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クラウドファンディングで低コストながら効果的な集客を支援【マクアケ取締役・坊垣佳奈氏インタビュー】

2017年12月25日 10:00 am

外食企業(店舗)のプロジェクト成功のコツは何か? 逆に言うと、失敗するプロジェクトの特徴とは?

坊垣 先にも触れたように、無理がなく、しかも支援者にとって魅力的なリターン設計が基本になると思う。オリジナリティの高い、人目を引く企画(業態やメニュー)を工夫するのも大事だ。サイトの表現の面から見ると、ページの作りが甘ければ成功は難しい。サイトにアクセスしてきたユーザーが、設定された支援コースを選び、お金を出してもいいと思うだけの、しっかりしたページ作りができているかどうかだ。メニューの写真を見てもおいしそうだと感じられないようでは論外だし、支援コースの内容、条件を説得力がある写真や文章、デザインでアピールしないと、お金は集まりにくい。

 外食店舗の場合は、料理を作るシェフのキャリアや人柄、提供するメニュー自体に魅力があるかどうか、さらに価格的にメリットがあるかどうかなどを、ユーザーは非常によく見て、検討している。だから、私たちがページ作りのアドバイスをする際にこだわるのは、どんな人が、どんな思いで店をやっているのかのストーリーをしっかり見せることだ。

 最初に重要なポイントを見せて引きつけるのも大事だが、シェフやメニューに興味を持った人が納得のいくところまでストーリーを展開し、詳しい説明を加えておかないと、ユーザーは消化不良になって決断ができない。たとえ疑問に思うことがあっても、ユーザーはわざわざ時間をかけて調べたり、問い合わせたりはしないのだから、たとえコンテンツが長くなったとしても、サイトの写真と文で説明しきることだ。

坊垣氏

 プロジェクトの成否は公開初日の調子の良し悪しに大きく左右される。初日に調達金額が伸びているプロジェクトは注目され、加速度的に人が集まるし、逆に初日に閑古鳥が鳴いているようでは、その後の展開もきつくなってしまう。

 そのため、プロジェクトの公開前に、実行者が自身や自社の保有するツィッター、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSアカウントを通じて情報を拡散する努力をするべきだ。それを、まったくやる気がない実行者の場合は、うまくいかないことが多い。初日に目標金額の30%以上を調達したプロジェクトの目業達成率は88%以上というデータも出ている。

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外食企業(店舗)の分野で、「Roast Horse」以降の注目プロジェクトというと。

坊垣 日本酒飲み放題のセルフ居酒屋「KURAND SAKE MARKET」を展開するリカー・イノベーションは、店舗オープンなどの機会に10回以上も〈Makuake〉を使って成功している例だ。自社のSNSでも常に情報を発信しているし、既存の店舗でも積極的にイベントなどのプロモーションを実施するなど、集客・プロモーションに対する意識が高い。

 そのほかで、〈Makukae〉の利用回数が多い外食企業の代表格はFavy(ファビー)だろう。飲食店向けのデジタルマーケティング支援サービスを提供している会社だが、〈Makuke〉を利用して16年に開店した焼肉レストラン「29ON」は、「Roast Horse」の成功体験を踏襲し、完全会員制で、住所、電話番号は会員以外には非公開という運営手法をとる。「低温調理」という技術を使った“焼かない焼肉”というユニークな業態が人気で、西新宿を皮切りに表参道、代官山、池袋にも店舗を展開している。

 これらの新店舗の開店時にはすべて〈Makuake〉にプロジェクトを公開して会員を募集し、早期の資金調達に成功している。 ワインの会員制バー「Corvinus02」(東京・西麻布)は目標金額の100万円に対して、1500万円以上の出資金を集めた。「焼鳥祐」(大阪)は店舗のリニューアルに当たって、「完全紹介制」を取り入れて住所などを非公開とした。全国から選りすぐりの地鶏を集めて提供するこだわりの強い業態が支持され、目標金額の266%の出資金を集めた。

「焼鳥祐」のプロジェクト

 クラフトビールをキーワードにして〈Makuake〉を利用する外食店舗も最近は多くなり、成功例も目立つ。日本発のレシピで、ベルギーで醸造されるKAGUA(馨和)ビールが看板なのが「Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao(ファーイースト トウキョウ~クラフトビール&バオ)」だ。

 銀座の老舗バーである「BREWIN’BAR 主水-monde-(ブリューインバー・モンド)」は、リニューアル後に店内でクラフトビール醸造を始めるというプロジェクトを公開し、目標金額の309%を集めた。直近では、「六本木唯一のビール醸造所」をうたう「Inazuma Beer」が、醸造所の追加設備のためにプロジェクトを公開し、目標の5倍近い資金を調達している。

 一方では、老舗の本格バーや割烹などが、対象を絞りこんだ集客のために〈Makuake〉を利用するケースも出てきている。京都にある本格バー「京都祇園来洛座」はお店の改修費用100万円を目標金額に、プロジェクトを公開した。支援コースは1万円、3万円、5万円…とあり、最高は何と1000万円。さすがに、100万円以上のコースの支援者は出現しなかったが、目標金額は余裕でクリアできた。

 この店に限らず、格式の高い老舗店舗では、常連客が高齢化して来店頻度が減るという共通した悩みを抱えている。とはいえ、マス広告やクーポン発行といったなりふり構わない手段で新規顧客を募るわけにもいかない。古くからの常連客に敬遠されて、かえって売上を落とす恐れがあるからだ。その点、クラウドファンディングを使って、一定のハードルを設け、支援者に限定して新規顧客を迎える形にすれば、常連客も納得して許容してくれるようだ。

外食の大手企業が新業態を開発した際に、そのマーケティングを兼ねて〈Makuake〉使っても面白いと思うが。

坊垣 モノ作りの分野では、ソニー、シャープなど誰もが知っている大手企業が、〈Makuake〉を新開発製品のテストマーケティングの場として頻繁に活用している。アンケートなどと違って、クラウドファンディングでは実際に気に入ったものに支援者がお金を支払うので、よりリアルなマーケティングができるという。

 こうした事例からすると、外食の分野でも、大手の有名企業が新業態、新商品などのテストマーケティングでクラウドファンディングを使う事例は増えそうだ。もっとも、外食の有名企業の場合、知名度が高いだけに、かなり面白い業態、新奇な商品でないと、プロジェクトの成功は難しいかも知れない。

〈Makuake〉のサイトを見ると、「#会員制」「#肉」などのタグで、外食企業(店舗)によるプロジェクトを検索し、その内容と結果が閲覧できるので、業態散歩をするようで面白い。一度、公開されたプロジェクトは、ずっとサイト上に残るのか。

坊垣 成功したプロジェクトも、目標金額に達しなかったプロジェクトもサイトに残してある。成功したプロジェクトは実績として社会的に広く認められるようになっているため、モノ作りの分野では、〈Makuake〉でのプロジェクト成功によって、銀行からの融資が実現した事例もある。

 また、当社は、流通・金融関連の企業や自治体などと幅広く提携しており、融資や販路拡大のためにサポート企業をご紹介することも可能だ。さらに、〈Makukake〉では、プロジェクト実行者のために「Makuakeアナリティクス」という機能を提供している。

 実行者は、自身の公開したプロジェクトに関して、ページのPV数の推移、支援者の流入元、支払時の決済手段、支援者の属性(性別、年齢、居住地、職業)などを確認し、応援コメントも参考にして、以後のビジネス展開に役立てることができる。この「Makuakeアナリティクス」は、プロジェクト終了後にも閲覧可能だ。