2021年に過去最低の売上高を記録した焼酎は、主に50~60代の男性を中心に飲まれ、20代女性で好んで飲む人は1割にも満たない。また近年は、さつまいもの病気「基腐(もとぐされ)病」が蔓延して収穫量が激減し、焼酎の主力原料の「黄金千貫」が不足。大手蔵元でも一部商品を販売休止するなど、焼酎業界はいくつもの課題を抱えている。
そんな中、20~30代に焼酎の魅力を伝えるために酒蔵と協力して企画から販売までを担うLINK SPIRITS(鹿児島・易居町、冨永咲社長)は4月24日、若潮酒造(鹿児島・志布志、上村雅彦社長)と提携して作った本格芋焼酎をベースにしたピンク色が鮮やかなスピリッツ〈NANAIRO-七色-〉を発売した。同製品はLINK SPIRITSにとって第1号商品となる。
同製品に使われたさつまいも「コナイシン」は、機械が壊れてしまうほど固い繊維質で仕込みに3倍の手間がかかるなど扱いづらいことから、これまで焼酎の原材料として使用されることはほとんどなかった。しかし近年、農家や焼酎蔵を悩ませている基腐病に強いことから、若潮酒造では「コナイシン」を使用した商品開発にチャレンジしていた。
そんな時にLINK SPIRITSが企画に参加。杜氏の経験から「コナイシン」を原料にロゼワイン酵母の減圧蒸留でつくる本格焼酎は、香り高くフルーティーな味わいになると期待されたことからその方向で開発を進め、これまでにない花のような香りと甘みを実現。さらに、紫芋の天然色素で華やかなピンク色に色付けした。冷凍庫に入れて冷やして飲むパーシャルショットやソーダ割、ロックなど味わいや香りの変化を楽しめるスピリッツとして若い世代に訴求していく。
2代目「ミス薩摩焼酎」としての活動後、東京で飲食店や蔵元とコラボした焼酎スナックを企画した経験を持つLINK SPIRITS代表の冨永咲さんは「新しい飲み手に届けるために、これまでの焼酎の枠に囚われない商品をつくりたいとサンプルづくりや試飲会などを重ねる中で、〈NANAIRO〉のイメージに合うぱっと目をひく華やかな色をつけることを提案しました。ワインや日本酒は食事に味わいや香りを加える足し算のペアリングのイメージですが、焼酎は食事の邪魔をせず、素材の味を楽しめる引き算のペアリングが得意だと考えています。シーンによって飲み方を変えれば濃さや度数も調整でき、色々な楽しみ方を秘めているもの。さまざまな色の多様性で人生を豊かにしたいという思いを込めて〈NANAIRO〉という商品名をつけました」と経緯を説明している。
〈NANAIRO〉は内容量500ml・アルコール分30%で、専用オンラインサイト(https://link-spirits.shop-pro.jp/)で1本4400円で販売している。初回は480本限定で、問い合わせ状況によって追加製造も検討する。また卸売も行っており、飲食店からの問い合わせも受け付けているという。
同社では、今後も鹿児島の酒造と提携し、商品開発からマーケティング、販路開拓、販売までを担うことで、普段焼酎を飲む機会のない女性や若い世代など新たな消費者に焼酎の魅力を届け、焼酎の市場拡大を目指すとしている。