あらゆる食材が高騰する中、油脂も例外ではない。揚げ物メニューを主力商品にしている店は、少しでもコストを抑えようと努力を重ねてはいるものの、「もうこれ以上は無理……」と音を上げたくなっているだろう。
通信建設工事事業などを手がけるAKIBAホールディングスグループのアドテック(東京・新富町、下津弘享社長)は7月1日、業務用フライヤー後付けデバイス〈揚げものGO〉税別27万円を発売した。
〈揚げものGO〉は、油を細分化して熱伝達を向上させることができる技術を搭載した揚げ物調理補助機。今使用しているフライヤーに後付けするだけで、厨房設備を変更する事なく設置可能だ。100V電源使用なので、追加の電気工事も不要。
「油の細分化技術って何?」となるが、これは特殊な振動で油の分子をより細かくすることで、油の食材への密着を高めて熱ムラなく均一に熱を伝えることができるというもの。その結果、食材の水分や旨みを閉じ込め、油の吸収を抑えた揚げ物調理が可能になるという。
有名な分子調理器は「食材の水分」に働きかけるのに対し、〈揚げものGO〉は「油」に働きかけるので、食材がフライヤー内でどこの場所にあっても揚げる品質にムラが出ず、どこの調理場でも再現性が高くなるという。また油そのものへ働きかけるので、フライヤー内へ設置するパネルも片面で済む。
細分化された油により熱伝導率が高くなることで、同じ揚げ時間で油の設定温度を10℃下げることができる。ある宅配とんかつ専門店では、〈揚げものGO〉を使って170℃で4分間の揚げ調理にしてみたところ、従来の180℃・4分間調理の仕上がりと遜色なかったという。
重要なのが、油の温度を下げると劣化は遅くなる。農林水産省の調査によると、油脂の酸化速度は油温が10℃上昇するごとにほぼ2倍になる。ということは、〈揚げものGO〉により10℃下げた状態で調理すれば、油の状態を2倍長く保てるということだ。
通常より低温で調理することで、オイルミストや油汚れが減ってきれいな店内を保つことができ、スタッフも油酔いせずに済む。
ある大手チェーン居酒屋では、〈揚げものGO〉を揚げカスのろ過フィルターなどともに導入したところ、油脂使用量が導入前の378Lから180Lと半分以下に削減され、年間79万2000円のコスト削減に成功した。
また、既にろ過フィルターなどの施策を講じていたカラオケチェーンでも使用量が162Lから126Lに減り、年間14万4000円のコスト減につながったという。すでに対策をしている店でも、〈揚げものGO〉で揚げ物をよりおいしくしながらコスト削減に繋げられるかもしれない。
ちなみにミシュランを獲得した東京・三越前のとんかつ店「日本橋とんかつ 一 HAJIME」でも使用しており、好評なのだとか。