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「KURAND SAKE MARKET」×〈Makuake〉(クラウドファンディング)で予約が取れない人気店に【リカー・イノベーション】

2017年10月12日 8:49 pm

Makuakeでのプロジェクト

〈Makuake〉でのプロジェクト

辻本 最終的には300万円以上の資金が集まりましたが、保証金などの開業資金にはほとんど使っていません。主に支援していただいた人への招待券、割引券のほか、特別な商品(お酒)の購入資金として使いました。クラウドファンディングを使う目的は一般に2つあると考えられます。1つは店舗のオープン資金、開業資金にあてること。

 2つ目は店舗のプロモーションです。「KURAND SAKE MARKET」ではこの2つ目の目的に重きを置いていました。一般には流通していない小さな蔵元のおいしい日本酒を100種類集めて、3000円(税別)で飲み放題にするという「KURAND SAKE MARKET」のプロジェクトはWeb上で大きな話題になり、SNSに対して拡散力のあるWebメディアさんが、こぞって取材に来てくれました。

 SNSで情報が急速に広がったので、最後はテレビ局も取材に来ていただき、オープン前から「話題の店」として取り上げてくれました。おかげで、オープンから約3カ月間は予約がまったく取れない状態が続きました。お店の前に行列ができるのですが、時間無制限なので、いつ頃、入店できるかというご案内もできない状態でした。  

 「KURAND SAKE MARKET」池袋店はビル4階。広さは30坪弱、50席(16年9月からスツール椅子を導入)の規模だが、平日の夕方17時から23時まで切れ目なく満席が続いたという。土日には、これに日中からの営業時間がプラスされた。しかも、驚くのは「飲み放題」「日本酒」「立ち飲み」という従来のイメージを大きく裏切る、そして辻本氏らの狙い通りの客層だ。

 SNS世代の20~30代が70~80%を占め、オープン当初は6割が女性だったという。最近は少し落ち着いてきて、男女比は半々になったが、若い女性のグループ客が依然として目立つ。入店後も、手にスタンプを押してもらって自由に外出可能なので、酒の肴の買い足しもできる。SNS上では、周辺のどの店で何を買って、日本酒の肴にすべきかという情報まで多数、飛び交っている。

KURAND SAKE MARKET新宿店。金曜夜は予約で満席

 「KURAND SAKE MARKET」は池袋店に引き続き、上野店(旧:浅草店)、渋谷店、新宿店、大宮店、船橋店と現在までに6店舗を連続して出店。同じように「飲み比べ業態」ながら、日本酒以外の酒類をメインにした「横展開」の姉妹店も相次いで立ち上げた。

 100種類の梅酒・果実酒飲み放題の「SHUGAR MARKET」を3店舗(渋谷・新宿・福岡)、焼酎約100種類と本格サワー・焼酎カクテル飲み放題の「HAVESPI」1店舗(新宿)と2コーナー(「KURAND SAKE MARKET」上野店・船橋店にコーナー設置)だ。上野、船橋では、3000円(税別)の同一料金で「KURAND SAKE MARKET」と「HAVESPI」の間を自由に行き来でき、日本酒と焼酎が合わせて約200種類、飲み放題となる。新宿にいたっては、同じビルの3~5階に、「KURAND SAKE MARKET」「SHUGARMARKET」「HAVESPI」の3店舗が立地しているので、3000円(税別)の同一料金で約300種類が飲み放題だ。

  辻本 新宿の3店舗は当初、それぞれ別料金で運営していましたが、今年1月から、1店舗分の料金3000円(税別)で3店舗とも回遊できるようにしました。「KURAND SAKE MARKET」と「SHUGAR MARKET」は平日は予約なしでも何とか入れますが、週末の金曜・土曜は予約さえも取りづらい状態です。その場合は、焼酎の「HAVESPI」に予約席を確保してから、「KURAND SAKE MARKET」と「SHUGAR MARKET」を回遊し、それぞれの階のお酒を楽しんでもらうようにご案内しています。相乗効果が期待できます。

  「SHUGAR MARKET」「HAVESPI」という新業態の立ち上げの際にも〈Makuake〉にプロジェクトを掲載するなど、これまでに10回ほど、クラウドファンディングを実施している。店舗の開業以外で、よく使っているのは、蔵元と共同開発している日本酒のPB(プライベートブランド)をプロモーションしたいときだ。醸造経験もあるリカー・イノベーションのバイヤーが蔵元を回り、今季の造りの状態や今後の酒造りの希望などを日常的にヒアリングする。その上で、辻本氏ら企画の人間が適宜、蔵元との話し合いに加わり、プロモーションする側のアイデアも突き合わせて、新しい日本酒ブランドを開発していく。

  辻本 例えば、最近プロモーションした日本酒に「鈴木」があります。これは「佐藤はあっても、鈴木というお酒は聞かないね」という発想から、全国で2番目に多い名字である「鈴木」をブランド名にし、「若き醸造家の新たな挑戦!鈴木さんの鈴木さんによる鈴木さんのための日本酒『鈴木』」というプロジェクトを〈Makuake〉に掲載しました。埼玉県久喜市にある寒梅酒造で、33歳の若さで杜氏をつとめる醸造家、鈴木広杜さんは全国新酒鑑評会で3年連続金賞受賞という実績を持つ次代のホープ。その鈴木さんにスポットを当て、鈴木さんが地元久喜産の「彩のかがやき」という米を使って、初めて挑戦する「生もと造り」の日本酒「鈴木」への支援をお願いしました。

 その結果、支援者へのリターンを含めて、蔵元から出荷した「鈴木」1000本が、わずか4日間で完売しました。   こうしたPBの日本酒はだいたい月に1~2銘柄前後のペースで、「KURAND SAKE MARKET」の店頭に登場する。通年商品として店頭に置くために開発したものの、人気が高く、昨年は3カ月で売り切れたという商品が「CRAFT SPARKLING SAKE」だ。「CRAFT SPARKLING SAKE」は埼玉県深谷市の滝澤酒造とリカー・イノベーションが共同開発したもので、シャンパン同様の瓶内二次発酵よって、炭酸ガスを日本酒に溶け込ませた発泡日本酒。人気に応えて今年も登場し、定番商品となりそうな勢いだ。

 「梧桐 大吟醸 生 超辛+10」は16年で一番よく飲まれた日本酒で、山形県の秀鳳酒造場と共同開発した超辛口の大吟醸酒。大吟醸酒でありながら、超辛口という大胆な商品デザインにインパクトがあり、カラフルな鳳凰のラベルも親しみやすい。酸味が特徴の蔵元として知られるのが徳島県の三芳菊酒造だ。リカー・イノベーションと共同開発の「三芳菊ワールド」は、蔵元が自身の日本酒をイメージして、作詞作曲したオリジナルのサウンドトラックをYouTubeで聞ける。酸味が強く、フルーティな三芳菊ならではの味わいを、音楽とともに堪能できる。

人気の高いCRAFT SPARKLING SAKE

人気の高いCRAFT SPARKLING SAKE

 「ラベルがカワイイ」と評判で、SNS上でブレイクしつつあるのが「酒を売る犬 酒を造る猫」だ。この新銘柄は、新潟県・宝山酒造の5代目である渡邉桂太氏が別の蔵元での修行から帰って、初めて造った日本酒。第1弾のラベルには、渡邉氏と同社営業の若松秀徳氏が、大学の同級生として出会い、将来の酒造りについて酒場で誓い合う様子が描かれている。今年発売の第2弾は渡邉氏が実家とは別の蔵元で修行し、若松氏が日本酒専門店で修行する様子を描く。物語仕立てで、2人の出会いから現在までを描き、その物語を犬と猫というキャラクターのイラストでラベル化するコンセプトが、日本酒好き、さらに犬猫好きの女性にウケている。 こうした盛り沢山のPB商品に加えて、最近始めたのが製品化前の日本酒をパイロット的に店頭に置いて、アンケートなどで反応を見る「KURAND Lab.(クランドラボ)」という試みである。