の1になる計算だ。

ビールグラスを持って乾杯する《アバターパブリックスナック》のアバター「らむね」

 そして働く側にとっては、顔を出さずに済み個人を特定される心配もないため、心理的な負担が軽いという。トラブルが発生した際には回線を切ればオペレーターに被害が及ぶことはなく、その後は通常のトラブル時と同様に店長や店舗スタッフが対応することになる。オペレーターが仕事している間は、接客に携わらない管理者がモニタリングしており、やり取りを見ながら接客時のアドバイスをしたり、良かった点を褒めたりすることで成長できるようにしている。

 「アバターパブリックスナック」は人通りの多いスペイン坂沿いにあるため、外から見て興味を持って入ってくるお客さんも多く、これまでの約10日間の営業では、アバターを目的としたお客さんは半々くらいで、外国人客は約4割くらいだという。同店では大型サイネージ2台と各テーブルにタブレット6台を導入。メニューは、〈ザ・プレミアム・モルツ〉390円や〈翠ジンソーダ〉500円などのドリンクと〈サルサナチョス〉500円、〈ほうれん草のナムル〉350円などのおつまみに、昼のスープヌードルの種類を減らした〈DOTスープヌードル〉790円を用意している。軽く飲むだけの短時間のお客さんが多いので、オペレーターは1~2人で回しているという。

 今回、実証実験することとなったワタミの「ミライザカ 新橋店」でも、店内のお客さんだけでなく、店先に大型サイネージを設置し、声をかけられた際に店舗の案内や空席情報などを案内する

 ワタミでは「場所や時間といった物理的な制約のみならずさまざまな制約を超えた働き方の実現を模索します。たとえば昔『ミライザカ 新橋店』で働いていたけども、引っ越しや家族の事情により退職を余儀なくされた方が、遠方より新橋店でまた働くことが出来るといった可能性や、隙間時間などを活用した副業人材の活用など多くの可能性が想定されます。また、アバター接客には、接客する側・される側双方の心理的ハードルが下がり、初対面でも話しやすいといった特徴があります。それらの特徴を活かし、AIではなく人だからこそ提供可能な温もりのある、お客様に寄り添ったサービスの提供を行い、今までにない新たな飲食体験の創造に挑戦します」と説明した。

 利用料金については現在、初期費用5万円・月額利用料1台あたり5万円としているが、この金額についても今回の店舗運営や実証実験などを経て詰めていくという。また、サイネージやタブレットなどの機材についても必要な場合は購入・レンタルの両方で用意することを検討している。

 ADLでは、人間味を感じられるサービスとすることを主眼としており、今回の店舗運営ではお客さんの反応や売上貢献度なども検証する。そして年内に10店舗、2年以内に100店舗での導入を目指すとしている。